第10話 〜仕事〜

「タルトさん、今日から畑仕事頑張ってくださいね」


「あ...うん...」


 俺は生返事を返してしまった。

 この世界での働き方などよく分からないので正直な本音を言うと心細い。

 とりあえず俺が最初に目覚めた畑に向かったのだが、何をやればいいのか分からない。

 頭を抱えて悩んでいると、頭の中に畑仕事のやり方が浮かんで来た。

 何で急にやり方がわかったのかは分からないが、きっとタルトの思い出だろうと思うことにする。

 穴を掘り種を撒いて水を引く。

 簡単な作業だが結構しんどい。


(農作業の道具って結構重いんだな...、これが終わったら雑草を抜かないと...)


 雑草を抜こうとした時に何かを思い出した。

 魔法...?。

 そうその言葉が頭に浮かび離れない。

 振り払おうと首を振るが何度も何度も使えと頭に浮かび上がるのでついつい言葉を発した。


「土魔法・雑草抜き!」


 俺がその言葉を発した時、体から力が抜ける感覚と共に雑草が全て刈り取られた。

 誰かが急に引っこ抜いたかのように、雑草が1人でに畑の外へと抜かれて行くのだ。


「これが魔法...か?便利だな...めっちゃ疲れるけど...」


 とりあえず初めてにしてはできた方だと思う。

 雑草一つなく水が引き入れられた畑を見て満足していると、再び頭の中に魔法名が浮かび上がってくる。


「今度はなんだ...」


 文句を言いながらも俺はそれの言う通りに魔法名を唱える。


「土魔法・植物成長力上昇」


 俺は土に手を触れながらそう言い魔力を送る。

 するとさっき埋めたばかりのタネから芽がもう出たのだ。

 いくら魔法があるからってこんなに早く成長するものなのかと感心する。

 日本だと何日もかけてここまでする労力を考えると魔法ってスゲェなと思わずにはいられない。


「...って...俺普通に魔法使えてる...?」


 一番大事な所に今更気がついた。

 自分でも意味不明なので一度目を閉じてもう一度植物を見るが、やはり芽が出ている

 むしろ更に成長しており、目の前の植物はもう芽を出して花を咲かせようとしていた。

 疑いたいが疑いようがない、俺は魔法使いになっていたのだ。


(タルトってスゲェな...、魔法使いなのかよ...動物に言葉教えたり出来てたし、やっぱりこの体普通じゃないんだな...)


 自分の頭をさすりながら感傷に浸っているとどこからともなく声が聞こえて来た。


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