第47話 〜ダンス〜

「はい!そこっ!もっと笑顔!!」


「はいっ!!」


 彼女に言われるがままダンスのレッスンを続ける私。

 疑問に思いながらもレッスンをこなしていく。


(きっと何か意味があるんだ...、強くなれるんならこれくらいしっかりやらなきゃ!)


 ダンスと一言に言ってもかなりきつい...。

 ずっと笑顔を浮かべたまま苦しい踊りを続けるなんて一般人には無理だろう。

 私も今日始めて体験したのだが、ちょっとした振り付けをやるだけでゲロ吐きそうなくらいの衝撃が絶え間なく全身を襲うのだ。


(こんなのむりぃ...)


 1時間もしないうちに汗だくになりかなり披露してしまった。


「よし!とりあえずそれでいい、一旦休憩だ」


 休憩と言われるとかなり嬉しい。

 少し休めるので、彼女に聞いてみることにした。

 このレッスンの意味を。


「エルシーさん、ちょっといいですか?」


「なんだ?」


「このダンスって実戦で活かされる物なんでしょうか?」


 私が疑問に思う所を呟くと、彼女は笑っていました。


「ハハッ、まあそうだよな、ダンスで本当に強くなれるのか疑問に思うのはわかるよ、でもねツバキ、私の伝えている踊りってのは武踏っていうの、つまりは戦う為の踊りってことね」


「...はぁ...」


 言葉で聞いてもよくわからなかった為、実際に踊ってみてもらうことになった。


「見ててね、私の踊りを」


「はいっ!」


 彼女の踊りを全てしっかりと見て覚える。

 ターンのタイミングや振り付けが完璧なのでかなり綺麗に思えるのだが、何よりも凄く楽しそうなのだ。


(あんなに辛い振り付けを楽しそうに踊れるなんて...、エルシーさんってやっぱりすごい!!)


 私が一瞬でヘトヘトになってしまう振り付けですら、彼女にとっては朝飯前なのだろう。

 汗ひとつかかずにワンセットを終える。

 それを見て、凄いとは思えたけど、やはり戦いに必要かと言われれば微妙だと思う。


「とりあえずこのワンセットを毎日10回は踊ってもらう、その後は食料調達だ」


 その言葉に驚いてしまう私。


「えっ!?、食料調達って、もしかして山の中で採取するってことですか!?」


 彼女は顔色一つ変えずに淡々と呟く。


「そうだ、これが私の師匠のやり方なんだ、ツバキの年齢で覚えるのは少し酷だと思うが、これをやりきった暁には、お前はきっと強くなっているだろう」


 眉ひとつ動かさずそう言う彼女が、少し恐ろしく感じました。

 まさか食料を自分で調達してこいと言われるなんて思っても見なかったからです。

 ですが、これも強くなる為だと思えばやる気が出てくるのでした。

 厳しい訓練というのは前から聞かされていたので、これくらいでめげるつもりはありません。

 私は無理矢理にでも笑顔を作り彼女にこう言いました。


「わかりました!これで強くなれるというのであれば、私は全力で頑張ります!!」


「うん、その域だ!頑張れツバキ」


 私のやる気を見た彼女は、凄く嬉しそうに私の踊りの問題点を指摘してくれました。


「さあ、後9セット!日暮れまでにはやってしまうよ!」


「はいっ!!」


 私と彼女のレッスンは夕暮れ時まで続きました。



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