その8

 とある森の中、次の日の泉。

 それはもう、ひと目で徹夜したと分かる充血したまなこ


「あなたが食べたいのは金の神饌しんせんですか? それとも、銀の神饌ですか?」

「卵焼きとおにぎりか。アンタほんとにどこの神様なんだよ」

「友人に特訓してもらいました。彼女に頼みこんで、材料も一年分は確保しましたよ」

「まあ、とりあえず食べてみるか。毒は?」

「ありませんっ。当然の懸念みたいな顔しないでください」

「……んー」

「さあ、もっと一気に。卵もガブッと」

「むー」

「……美味しくない?」

「いや、何て言うか」

「卵焼き、自信あったんだけど」

「美味いっちゃあ、美味い」

「やった!」

「でも、普通」

「やったあ?」

「女神っぽさは欠片かけらも無いのな。神秘的な料理を期待したけれど、それじゃ昼飯で食うには重すぎるか」

「地味だった?」

「卵焼きは十分に贅沢だね。うん、これでいいや。御馳走も毎日出されたら飽きるもんな」

「じゃあ、オーケーなの?」

「昼飯一回につき、木の斧一つ。でも、雨の日は休むぞ?」

「それで構わないよ。頑張っちゃうから、よろしくね」

「あいよ」

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