第12話 〜ツバキ〜

「ムキ〜!!、なんでタルトが私に勝てるのよ!!」


 怒りの表情で俺を見てくるが、あの実力じゃあタルトに勝てないだろうと思う。

 俺はタルト本人ではないのに、彼女の攻撃を躱し続けれたのは彼の記憶によるものであり俺の力ではない。


「あんなんじゃ俺はやられないよ!」


 片手を振るようにして彼女を小馬鹿にしたような態度をとる。

 それが悔しかったのか、彼女の表情はますます機嫌が悪くなっている。


「抜きなさい!もう一回勝負よ!!」


「いや、でももう夕方だしまた明日な」


 もう日も暮れかかっていたのでこんなところに長居はできない。

 早く帰らないと親が心配するかも知れないので、早めに帰っておきたいのだ。

 それを聞いた彼女はふうっと息を吐いて少し落ち着きをとり戻した。


「それもそうね、わかった...でも!明日もちゃんと付き合ってよね!」


 彼女が背を向けて駆け出そうとしていたので俺が止める。


「ちょっと!待って!君の名前は!?」


 彼女は急ブレーキを掛けようとして小石に躓き、転びそうになったがどうにか態勢を立て直し、ドヤ顔で俺の方に振り向いた。


「私の名前はツバキよ!!覚えときなさい!!」


 元気のいい声を発しながら走っていくその様はまさしく元気っ子という表現が正しいと思える。

 てかまた可愛い子だったな...、さすが異世界ってところか...。

 俺は夕焼け空を見上げながら帰路を楽しい気分で歩いていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る