第3章 この優美な新生活に決別を!
作戦会議は夕食の後に
「それで、一体何の話ですか? まあ、わざわざクイーンを先に帰らせた事や昼にカズマが頼んできた内容から、大体推測できていますが」
クイーンが店を出てから十分に時間が経った頃、めぐみんが真面目な顔で尋ねてきた。
やはりめぐみんも気付いていたようだ。
「因みに、俺が買い物に行ってる間クイーンの様子はどうだった?」
「いたって普通でしたよ。私では運べない物を念動魔法で運んでくれたり、ゴーレムにして運んできた石材を指でつついて粉微塵にしたりと。黙々と準備を進めてくれていました」
「そっか、ならよか……。なあ、この世界では石を指で砕くのが常識なのか?」
俺の問いにめぐみんは呆れたような目を向けてきて、
「何を馬鹿な事を。普通は炸裂魔法や爆発魔法を使うか、槌やハンマーで地道に砕いていくに決まってるじゃないですか」
「お前が言いだしたんじゃねえか」
どの辺がいたって普通なのかよく分からないが、取り敢えず問題はなかったという事か。
「ねえねえ、何の話をしてるの? 私を置いて勝手に話し始めようとしないでよ。というか、クイーン帰っちゃったけど何で?」
と、アイスクリームが入った器を片手に戻ってきたアクアが、そんな頓珍漢な事を言い出す。
「いいか、アクア。今から天界で何が起こったのかをめぐみんとダクネスにも話す。これはクイーンに聞かれたら色々と問題があるだろ、だから先に帰ってもらったんだ。というか、お前は天界で聞いてるはずだけど……。その様子じゃ覚えてないんだな」
「あんた私を何だと思ってるのよ、天界で言われた内容はしっかり覚えています! というか、どうしてカズマも知ってるのよ? それにめぐみん達に話す必要ってある?」
どうやらアクアは未だに事の重大性に気付いていないらしい。
「いや、あれだけ条件が揃ってるのに気付かないのか、ってお前に言っても仕方がないか。ごめん、俺が悪かった」
「今すっごいバカにされた気がするんですけど」
眉間に皺を寄せながら不満げにアイスを口に運ぶアクアを他所に、俺はクリスから聞いた女神と神器の話を簡単に説明した――
俺が話し終えた途端に、
「「重い!!」」
めぐみんとダクネスは揃って、苦虫を噛み潰したような顔を隠せないでいた。
そりゃ、今の話を聞いたら誰だってこうなるだろう。
「ま、まあともかく。これでクイーンの素性は判明した訳ですね。昨日からカズマの様子が変だと思ってはいたのですが、これでスッキリしました」
「そ、そうだな。これだけ状況証拠が揃っていれば、恐らく間違いないだろう。ああ、また厄介な事に。私の日頃の行いはいいはずなのに……」
二人も俺の見立てに同意してくれたようだ。
しかし、相も変わらずと言うかもはやお約束というか。
「ねえねえ、何で今の話からクイーンの素性がはっきりするの?」
アクアは今ので話を二回聞いたことになるが、俺達が辿り着いた結論に行きつかなかったようだ。
「いやいや、今のを聞いて逆に何で分かんないんだよ! いくらお前の脳みそがチンパンジー並みとは言えいくら何でも気付くだろ、て、くっ、苦しい……っ! 分かった、今のは言いすぎた。せいぜいゴブリンぐらいはあるよなって、タンマタンマ! 俺が、俺が悪かったから首を絞めるのはやめろ!」
無言で俺の首を絞めてきたこの頭の足りない駄女神に、めぐみんとダクネスが要点を絞って再度説明してくれて。
「ああああっ!!」
ここまできて、漸くアクアも気付いたらしい。
というか、店に迷惑がかかるから大声で騒ぐのはやめてもらいたい。
「ど、どどどどうしましょう!? えっ、ほんとどうすんのよ? カズマさん、一体私はどうしたらいいの!?」
「おっ、落ち着けアクア! 驚いたのは分かったからひとまず落ち着け! カズマの口から出てはいけないものまで出てきそうだ」
「はっ!? ご、ごめん、少し取り乱したわ。だってだって、まさかこんな事になってるなんて思いもしなかっんだもの!」
危うく腹に入ったものがぶり返して、机の上が大惨事になるところだった。
