日曜日よりの死者

エリー.ファー

日曜日よりの死者

 ゾンビとしていきている。

 けれど。

 そこに誇りとかはない。

 何故ならば、という事だが。

 そうだから、としか言いようがない。

 私の知る限り、これがゾンビとして生きることの意味なのかもしれないと思っている。

 脳みそまで腐ってしまえば楽になれたというのに、脳はゾンビになる前と変わらず正常である。不思議なものだ。私は脳から先におかしくなってしまうと思っていたというのに、そうはならず、先に体からおかしくなっていった。

 人生は奇妙なものである。

 いや。

 人として生きていないのだから、人生ではない。

 ゾンビとしての経歴、もしくは時間、経験という事になるのだろう。

 元々、核戦争が起きてから、ゾンビの数は一気に増えた。元からいたの訳だが、数も少なかったし、ゾンビと非ゾンビで区画を分けたので全く問題はなかった。私が証明となる訳だが、基本的にゾンビになったとしてもまともな常識や倫理観というのまでなくなるわけではない。

 それなりに幸せだったわけである。

 アンテゼル社の冷凍食品である、塩焼きそばに入っていたウィルスがこのような効果を生んでしまうとは、さすがに思いもよらなかったが。

 最初は、ただの食中毒として広がった問題であったのに、気が付けばゾンビがやたらに増えてしまったのだ。

 ただし、空気感染はしない。

 そのせいで、どうにも危機的状況になりにくい。

 ゾンビも思ったよりまともであるし。

 ハリウッドの俳優の中には進んで、その塩焼きそばを食べて、ゾンビ化する者まで現れる。しかも、ゾンビ化しても元がイケメンだから、相も変わらずもてるのである。

 悲しい限り。

 悲しい限りである。

 なんというか、ゾンビになっても容姿のことで悩まなければいけないというのは、苦痛そのものだ。

私の生前の仕事は、絵描きだった。元々は、美しい女性を水彩で描くのだが、ゾンビになると、指がもろけてしまい、骨が露出してしまう。こうなると、筆もまともに握れなくなってしまうのである。視力も悪くなり、眼鏡をかけてみたのだが、耳が取れてしまったから、なんとかガムテープあたりで、顔に張り付けている。

 ゾンビになっても、生活の基盤は変わらない。

 とにかく、金が必要なのである。

 お腹は空かないので、食費はかからないが、防腐剤を買って定期的に、自分の中に注射しなければならない。しかも、この行為は医療従事者に限られてしまっているので、私が自分でできる訳もない。

 加えて。

 保険適用外。

 ゾンビたちはいつも不満を抱えている。

 つい最近も、核施設を襲い、とうとう爆破させてしまった。

 一気に広がったことで、地球上から人間らしい人間は姿を消してしまい、皆が、被爆した瞬間近くにあったものと体が同化してしまった。

 ゾンビよりも奇妙であると思うし、私は余りそれらの人間と関わりたいとは思えない。

 ただし。

 これも人間が作り出したものだと思うと、どことない皮肉も抱えたりする。

「被爆者をゾンビと同じに見立てるなんて、不謹慎じゃありませんか。」

「そんなことを口に出してはいませんが。」

「そう伝わってしまいます。」

「伝わらないような配慮をしています。」

「配慮が正確ではありません。その事実を知った人たちが不快な思いをします。」

「申し訳ありません、訂正します。」

 そして近いうちに。

 誰かが被爆で苦しんでいる現実も見えないようにして、みんな綺麗になる。

 すごく良いことですね。

 良かったですね。

 はいはい。

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