第13話 〜本〜
いつも通り俺が畑仕事をしていると、ツバキのやつがアホ面でやってきた。
相変わらず切り株に座って俺の仕事が終わるのをまっているのだが、それに飽きたのか本を広げて読み始めてたことに気がついて、俺はその本に気をとられていたが、今は仕事に集中しようと思いそちらに集中する。
〜仕事中〜
ようやく仕事が終わると俺は彼女の元へと向かう。
難しそうな顔で本を読む彼女の顔はとても面白い。
正直本を読めるだけの教養が彼女にあるとは思えないが、ページはめくれて行っているので、読めはするのだろう。
「ツ〜バキ!」
俺が彼女の後ろから声をかけると「ヒャ!!」っと大きい声を上げながら飛び上がったのでゲラゲラ笑った。
「タルト!?、後ろから声をかけるなんて卑怯よ!!」
俺を指差ししながら怒ってくる。
彼女は胸に手を置いて心臓を落ち着かせてから短剣を渡してきたのだが、俺の興味は今その本にある。
なのでちゃっちゃっと相手をしてあげて、空いた時間に本の事について教えてもらおうと思う。
〜1時間後〜
結局、彼女は俺から一本も取れていない。
本当にタルトがこの子にいつも負けていたのが不思議なくらいに負ける気がしない。
絶対面倒で適当にやっていたという説が俺の中で浮上し始めるくらいには、本当に負ける気がしないのだ。
「も...もう一本...」
ぜぇ〜ぜぇ〜と肩をで息をする彼女とは対照的に、俺の息は乱れていない。
彼女の攻撃を躱して一本取るくらいしか行動がないのであまり疲れないのだ。
それに比べて、彼女の行動には無駄が多すぎる。
素人の俺が見ても踏み込みが大きかったり、剣を振るモーションが無駄に長い。
これでは短剣の長所である隙のなさの意味がない。
あれはどう考えても大剣士がリーチの長さを生かして戦う戦い方だ。
小柄な彼女があんな戦い方をしても意味がないどころか弱点にしかならない。
流石に可哀想になったので教えてあげることにした。
「なあツバキ、いつもより剣の振り方を変えて見ないか?」
「剣の振り方を変える?」
「そうそう、そんな大振りじゃなくって、小さく振るんだ、ただそのかわり素早く次の攻撃に移るため振ったら戻すのを意識して」
「振ったらすぐに戻す?...、よくわかんないけど...やってみる!」
俺の教えた通りに彼女が実戦してみると、多少は隙が少なくなった。
「あり?、確かに振りやすくなったかな?」
「そうそうその調子!」
彼女を褒めながらも、自分の興味のある話題へと何気なく誘導する。
「それはそうとして...、ツバキ、あの本は何の本?」
俺がそれに指をさして尋ねて見ると、彼女はふっふっふ...と不気味な笑顔で調子にのっていた。
そして本を開いて中身を見せてきたので、この本の内容がわかった。
これは剣術の指南書だ、色々な剣の基本動作や持ち方、戦い方などが載っている。
興味があったので少し見せてもらうことにしたのだが、彼女は真っ先に大剣のページを見開いて興奮したような口調でその魅力を伝えようとしてくる。
「やっぱこれだよね!剣の魅力って言えばこの大きな大剣!!、大きくてゴツくて格好いいこの剣をいつか振り回すのが私の夢なんだ!」
目を輝かせているところ悪いが、この本にも女性には無理と書かれている。
そりゃそうだ、大人の男でも振り回すのが大変な印象のある大剣を女の子である彼女が振り回す所を想像できないのは当然の事で何も間違っていないと俺は考えた。
っていうか俺がこの世界の字を読めることにまずは驚く所なのだろうが、それは村の標識などが何となく読めるところから推測していたことなのであまり驚かない。
タルトの記憶が便利なことを再確認しながら短剣のページを開いて貰った。
「短剣ね〜...、私から言わせれば小さい子供が訓練をする為の道具ね、ただそれだけの価値しかないから大人になったら両方ともタルトにあげるわ!」
そう言って自分の短剣の鞘を二回叩いた。
一応礼を言っておきながら基本の戦術を読ませて貰う。
黙々と読み進めては実践、読んでは実践を繰り返した結果少しずつだが彼女の剣の腕前も上達してくる。
1週間ほど経った頃には見違えるほど上達した彼女の姿があった。
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