「ですが、これで爆裂魔法をはじめから打てた謎が解明されてほっとしましたよ。破壊神なのですから、爆裂魔法ぐらい使えても不思議ではありません。それに他のスキルも、冒険者カードに表示されていないだけで元々習得していたのかもしれませんね」
「一番気になったとこ、そこかよ」
「他にどこを気にしろというのですか? まあ精々、私の前世と同じ破壊神だというところに共感を持てるぐらいでしょうか。クイーンは我が仲間。それ以上でもそれ以下でもありません」
相変わらず、大した器の大きさだ。
これだけ寛容なのに何で普段あんなに短気なのだろうか。
「めぐみんの言う通り、クイーンが何者であろうと、私達の仲間であるという事実に変わりはない。しかし、いくら何でも今回は話の規模が大きすぎるな。どうやって噛み砕けばいいのか少し迷ってしまう……。それより少し気になったのだが、何故クリスはこの事を知っているんだ?」
「そ、それは……っ! 多分、きっと、……エ、エリス様からの天啓的なものがあったとかなかったとか言ってたような……」
しまった、クリスがエリス様だって慣れすぎて、ついクリスから聞いたと言っちまった。
よく考えたら、一介の冒険者がこんな事情を知るはずがないってのに。
「そ、そうか。しかし、何でエリス様はクリスにそんな大切な情報をお教えなさったのだろうか? いくら敬虔な信者とは言え、おいそれと教えてよい情報とは思えないのだが……。そう言えば、エリス様のお顔が誰かに似ていたような……」
「今はそれ以上考えても仕方がないだろ!! 大方、神器の一件とかでエリス様の信頼を勝ち取ったとか、そんなんだろう。俺もクリスは優秀な盗賊だって、昔エリス様に話したし!? と、取りあえず今は目の前にある問題について考えようぜ!」
「……それもそうだな。この話は今度クリスに直接問い詰めるとしよう」
ひとまず窮地は脱したな。クリスには、今度頑張ってもらおう。
「それで、これからどうするのですか、カズマ? わざわざ私達にこの話を持ち掛けたんです、かなり切羽詰まっているのでしょ?」
ダクネスの対応に追われていた俺に、めぐみんが話を促してくる。
「そ、そうなんだよ。残す記憶の封印が解けたら最後、神器の封印も解呪して天下無敵の破壊神様に返り咲くって寸法だ」
「確かに時間がなさそうだな。記憶や神器の封印解除にどれだけかかるのかは未知数だが。あのクイーンの事だ、キッカケがあったら瞬く間に終わらせるだろう」
そんな事を相談する俺達に、しかしアクアは、
「あのね、皆何か誤解してるみたいだけど。クイーンに掛けられた封印ってのはね、それはもう強力なの。賢さや強さがどうこう以前に、一度掛けられたらどう足掻いても解呪不可能な代物なのよ。あの創造神様が自分の神権まで使って作ったんだから間違いないわ」
力強い口調でそんな説明を始めた。
「お前、その封印がどんなもんか知ってんのかよ。でも現に、三つのうち二つは外されてるそうじゃねえか。そもそも神権ってなんだ?」
「神権ってのは、神々が自分の司るものに直接働きかけて命令を下せる権利のことよ。私の場合は、この世にある全ての水の眷属が対象ね」
そう言えば、こいつが洪水を引き起こしたり雨乞いをしたりした時に、眷属がどうこう言ってたっけ。
「創造神様の神権は、ご自身が作り出した物に一定の秩序を与えるって代物でね、私達女神もその対象に入ってるの。まあ、それだけ強い神権だから、創造神様ご自身にさえもかなりの制限が掛かるのだけれど。だから、捕縛された人物には外せないって命令の下で作られた以上、例えクイーンが封印を壊したいっていう破壊の神権を使ったとしても、創造神様の神権が優先されるのよ」
なにそれ反則技じゃねえか。
制限があるとはいえ、そんなのがあったらやりたい放題じゃん。
そう、例えば……。
「しょうもないセクハラや嫌がらせ、人権侵害なんかに使ったら、例え創造神様でも神権剥奪よ。あの方が世界を構築した時にそう決めたらしいから」
「べべ別にそんな事考えてねえし!」
三人が蔑んだ目で見てくるのが痛いです。
んっ、でもおかしくないか?
