09「由原八幡宮」
孫次郎たち軍勢は緩やかな
また孫次郎たちも下馬して自らの足で進んでいた。
山の斜面での馬の足を案じたのもあるが、二葉山は由原宮の敷地内であり、いわば境内。礼儀作法として下馬していたのである。
やがて道は石畳の階段となり、その先には立派な木造建物…
門上部に掛けられている
ようやく目的地に到着したが一息入れず、まずは孫次郎、親延を始め戸次一門の
日暮門の
巨大な樹木であり、他の木々と比べて悠久の年季が入った風体で佇んでいた。その大木の雄大さに、どこか懐かしく、えも言われぬ温かさと優しさを感じた。
「見事なものでしょう。その
ふいに声をかけられた方を向くと、神職の装束を身に
「戸次殿、皆様方。お待ちしておりました。ここ由原宮の大
鑑綱が会釈すると、孫次郎も同様に一礼をする。
「さあ、こちらへ。社殿の方に
そう述べると鑑綱が先導して先を進み行き、孫次郎たち一同もその後を静かについていった。
~~~
由原八幡宮(通称…由原宮。現代の名称は柞原八幡宮)。
祭神に
創建は天長四年(西暦829年)、
その際に、
その経緯と
宇佐八幡宮の使者が、まずは由原宮に救援を求めた理由でもある。
また由原八幡宮を
孫次郎たちは由原宮の
此度の弔い合戦の大勝利と再興を成し遂げる旨を書き記した
いや、ここからが本義であった。
この場には孫次郎たち以外に、先の大宮司の
此度の弔い合戦の
この戦における
「あ、私はただの参拝客なので気なさらずに。また他言無用でお願いいたします」
と、角隈石宗が発言した。
この
「えー、では仕切り直しまして。此度の宇佐八幡宮の存亡の危機において、ご加勢いただき恐悦至極にございます……」
改めて宇佐八幡宮の使者が孫次郎たちに礼を述べるものの、不安が胸の内を
討伐の軍を
先に到着していた角隈石宗から事前に大友本軍は参戦しない旨は受けていた。だが、宇佐八幡宮の大宮司の
「あの……私が
いつの時代も戦いや争いごとは数の多い方が勝利の為の絶対条件と思うだろう。
その考えは間違いではないが――
「
孫次郎が堂々と発言した。
「宇佐神宮の使者殿。確かに数が多い方が有利でしょうが、“
宇佐神宮の使者は
「なるほど、よく勉強をなさっている。そう、だだ
どのような戦法を執るかは機密事項であり、指揮官(総大将)や一部の重臣(隊長)のみしか把握していないものだ。
「
「
様々な情況を考えれば辿り着けれる
もちろん仔細な戦略は有るが、角隈はそれすらも見据えているようだった。
「それでも
孫次郎は立ち上がった。
やはり由原八幡宮に立ち寄らず、豊前国・馬ケ嶽城に向かべきだったと改めて
「ならばこそ奇襲を成功させるためには急ぎ馬ケ嶽城に向かい、一刻でも到着しなければならない。叔父上(親延)殿、皆の者、すぐに
焦燥感に駆られて今すぐにでも飛び出そうとする孫次郎を、すぐに角隈石宗が
「孫次郎殿、落ち着きなされ。下手に慌てて急いで、敵方に
角隈石宗は改めて孫次郎を優しく見つめ、説くように冷静に話しかけた。
「それに、そこまで焦ることも無いでしょう。早く着くことよりも、その先を考えるべきなのでは?」
「その先を?」
「どんなに急いでも人の
誰もが、さも当然と思うものの口には出さず、角隈石宗の話しに耳を傾ける。
「戦わなければならない。そして勝たなければならない。無理強いをして行軍を進めたとして、
「……そうか!」
話しの途中で孫次郎は気付いた。
すぐさま場に広げられていた地図に目を移し、馬ケ嶽城への経路を親指と人差し指を
「どうしたのだ、孫次郎?」
突然の行動に親延が訊ねた。
「我らが
孫次郎の返答に角隈石宗は「ほう……」と漏らし、感心する。
小勢の兵力で城攻めをするのであれば、奇襲が最も効果的な“攻め時”が要点になる。
古来、奇襲するのなら寝静まった
しかし真っ暗闇の中で戦うのは味方側にも不利な点がある。ならば夜明けのうす明るくなる頃が望ましい。
――孫子の兵法など、しっかり勉強をしているようだが、まだ
角隈石宗は孫次郎の素質を心の
「これは独り言になりますが、
大友家として
「そして、
――
角隈石宗の
「角隈殿、お
三日で人を
しかし豊前国の馬ケ嶽城までの道のりは遠く、荷物が増えた分、
戸次親家たちは様々な事情を
「あと
角隈石宗は
「ここより
「立石に? その道のりでは幾分かは遠回りになるのでは?」
親延が訊ねた。
「承知しております。本当ならば木付殿に
先と同じように理屈が通った説明を述べていき、親延たち
親家や親延たちが講じた戸次軍の戦略を読み見据えては、
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