第7話

 僕は俊哉がさっき、言った言葉の意味がわからず、もう一度俊哉に聞き直す。

「俊哉…今、何て言ったんだ?」

「おう だから、真也お前が1500mリレーを俺の代わりに走れ!」

一応、体育祭は、一人2種目までなら出れる事にはなっている。楓でも良いのでは?とは思ったのだが楓は借物競争以外でも、玉入れに出ているため、1500mリレーには出れない。出れたとしても小3の時の過去があるため、誘っても断るだろう。

「ねぇ、一応聞いておくけど、野村君、和田君は足は速いの?」

山上さんが俊哉に問いかける。僕は足は速い方ではないと思う。それなのに、俊哉が僕を指名した理由は、それは僕が小学4年生の時に体育の授業で水泳の授業をやっていた。水泳の授業の時、クラスは2クラス合同でやる。その時に体育の先生が最後にクラス対抗で全員参加で水泳のリレーをやる事になった。僕は泳ぐのは苦手では無かったが、速いかと言われれば、速いとは言えなかったと思う。2クラス名前の順で競い合う事になり、僕の出席番号は1番最後であった。僕が競う相手は水泳はやっていなかったが、バレーをやっていた。僕も水泳はやっていなかったが卓球をやっていたので、頑張ればいけると思っていた。相手クラスとの差は僅かではあったが僕達のクラスが勝っていた。その状態で僕が泳ぐ番が来る。僕は一生懸命泳いだが、結果は差は僅かではあったが相手クラスの勝利となった。僕は悔しかった。当時同じクラスだった幼馴染の真子や、クラスメイトには気にしなくても良いと言われたのだが、僕のせいで負けてしまったという気持ちがあり、悔しかった。それから、水泳の授業は今までは何となくでやってきたのだが、試合があった日からは、真面目に集中して泳いだ。体育の授業以外でも、施設のプールに入り、泳ぎまくった。それから、もう一度クラス対抗の水泳のリレーをやらしてくれと体育の先生にお願いをして、もう一度クラス対抗リレーが行われた。順番は前回と同じ名前の順だ。状況は前回と同じで良い勝負をしている。僕の番が回ってくる。僕は必死に泳いだ。結果は断トツで僕達のクラスが勝った。前回の勝負から一週間までしか経っていないのだが、僕は一週間の間でここまで、成長した。クラスメイトや真子が僕をすごいと褒め称える。僕は短期集中型だった。そんな僕の過去を知っているから俊哉は僕を指名したんだと思う。

「山上さん、こいつはそんなに足は速い方じゃないと思う…だけど真也を山上さん達が走り方のコツとかを教えたりしてくれれば、大丈夫だと思う!!

真也は一生懸命に取り組んでくれると思うから大丈夫だ どうだ?皆、俺の代わりは真也でも良いか?」

と俊哉は言う。僕は最初は乗り気では無かったが、僕が小4の時の水泳の授業の過去を思い出し、やってみようと思う気になった。僕は俊哉に頷く。清水君や、後から入ってきた脇村さんや山田君も頷く。山上さんも頷いた。俊哉は言う。

「よっしゃ!!これで決まったな!!真也、色々大変だとは思うが頑張れよ!!」

「ああ、やるだけやってみるよ、山上さん、清水君、脇村さん、山田君、これからよろしく頼む」

4人は優しく、僕を迎えてくれた。それからチャイムが鳴り朝のSHRが始まる。そのまま授業を終えて、あっという間にお昼の時間となった。僕は弁当を持って屋上へと向かう。楓も購買でパンを買い、屋上へと向かう。僕は、真子、夏菜、祐介、純平に朝にあった出来事を話す。純平が口を開く。

「へー真也が1500mリレーね、てか真也、俺と同じ競技に出るんだな!!ま、真也なら何とかなると思うよ」

「私も、真ちゃんなら大丈夫だと思う 心配ないよ」

真子もそう言う。祐介と夏菜も同じ意見なのか、純平と真子が言う事に頷いている。

「そうか、わかったよ 皆ありがとう」

 僕は幼馴染4人に礼を言う。それから、昼休みは終わり、午後の授業も終えて、放課後のクラスの体育祭の練習が始まる。真子と祐介のクラスは今日は違う所で練習をすると昼休みに祐介が言っていた。今日は楓も参加するらしいが、正直なところ、借物競争と玉入れの練習は練習する必要があるのか?と思うのだが… 楓は最後の高校3年生は皆と一緒に何かをやりたかったらしく、青春したかったらしい。僕も今日から1500mリレーの練習が始まる。山上さんが話す。

「それじゃ、さっそく1500mリレーの練習を始めるよ まず和田君の実力を見せて貰って良いかな?」

僕はさっそく、300mを1人で走る事になった。僕はスタート地点に立ち、走って見せる。それを、山上さんと松葉杖を立てて体を支えている俊哉と清水君と脇村さんと山田君が見守る。僕は集中して300mを走り切った。昨日50mをひたすら走っていたので走る事に慣れてきたのか、中々良かったのではないだろうか。でも、俊哉が僕に向かって厳しい一言を言う。

「真也、走る練習しないとな、お前ちょっと遅いわ」

「え…」

良かったと思ってただけに俊哉に言われた言葉は僕の心を沈ませた。でも、その後に清水君達がフォローを入れてくれる。

「大丈夫、時間はまだまだあるから、これから頑張って練習をしよう!!」

「そうそう私達が教えれば良いだけの話よ」

「和田君、お腹空いたからラーメン食べに行かない?」

清水君と脇村さんが優しく僕に励ましの言葉をくれる。山田君の言ってることは、正直理解できなかったが、彼なりの励ましなのだろう。そう解釈しとく。そんなやり取りを見ていた山上さんが僕に言う。

「和田君の実力はわかったから、今よりももっと速く走って貰う為に私達が教えるしかないね」

山上さんはそう言うと、僕に走り方の基本を教えてくれた。俊哉や、清水君達も僕に、こう走ったら速くなる等の指導を受けた。こんな感じで5人の指導を受けていると外が暗くなり始めたので、僕達のクラスの体育祭の練習の2日目が終わった。

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