第34話 〜こっちの父さん〜

「タルトさん、ノーレ、お父さんが帰ってきましたよ!」


「えっ!?お父さんが!?やった〜!!一年くらいお外にお仕事しに行ってたんだよね?」


 お母さんとノーレは喜んでいましたが、俺はそう言う気分にはなれないのです。


(一年も家族を放ったらかしにするなんてなんて親父だ...!許せん!)


 そう考えてしまうので、思わず顔をしかめてしまっていました。

 そもそも俺があっちで死ぬ理由になったのは親父に責任があるので、こっちの親父にもそこまで期待はしていません。


「お父さ〜ん!」


 妹が元気よく飛び出して行くのが見えたので、ちょっとだけ俺も父さんとやらの顔を見ることにしました。


「ハハッ!、ノーレ大きくなったな!、おっ!タルトじゃねぇか!畑を見てきたが立派に守れてるようだな、父さんは鼻が高いぞ!」


 はははと笑うその男は、タルトとは似ても似つかないほど筋肉質な体つきをしていました。

 漆黒の黒い髪が特徴的(?)で...、嘘、普通すぎるよね。

 俺の父さんの見た目は普通の日本人をちょっとマッチョにしたくらいの人でした。


(あれが俺の父さん!?、ぜんっぜん似てねぇ!!)


 思わず口を大きく開いて父さんを見つめてしまいます。


「なんだよ...その顔は、父さんの顔になんかついているか?」


「いや、全然俺と似てないなって...」


「そうか?、正義感の強い所とか昔っから似てたと思うけどな」


「いやいや、性格じゃなくて見た目な」


 彼は自分の身なりを見た後にガッツポーズを決めてこう言ってきました。


「いや似てるだろ?」


「似てねぇよ!!」


 思わずツッコンでしまう。

 本当にタルトの親父なのか不安になってくるが、ノーレや母さんの様子を見る限りではそうなのだろう。


「あなた...、ようやく帰ってこれたのですね」


「リーネ、ああ、ようやく魔海の魔物供を殲滅できたからな、しばらくはここにいられるはずさ、全く、王も困った人だよな、俺たち聖人使いが荒い荒い」


(ん?聖人?、それどっかで聞いた様な...)


 俺が頭に手を置いて考えていると、エルシーさんが手を口に当てて驚いた様な表情で声をあげました。


「えっ!?、まさか...貴方様がタルトのお父様なのですか?」


「ああ、そうだけど君は?」


 父さんが不思議そうな顔で彼女を見つめています。

 彼女は取り乱した様子でしたが、やがて落ち着きを取り戻し、彼に自分の名前を告げていました。


「私はエルシー、旅の踊り子です、貴方はレイン様ですね?」


「ああ、そうだが...」


 父さんがそう答えると彼女は頭を下げ礼を言っていました。


「ありがとうございます、我が妹ヤヨイも貴方様が魔女を討ち取った事を喜んでいるでしょう」


「魔女の事を知っているという事は、君もこのクティル大陸出身の子なのか?」


 何やら父さんとエルシーさんが重要そうな話をし始めたので気になる俺。

 俺が彼等の横の立って話を聞こうとしていると、お母さんに腕を掴まれてしまいました。


「タルトさん、今日は御馳走を沢山作るので手伝って下さいな」


「えっ!?、ちょっと父さんたちの話が気になるけど...、仕方ないなぁ...」


 母さんに流されるまま、俺は厨房へと連れ去られていまいました。


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