第4話 〜タルトの家族〜

 うん?

 俺はどこかわからない場所で目覚める。

 ここは?

 俺は辺りを見回す。

 下に何か文字が見える、職業のようだ。

 村人、魔法使い、僧侶、戦士、格闘家などのゲームで見たことのある職業が多めだ。

 奥の方に見える職種には陰りがありよく見えないが、前の方にある職種はよく見える。

 どういう意味か考えていると村人の文字が浮かび上がり俺に突き刺さる。

 すると種まきの仕方が頭の中に流れ込んできた。


(これはタルト本人の記憶?)


 ハッと気がついた時に俺は目覚めた。

 外で鳥のさえずりが聞こえる、どうやらもう朝のようだ。


(夢じゃなかったか...)


 俺は大きいあくびをしながら背筋を伸ばしていると階段の方からドタドタと駆け上がって来る音がする。


「にーにー!、おっはよー!」


 昨日の小さい女の子が俺にダイブしてくる。

 それを受け止めた俺は少し天国に行きかける。

 緑髪の小さい女の子はニコニコ笑顔を振りまきながら笑っている。


「えっと...君は...」


 小さい女の子は少し考えてから自分の名前を告げる。


「私はノーレ、お兄ちゃんの妹!」


 元気よく俺に挨拶してくる。


「お母さんがにいちゃんは記憶喪失してるから自己紹介しておきなさいって言ってた!」


 元気な妹だなと思いつつもノーレの顔を見た俺はやっぱりかと思った。

 幼い顔つきだが形は整っている。

 この村の顔面偏差値が高すぎることに俺は気づいてしまった。

 昨日のアユナといい母さんといいノーレといい、全員前の世界なら人気者になれるだけの顔をしている。

 正直この体も結構いい顔をしているのが腹ただしい。

 今は自分の体なのでそこまでの嫌悪感はないが、前の世界でタルトを見たなら羨ましく思っていただろう。


「ノーレおはよう」


 俺も挨拶を返す。


「えへへ〜、おはよう!」


(元気の良い妹だな)


 俺はそう思いながらノーレに袖を引っ張られ一階に降りる。

 一階に降りると母さんが料理を作り終えていた。


「タルトさんおはよう、朝食ができていますから召し上がってくださいね」


 簡易的な椅子に座り朝食を見る。

 日本でもよく見た光景だ。

 食パンに卵を乗せたものとサラダが並んでいる。

 ただ、日本にいた時と違うのは一緒に食べる人がいることだ。

 ノーレが熱々の食パンにかじりついて美味しそうに頬張っているのを見てお腹が鳴る。


(美味しそうに食べるなノーレは)


 ノーレの笑顔を見ていると幸福な気分になる。

 いや、この空間の居心地がいいのかもしれない。

 俺も食パンを手に取り「いただきます」と言い食べようとすると2人とも手を止めて俺の方を見てくる。


「にーにー、変なの〜!」


 ノーレが俺を指差してそう笑う。


「何か変なことしたか?」


 俺はノーレに聞き返す。


「いただきます、だって言ったじゃん」


 ノーレが俺の手を合わせる仕草をし真似をする。


(ああ、そうかこの国ではそういう習慣がないのか?)


 違う国みたいだし習慣が違くても何もおかしいことはない。

 まあ、礼儀のようなものだしこれからも俺は続ける。

 俺は母さんの作ってくれた料理を頬張る。

 口の中に含み食パンの柔らかさを堪能すると、甘みが出てきて美味い。

 次にサラダをフォークを使い食べる。

 とれたてなのかみずみずしい食感が残っている。

 生の食材の味をそのまま使用しているが充分に味が出ている。

 総合していつもコンビニで買う弁当よりは美味いと思う俺だった。

 それになんだか優しい味がする。

 俺は母さんの手料理を味わいながら食べるのだった。



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