第46話 〜山籠り〜

 明朝の朝から山に向かう私と師匠。

 私はバック一杯に荷物を入れているのですが、師匠は殆ど手ぶらな様です。

 本当に「そんな装備で大丈夫か?」と聞きたいのですが、思ったよりも自分の荷物が重い為、そんな余裕はないのでした。

 息を切らしながらどんどん奥深くへと登っていく私と師匠。

 ちょっと開けた場所を見つけた彼女はこう言いました。


「よし!、この辺でテントを張ろう!」


 師匠はそう言うと、何やら手を動かしてポチッと押しました。

 おそらくアイテム欄とか言う奴でしょう。

 アイテム欄とは魔法力を持った人間であれば誰でも扱える能力で、個人の魔力量により大小こそあれどなんでも入っちゃう便利な袋のような物です。

 彼女が「ちょっと離れて」と私に注意した後、彼女の指差した場所にテントが現れました。

 私は思わず目を見開いてしまいましたが、師匠にとってはいつもの事なのでしょう。

 眉一つ動かさず、私の荷物をテントの中にしまうよう指示されました。


「荷物は置いてきた?」


「はい!、テントの中に全て置いてきました!」


 今の私は短剣以外に何も持っていません。

 彼女の指導を受けるのにこれ以上の装備は不必要だと判断する私。

 ワクワクしながら彼女の顔を見ていると、ようやく特訓に入るようです。


「じゃあ始めるわよ...、ここから教えるのは相当きつい技の伝授になるから、辛いかもしれないけど強くなりたいのなら頑張ってね」


「はいっ!!、多少のことならなんでも我慢します!!」


 気合い充分な大声で返事をすると、彼女は少し笑いました。


「じゃあ最初に教えるのは...、ダンスね!、とりあえず踊ってみて!」


「...はい...?」


 いきなり意味不明な単語が出てきたので戸惑ってしまいます。


(ダンスって踊りの事だよね?、戦いにそんな物必要かな?...、ううん...、エルシーさんが教えるんだから意味が無いことはないよね!)


「わかりました!!、精一杯踊らせていただきます!」


 そう言いながら、不慣れな踊りを披露し始めるのだった。

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