第2話 夏休み

ようやく夏休みに入った。

とにかく、学校がある時よりかは朝は早く起きなくていい。

それが一番の救いだった。

しかしながら、夏休みの宿題は多いし、塾も「夏は受験の天王山だ」とか語り出してみんな本気で勉強し始めている。

でも、自分自身P大の医学部を目指しているにも関わらず、「本当に医者になりたいのか」「なぜ医者になりたいのか」という根本的な勉強の目的を見失いつつあった。

もっと医者になりたい想いの強い人がなった方が、もし運良く自分が受かったとしても、進学して医師になる資格はあるのだろうか。

私の父は医師で、幼い頃から医師という職業が身近だった。

仕事が忙しくて、あんまり一般のサラリーマン家庭よりは家族サービスはなかったものの、そんな仕事に邁進する父の姿に物心ついた頃から、一種の憧れを感じていたのは確かだ。

家族で旅行に行っていても自分の担当している患者が急に体調が悪くなったら電話一本で駆けつけたこともあった。

家族よりも仕事の方が優先なんかよって思ったけれど、使命感に燃えていち早く駆けつけようと思って行動に移した父がやっぱりかっこよかった。


今思うと、医師以外の仕事についてあんまり詳しくなく盲目的に選んでしまっている感は否めないなということが分かった。

いくら志望理由を後付けしても、それは一種の言い訳のようにしか聞こえなくて、自分が面接で言う志望動機がなんか自分でも嘘くさく聞こえてしまうだろうなと思った。しかも、父がかっこよかったからという一言に集約してしまっていいのだろうかとも思った。

だから、面接では「地域医療に貢献したいです。」とか「患者とコミュニケーションをしっかりとって、インフォームド・コンセントを出来る限り推し量っていきたいです。」とか言わないといけない殻を被った自分が嫌いになるだろう。


そんな葛藤の中で、日々勉強を続けても目標もあやふやなままだったからなのか、ちっとも成績は上がらなかった。

特に数学と化学。

理系に進んだくせに理系科目が全滅だったのだ。

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