第8話

 5人の指導を受け続けて、数日が経った。あれから僕は以前よりもだいぶ速く走る事ができるようになっていた。そんな話を昼休みに屋上で幼馴染に話していると生徒会長である真子がこんな事を言ってきた。

「真ちゃんも皆もだけど体育祭は良いけど中間テストは大丈夫そうなの?」

 受験生であるのにすっかり忘れていた。そうなのだ。体育祭は6月上旬に行われるが、その前に5月のゴールデンウィークが終わった後、すぐに高校3年生になって最初のテストが行われる。体育祭はめんどくさいものなのに、イヤに体育祭の練習に集中してしまった。今更、中間テストの存在を確認したというのが僕の顔に書いてあったのか、楓が僕に突っ込んできた。

「真ちゃん、中間テストの存在忘れてたでしょう?」

「僕には何の事かさっぱり」

「ダメよ、真ちゃんごまかしちゃ 真ちゃんの顔に中間テスト忘れてた〜って顔に書いてあるんだもの」

楓がイタズラな笑みを浮かべる。そこに純平が顔色を悪くして話に参加してくる。

「やべーよ中間、全然勉強してねーよ!!夏菜〜勉強教えてくれよ〜 俺このままじゃ赤点取っちまうよ〜」

「嫌よ 普段から復習をしてない純平が悪い」

夏菜に厳しい言葉を頂いた純平も勉強をしていないらしく、中間テストの結果が赤点祭りになると言っている。運動や勉強など何でもできる真子とは違い、純平は野球部で運動はできるが、勉強はあまりできない。そこに祐介が口を開く。

「俺は、普段から勉強の復習をしてるからな 中間テストは大丈夫そうだ 中間で赤点なんて取ったら大学なんて行けそうに無いからな」

祐介は淡々とした口調で言う。祐介も頭は良い方だと思う。次に楓が口を開く。

「でも、私、現代文は行けるかも知れないけど数学がやばいかも〜」

楓が若干顔色を悪くしながら答えると、真子がこんな提案をしてきた。

「なら、皆で、ゴールデンウィークの初日勉強しましょうよ!!お互いわからない教科を教えられるし、どう?」

中間テスト1週間前になると全部活の活動がテストが終わるまで休みになる。だから、部活に入ってる僕達は勉強に集中する事ができる。真子が勉強会の提案をすると楓と純平の顔色が良くなり口を開く。

「さすが真子ねぇ!!そうだ!! 皆で勉強すれば良いんだ!!」

「さすがは真子ちゃん! 真子ちゃん私に数学の勉強教えてね?」

純平と楓が目を輝かせながら言う。正直に言うと僕も、普段から、勉強の復習はしているが、頭に入らず苦戦している。だから、真子が提案した勉強会は僕にとっても有難いものだった。

「なら、決まりね」

真子がそう言うと皆、頷いた。祐介が口を開く。

「勉強会するのは良いけど、どこでやるんだ?やっぱファミレスか?」

祐介がそう言うと楓が口を開く。

「やっぱり私は、真ちゃんと夏菜ちゃんのお家で勉強したいな〜 なんて」

「私も真ちゃんの家に最近行けてない気がするから真ちゃんの家がいいな〜」

真子までそんな事を言い出す。

「それだったら、俺ん家にも真子は最近来てないから俺ん家に来いよ…」ボソッ

「祐介何か言ったか?」

「いや、別に何でもない…」

僕の質問に祐介はそう答えるが、祐介の顔はまだ不満そうな顔をしていた。僕の家で勉強会をするのに何か問題があるのだろうか。

「私は別に私の家で勉強会するのは良いけど、真ちゃんはどう?」

「別にいいんじゃないか?」

祐介の不満そうな顔に違和感を覚えつつも、僕は夏菜の質問にそう答える。

「なら、勉強会の場所は真ちゃんと夏菜ちゃんの家で決定ね!!」

楓は皆で勉強会をするのが楽しみなのか、嬉しそうな顔で言う。勉強会の日時や場所が決まり、僕達は屋上を後にする。この日もクラスの皆で体育祭の練習をし、俊哉達に走る指導を受けてから家に帰った。家に帰ると、母さんが作ってくれた夕飯を食べて、風呂に入る。明日は僕の幼馴染達が久しぶりに家にやって来るので、僕は寝る前に部屋を掃除する。夏菜も自分の部屋を掃除しているようだ。自分の部屋の分の掃除が終わると僕は寝た。