「だったら猶更、クイーンはどうやって封印を解いたんだ? お前、あいつにも絶対外せないって言ったよな」
「それはあれよ。多分魔法を解いたのが、クイーン以外の人なのよ。あれはあくまで自力では絶対に外せないってだけだから、他の人なら割と簡単に外せるの。体は動いたみたいだし、こっちに来てから誰かに頼んだんでしょ」
何という落とし穴。
「仕方ないですよ。大きな力を行使するには、かなり条件を厳しくしないと上手く発動しませんから。その辺りは神様だろうと変わらないようですね」
ロマンもへったくれもないな。
創造神とやらは、なんで自分で自分の首を絞めるような理にしたんだろうか。
「まあ、細かい設定はともかくとしてだ。俺達じゃ真正面から戦っても絶対に負ける。だからここは、クリスの依頼だけに集中しようと思う。基本的には俺とクリスで動くけど、バックアップとか準備とかでお前達を頼るかもしれない」
クリスが言うには、神器がなければ天界の人達だけでどうにかできるらしい。
となると、記憶が戻る前にそれとなく腕輪を外してもらって、天界の人の準備が整うまでアクアに預かっててもらうというのが一番安全だろう。
なんなら先に神器だけ天界に届けてもいい。
「という訳でアクア、奪った神器の後始末を頼めるか? ……アクア?」
返事がなかったので不思議に思い、顔を覗き込んでみたら、
「カズマさん、カズマさん……」
アクアは顔を俯かせて悲しそうな、寂しそうな顔をして。
「仮に神器を奪ったとして、その後クイーンはどうなるの?」
「っ!?」
……俺があえて考えないようにしていた事を。
こいつは仮にも女神だ。俺なんかよりも天界については詳しいし、その後どうなるかぐらい分かっているはず。
俺もクリスから詳細を聞いた訳ではないが、仮にも一度永久凍結とやらを執行された罪人で、現在絶賛逃走中なのだ。
捕まったが最後、お咎めなしという訳にもいかないだろう。
むしろ、前よりも更に酷い処置が為されてもおかしくない。
しかし、俺達は既にあいつのいる生活を知ってしまった、今更パーティーを抜けられたらそっちの方が迷惑だ。
……いや違うな。単に俺達はあいつの事を気に入ってしまったのだ。
見た目も性能も超が付くほど優れており、ややからかい癖があるが、それさえも彼女の魅力を掻き立てるスパイスに他ならない。
そんな、割とお節介で気の良い優秀な仲間であるクイーンが、当然の報いとは言え拷問にかけられるのを見て見ぬふりをするとか、流石にやりたくない。
これは当然、めぐみんやダクネスも考えていたのだろう、俺達の間に暗い空気が流れ始めた。
「……カズマ、本当にどうにもできないのですか? このままではクイーンは酷い目にあわされて、もう二度と私達と会えなくなってしまうんですよね? ダクネスの結婚騒ぎの時も、最後には何とかしてくれたじゃないですか」
「……前とは話の次元が違うだろ。ダクネスの時は一般人と貴族の壁があったから無理だと思ったけど、所詮は人間同士だ。しかもあれはなんだかんだ言って、バニルの奴が裏で仕組んでたっぽかったし。でも、今回はあいつの仕業でもねえ。裁くのは神様で、更にクイーンが有罪なのは明白だ。俺如きが何か言ったって意味がねえよ」
めぐみんに言われなくても、俺だってクイーンと生活を送れるならそうしたい。
だけど人間である俺やめぐみん、ダクネスではどう考えても発言力に乏しすぎる。
「なあアクア、さっきから静かにしてるけど、お前が頼んでも無理なのか?」
この中で唯一発言権を持っていそうなアクアに、ダメ元で聞いてみるが。
「…………私も頼んではみるつもりだけど、創造神様が決定なされた事だから減刑は無理だと思うの」
アクアは何時になくしょんぼりした顔で力なく答える。
だよな、もしこいつが動いて何とかなるなら、今頃天界に飛んで行って直談判しているはず……いや、ちょっと待て。
もしかしてこいつの視野が狭いだけで、別のやり方なら方法があるんじゃないか?
そう、例えば……。
「なあ、アクア。お前、今減刑は無理だろうって言ったけど。単に判決の手法を変えてもらうとかは無理なのか? 軟禁状態で書類作業を今までの十倍に増やすとか」
「へっ、判決の手法を変える? でも、それって罰を受ける事には変わりないんだから、大して意味がないんじゃないの?」
「っ!? 考えましたね、カズマ。アクア、それは大きな違いですよ。死刑となるところを代わりに懲役年数や仕事量を膨大にした場合、刑の重さは同じでも生き延びる事はできます!」
俺が何を言いたいか素早く理解しためぐみんが、ちょっと興奮気味に机をバンッと叩く。
少し遅れてダクネスも理解したようで。
「確かに、人間の世界でも死刑と同等の処罰というのは用意されている。死刑の代わりに、懲役を数百年にするとかな。人間にとっては終身刑と変わらないが、長い時を生きる神様なら大した年数ではないはずだ。アクア、天界にもそういう措置があるのではないか? 死刑の代わりに相当する、死にたくなるほどの苦しみを与えるような責め苦が…………。責め苦、が…………」
「お前、今ちょっと想像して興奮したろ」
「……してにゃい」
ほんのりと頬を赤らめ視線を逸らすこいつは、もう廃品回収にでも出した方がいいのではないだろうか。
「そうは言ってもね、私は法律とか規則とかって難しい事、いちいち覚えてないし。うーん、…………あっ。でも、あの方法ならもしかして……」
アクアは何やら思い当たる節があったようで、俺達は思わず佇まいを正した。
「これは天界に伝わる御伽噺なんだけどね」
「ここまで期待させといて御伽噺かよっ!」
「ちち、違うの! 御伽噺ではあるけど、これは昔の前例を私達が覚えやすいようにするためのものだから、ちゃんと使えるはずよ!」
童謡には昔の事実や教訓が入ってる場合もあるから、それみたいなものか。
「ったく、紛らわしい言い方すんなよ」
「あんたが早とちりしたんでしょうが! おっほん。昔、ある神が大きな罪を犯した時、司法を司る神から死刑を言い渡されたらしいの。でもその神はあまりに優秀で天界でも一目置かれてたから、創造神様を始め多くの神々が仲裁案を出したそうよ。その仲裁案として三つの選択肢を与えられたらしくて、一つに永久凍結、一つに地獄送り、そしてもう一つが……」
アクアの次の言葉を聞き漏らすまいと、俺達は身を乗り出して。
「ちょっ、近くて話し辛いんですけど。というか、カズマにそんな近くで熱心に見つめられると恥ずかしいんですけど……」
何でここで焦らすんだよ!
ていうかそんな顔を赤く染めてチラチラ見てくんな、鬱陶しい。
と思ったが、確かに間違ったら頭がぶつかるぐらいには接近していたので、ここは素直に身を引いておく。
「そ、それで、もう一つが神格の剥奪よ」
「神格? それを失うとどうなるんだ?」
「早い話、超常的な力や神権を使えなくなったり不老不死でなくなったりした状態で、地上で人間と同じ暮らしをしなきゃいけないってところかしら」
なんだ、その程度でいいのかよ。
他の二つが滅茶苦茶きつそうなのに対して少し拍子抜けだ。
俺の考えが顔にも出ていたらしく、アクアはヤレヤレと肩をすくめ。
「あのね、カズマ。これはそんな気楽な話じゃないの。疎かな人間がどれだけ望んでも手に入れられない不老不死を捨てたり、神々の持つあれな超パワーが使えなくなるって、神にとってはかなりの恐怖なんだから」
不老不死に関してはリッチーとかがいるけどな。
それもこうしてアンデッドを目の敵にする奴に見つかったら、一貫の終わりかもしれないが。
「そんなの、永久に何もできないより何十倍もいいじゃねえか。確かに死ぬのは怖いし、俺だってごめんだけど。終わりがあるからこそ毎日一生懸命生きていける。だからこそ人生は面白いんだ!」
俺の力説にアクアはポカーンとし、そしてくすくすと笑い出した。
「お、おい、何で笑うんだよ。俺、今結構格好いいセリフを言ったつもりだったんだけど」
「普段全然頑張って生きてないカズマがそんな事を言っても、大して重みが出ないんですよ」
「そういうのは自堕落な生活を改めてから言うんだな」
めぐみんとダクネスまでもがちょっと吹き出して苦言を呈してくる。
俺だってたまには格好をつけたくなる時もあるのに、酷い扱われ方だ。
決め台詞がすげなくされて、机の端でいじける俺に。
「そうそう、カズマにはそんな格好良いセリフは似合わないんだからよしなさいな! でも、おかげで私も踏ん切りがついたわ。クイーンには神格を諦めてもらいましょう」
アクアが憑き物が晴れたかのように、清々しい表情を浮かべた。
そのお陰か、随分と空気が軽くなった気がする。
と、アクアはその場でバッと立ち上がると両手を広げ。
「それじゃあ、ちゃっちゃと決着を付けちゃいましょう。私が創造神様に頼むとしても、クイーンが大人しくしてくれないと話し合いにならないから、神器は回収しておいて記憶がないうちに天界に連れて行く、これで完璧よ! 私は立ち上がるわ。またクイーンと一緒に楽しく暮らすために!」
言い切った所で、チラチラッと俺達に視線を向けてくるアクア。
途中演劇臭かったが、正直アクアがここまで真面目に語るなんて少し驚いた。
こいつも何だかんだありながらもしっかり成長してきていたんだなと少し感動を覚える。
そんなアクアの反応を見て俺達は互いに顔を見合わせ。
そしてふっと頬を綻ばせた。
「我が名はめぐみん! 万象の破壊に見初められし者の輩にして、紅魔族随一の天才! 故に、汝の渇望を無下にする事能わず! 勿論、全力で協力しますよ。もし交渉が破綻した時は、我が爆裂魔法で創造神だろうが何だろうが脅してやりますよ!」
「めぐみん、神様に対してあまりにも無礼だぞ。ともあれ、漸く方針が定まったな。そういう正攻法での解決が可能なら、私も是が非でも手を貸そう」
「めぐみん! ダクネス!」
快くアクアの提案に乗っかった二人に、アクアがはしゃぐ。
「まっ、放っておいたせいで記憶を取り戻した破壊神様が暴れでもしたら、なんかの拍子にこの世界が無くなっちまうかもしれないし。そうなったら、俺のキャッキャウフフな桃色ライフが真っ白になっちまう。そんな事態は断固拒否させて頂きたい。俺はまだ全然その辺りを楽しめてないんだ!」
「もうちょっと言葉を選べないの? せっかく良い事を言いかけてたのに。まあ、それがカズマさんらしいわね。とりあえず、ありがとうね!」
少し呆れながらも、アクアはふわっと笑顔を見せてきて。
「……そ、それよりアクア、実際問題としクイーンを説得できるだけの言い訳はあるのか?」
よく分からないがアクアの笑顔を見ていると変な気分になりそうだったので、俺はさり気なくアクアから視線を逸らした。
と、アクアはキョトンとした顔で首を傾げ。
「何も考えてないわよ? そういうのはカズマさんの仕事じゃない」
「丸投げかよ! さっきまでの俺の感動を返せ!」
やっぱり根本的には何も成長ちゃいやがらない。
「カズマ、何を笑っているのですか?」
「笑ってねえし。おいこら、ニヤニヤすんな! そ、それじゃあそっちの路線でまとめるから、お前らもなんかアイディア出せよ」
こうして、皆の心を一つに俺達は作戦会議を始めた。
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