第33話 〜心配〜

「疲れた...」


 そう呟きながらも家にたどり着いた俺は、一目散にノーレが寝ている寝室に足を踏み入れる。

 すると看病していたエルシーさんが僕に声をかけてきた。


「お疲れ様タルト」


「あっ、エルシーさん、ノーレの調子はどうだった?」


「今は安静にしているわ、私とタルトの母さんが一生懸命看病してたんだから当然よ」


 と心強い発言をしてくれたので安堵の息を漏らす。


「ありがとうエルシーさん、ノーレもきっと貴方がいてくれたから安心して眠っていられるんだと思います」


「タルトさん、それは聞き捨てなりませんね、それではまるでお母さんだけだと不安で眠れないと言っているように聞こえますが」


「母さん!」


 母さんが不機嫌そうな顔をしながら俺の後ろから現れたのでびっくりした。

 どうやら妹の着替えを持ってきた様だ。


「タルトさんも手伝ってくださいな、お母さん一人だと脱がせるのに一苦労するんですから」


「えっ!?俺がノーレの服を剥ぐのか?」


「その言い方、ちょっと卑猥じゃない?タルト...」


 エルシーさんにそう言われた時、僕はちょっと恥ずかしくなった。


「えっと...、エルシーさんに全部任せた!」


 俺はそれだけ伝えるとその部屋から逃げ出した。

 それを見た彼女が困惑した様な表情で俺を呼び止めてきます。


「ちょっと!タルト!...、全く自分の妹の裸くらい見ても誰も文句言うわけないだろうに...」


 そう言われる俺でしたが、内心ではそう思っていないのでした。


(いやいや、いくら幼いからって女の子の裸見ちゃだめでしょ!、それにあくまでノーレが妹なのはタルトであって俺じゃないしな!)


 そう、俺からすれば他人の娘の裸なので見る訳には行かないのです。

 それを聞いていた妹の表情が綻んでいたそですが、この時の俺がそれを知るのは後になってからでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る