第3話 〜こっちの親〜
俺はアユナに肩を貸してもらいながら送ってもらう。
ここに来るまでの最中に村の中を見ていたが文明レベルが低く、木の家しか見当たらない。
ここが世界のどこかはわからないがとりあえず言語は通じるし、今のところは普通の田舎の村と言った印象を受ける。
「ここよ」
アユナが俺の家を指差して呟く。
俺の家もどうやら他のと同じ作りで、木で作られているようだった。
「ごめんください！」
アユナは家の扉を開けて声を出す。
すると家の奥から綺麗な緑髪の女性と緑髪の小さい女の子が現れる。
「アユナさん、どうしたんですか？こんな昼時に珍しいですね」
「いえ、実はタルトが熱を出してしまい急遽戻ってきたのです」
そうアユナが言うと女性は血相を抱えてタルトの熱を測る。
相変わらず額と額を合わせて来る。
綺麗な女性の人にこんなことをされたら誰でも心拍数が上がるだろう。
「タルトさん、どうしたんですか！こんな高熱を出して、ささ、今日はもう布団でねむってもらいますよ」
女性に俺は連れられて自分の部屋へらしき部屋へと入れられる。
そこにある布団で俺は眠りにつく。
(誰だか知らないけど綺麗な人だったな...)
俺は疲れていたのかすぐに眠りについた。
〜夕暮れ時〜
しばらく寝ていたら良い匂いがしてきたので目を覚ます。
焼きたての肉の香ばしい匂いが鼻をさす。
「タルトさん、いい肉が手に入ったので今日はこれで体力をつけてくださいね」
さっきの綺麗な女性が笑顔で肉を運んできてくれたので一応礼を言う。
「ありがとうございます...、えっと...」
名前がわからずに戸惑う俺に彼女はこう言う。
「タルトさん大丈夫ですか？、気分が悪いのならお母さんになんでも言ってね」
「母さん？」
「え？、さっきアユナさんから聞きましたけど、もしかしてお母さんのことも忘れてる？」
俺の脳に衝撃が走る。
この綺麗な人が俺の母さん！？にわかに信じがたい。
と言うことはさっきの小さい女の子は俺の妹か？。
俺が難しい顔で考えていると心配した表情で俺を見てくる。
「タルトさんがもしも母さんのことを忘れたとしても、母さんはタルトさんのことを忘れませんから」
母さんの表情に少し胸が痛む俺だが、本当に見覚えがない。
タルトとしての記憶は俺にはない。
おそらくだが、俺はタルトの体を乗っ取ったような感じなのだろう。
「ごめんなさい、母さん、でも俺少しずつでもここのこと思い出して行くから...」
母さんは笑顔で俺を見つめてくれていた。
「大丈夫、あなたは私の息子だから....、きっと思い出せる」
母さんの手に抱かれながら温もりを感じる。
前の世界では経験のないことに少し戸惑う。
(人の手ってあったかいんだな...)
俺は母さんの優しさを受け取る。
(こんな親を持ったタルトは幸せ者だな)
母さんの優しさに落ち着いていると、お腹が鳴る。
俺のお腹が鳴る音を聴くと母さんは笑いながら肉料理を渡して来る。
「さあ、タルトさん、今日はいっぱい食べて休みましょう、あなたはまだ子供なんだから母さんに甘えてもいいんですよ...」
俺は母さんの肉料理を食べる。
熱々で香ばしい肉汁が口の中に広がる。
正直熱が出ている人に肉料理はどうかと思ったが、母さんの味付けがいいのか程よく食べていける。
俺は肉を食べながら少し涙を流していた。
それを見た母さんが不安そうに俺を見て来る。
「もしかして美味しくなかった？」
母さんは料理の味の心配をしているようだ。
「いや、とても美味しいです...」
美味しいのは本当だが、それよりも人の温もりを感じれたことに涙を流したのだ。
俺に優しく接してくれたことに感謝しかない。
俺の本当の親もこれくらいできた親ならな...と過ぎたことをどうこう言っても仕方ない。
もしこの世界が夢ではないなら明日もタルトの母さんに会えるのだろうか？。
肉料理をを食べ終わると母さんは「お休み」といいながら部屋を出て行く。
俺は再び眠りにつく。
願わくばこの夢が覚めませんように。
もしくはここが死後の世界でありますように。
もう現実の世界には戻りたくない。
あそこに俺の居場所はもうないのだから...。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます