その7

 とある森の中、同日、汚い泉。

 それはもう、ひと目では農夫と見紛う泥だらけの女神。


「見つからないものは、諦めましょう」

「やだよ。せっかく優勝した記念なんだぞ? 来年は勝てるか怪しいのにさ」

「探すのを諦めるのです。斧は返します」

「どうやって?」

「銀の斧を十振り集めると、天界で金の斧に交換してくれます。持ってませんか?」

「あるわけねえだろ。銀だって一本で年収並みの値段がするわ」

「鉄の斧が五百でも、金に交換可能です」

「俺は斧屋じゃないんだ。そんな持ってたら、樵なんてとっくに廃業してる」

「木の斧が五千で、金の斧に交換してもらえます!」

「木で木が伐れるかっ!」

「そこは割り切りましょう。ん? 斧だから“割り切る”、少し面白いですね」

「アンタの頭がな」

「ともかく、樵なら木はお手の物でしょう? 五千なんて軽い軽い。サクッと集めて、金の斧をゲットしちゃいましょ」

「……俺のメリットは?」

「仕方ありませんね。銀の斧、プレゼントしちゃいます」

「それは金の斧との交換に使え。斧以外に何かないのか? 神具とか、女神パワー的なものを授けてくれるとか」

「褒めてあげます。女神的に」

「いらない」

「女神スマイル?」

「いらん」

「……女神泣き」

「泣くなよ!」

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