 朝起きると、僕は自分の部屋を出て、既に起きていた母さんと夏菜と朝食をとる。父さんは休日出勤らしい。サラリーマンは大変だ。パジャマから部屋着に着替え、夏菜と一緒に幼馴染達が来るのをリビングで勉強しながら待っていると家のチャイムが鳴った。僕は玄関の扉を開けると、そこには、真子、純平、楓、祐介の4人がいた。4人一緒に来たらしい。4人共それなりの服装をしている。4人はお邪魔しますと言い、家に入る。母さんが幼馴染4人に話掛ける。

「あら、楓ちゃんに、祐介君に、真子ちゃんに、純平君、いらっしゃい! 楓ちゃんと真子ちゃんは可愛いくなったわね〜、祐介君と純平君もカッコよくなっちゃって〜」

と母さんが言う。僕達、幼馴染は家族同士も仲が良いのでお互いの両親とよく話す。幼馴染達は母さんに挨拶をすると、リビングに入る。僕達、幼馴染は遊ぶ時や勉強をする時は、今までお互いの家のリビングでやっていた為、今回も同じでリビングで6人仲良く勉強をするのだと思っていたのだが…

「ねぇ、今日は最初は同性同士、部屋に分かれて勉強しない?」

と楓が言ってきた。女性陣は楓の提案に頷く。女性同士、積もる話でもあるのだろうか。こうして、男性陣は僕の部屋へ、女性陣は夏菜の部屋へ行く事になった。僕の部屋には、祐介と純平がいる。何でわざわざ男女別れた部屋で男同士、同じ部屋で勉強をしなくてはならないのかと思っていると祐介が話掛けてきた。

「なぁ、2人は異性の幼馴染に恋をするってのはいけない事だと思うか?」

「いや、僕はそんな事は無いと思うけど」

「俺も、逆に幼馴染に恋するって素敵な事だと思うけどなー」

僕と純平がそうやって答えると、祐介は何か意を決したような顔をして話始める。

「いいか、真也、純平、今から話す事は誰にも話すなよ?この秘密は、今いる3人だけの秘密だからな?」

僕と純平は頷く。すると祐介も頷き、話始める。

「真也、純平、俺は今、真子に恋してる…」

「「え…」」

僕と純平は驚いていた。祐介が真子に恋をしているという事が、祐介の発言によって分かったからだ。僕が驚いていると、純平は僕よりも早くに冷静になっていき、純平も話始める。

「この際だから言っておくけど、祐介、真也、実はな、俺も夏菜に恋してるよ」

「まじかよ!?」

僕はまた、純平が我が妹の夏菜に恋をしているという事実に驚かされていた。祐介と純平はどんどん大人になっていき、僕だけ一人、取り残されてるという実感が湧き、寂しい気持ちになる。僕はその寂しい気持ちに浸っていると2人が僕に視線を向ける。

「真也はどうなの?浮いた話とか無いの?」

純平がそんな事を聞いてくる。はっきり言って僕は恋というのをした事が無い為、恋というのが何であるのかよくわからない。純平の質問に困っているのが僕の顔の表情でバレてしまったのだろうか、祐介がこんな事を聞いてきた。

「質問を変えるよ、真也、お前、幼馴染の楓と真子どっちが異性として好きなんだ?」

「…僕は‥」

祐介と純平は僕の次の言葉を真剣な表情をして聞いていた。

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