第32話 〜看病〜
「大丈夫か?ノーレ...」
私は彼女の頭にいい感じの風を送り冷やしてあげる。
できれば氷系統の魔法を使えればより良かったのだが、残念ながら私は風系統の魔法しか使えない。
そんな私に笑顔を見せてくれるノーレ。
「うん大丈夫だよ...、ありがとうエルシーさん...」
「いいって事よ!、困った時はお互い様さ」
私が明るく振舞っていると、タルトの母さんがこう声を出してきました。
「エルシーさん、お粥が出来たので、ノーレに食べさせてくれますか?」
「はい、わかりました」
彼女からお粥とスプーンを受け取ると、それを彼女の口元の運んで食べさせてあげる。
私が彼女の口元に運ぶと食べ辛そうにしながらも、ゆっくりと飲み込むその姿がとても可愛らしいと思う。
「うん...」という飲み込む瞬間の声に萌えを感じていた。
「ゆっくり噛んで食べて、残したかったらいつでも言っていいからね...」
「うん...ありがとうエルシーさん...」
そう言いながらも彼女は確実にお粥を押し込んで行く。
皆に心配をかけたく無いという彼女なりの気遣いなのだろうか?。
そんな事をしなくても良いのにと思う私。
程なくしてお粥を完食した彼女は瞬く間に寝息を立て始めた。
恐らくだが相当疲れていたのだろう。
スースーという小さい寝息の音が私を満たしてくれる。
(全く...、妹ってやつはどうしてこんなにも可愛いんだろうな...、それを私は...)
自分のした行為を思い出す度に吐き気がする。
自分は荷物となる妹を戦火の中置き去りにしたという過去があるのだ。
しかも、まだ妹は生後何ヶ月かの赤ん坊だったのを覚えている。
(ごめんなさい...、私が生き延びる為には貴方を置いて行くしか無いの...、許してヤヨイ...)
そう言いながら教会の前に彼女を置いてこの島を離れた弱い時代の私をぶん殴ってやりたい。
私はその過ちを清算するためにこの地に戻ってきたのだ。
あの時は力がなかったからしょうがなかったなどという愚かさを今でも感じている。
「ヤヨイ...、まだ生きているのかな...」
私が彼女を置いてきたのは教会だ。
教会ならばもしかすれば置いておいてくれるかもしれないという幼き日の私が絞り出した知恵だったのだが、当時戦争中だったので、生きている可能性は限りなく低いのだが。
正直にいうと、未だに私は彼女が生きている方に賭けている。
もしかしたら今でも妹が生きてくれているかもしれないという夢物語を今でも追いかけている哀れな冒険者なのだ。
クティル王国に行けばそれもはっきりするのだが、行くのが怖い。
教会に行きその場に妹がいないのであれば、それは彼女が絶命したという事の証拠になってしまうからである。
私は彼女の頭を撫でながら、窓の外に見える自然の景色を眺めていた。
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