第5話

 僕と俊哉が体操服に着替えて学校のグラウンドに出ると声をかけられた。

「あれ?真也と俊哉じゃん どうしたの?今日はグラウンドで卓球するの?」

声の主は純平だった。隣には真子と夏菜もいた。周りにいた生徒達は真子と純平の姿を見つけると目がハートになる。

「いや、今日は部活休んでクラスの皆と体育祭の競技の練習をするんだ 純平も今日は部活休みなのか?」

純平は野球部に所属しているのでグラウンドで野球の練習をしていてもおかしくないはずなのだが、純平は今は野球のユニフォーム姿ではなく、制服姿だ。

「そうだよ、今日は部活は休みだから、これから真子ねぇと夏菜とそれから楓も誘ってカラオケに行こうと思ってたんだー 祐介は部活があるらしくて無理だった」

真子も今日は放課後の生徒会長の仕事はないらしい。

「そうなのか、でも楓は今日はバイトがあるらしいから無理だぞ?」

「あれま、それは残念、じゃあ今日は真子ねぇと夏菜と3人でカラオケに行くか〜 そうだ、真也と俊哉も来る?部活休むんだろ?」

「いや、だから僕達はクラスの皆と体育祭の練習をするんだって、誘ってもらって悪いけど今日は遠慮させてもらうよ」

「真也達のクラスは体育祭の練習をするなんて真面目なクラスだなー、でもそうか 来れないのか、残念だなー」

「しょうがないよ、純平 真ちゃんと俊哉君、体育祭の練習頑張ってね 私達のクラスも明日から昼休みに体育祭の練習始めるからね A組には負けないよ?」

真子が笑顔で言う。

「俺たちのクラスを舐めて貰っちゃ困るなー 真子ちゃんのクラスに、俺たちは勝つ!!」

そう言った俊哉の目は燃えている。そんな俊哉の姿を見て、夏菜は呟く。

「3年生は最後だから、他の学年と違って気合い入ってるんだね〜」

「1年の俺たちにはまだわからないなー」

と純平が言う。

「3年生になったら俺達の気持ちもわかるようになると思うぜ?まー、真也の場合は3年生になっても体育祭をめんどくさく思ってたみたいだけどな?」

と俊哉がイタズラな笑みを浮かべて僕の方を見る。

僕が返答に困っていると山上さんが僕達二人を大きな声で呼んできたので、3人と別れて山上さんとクラスメイトがいる位置まで駆けつける。この学校は無駄にでかいため、グラウンドが他の高校よりも10倍ほど大きい。野球とサッカー部が使ってもグラウンドの場が余ってしまうのだ。そのため、僕達が急にグラウンドを使う事になっても何ら問題ないのだ。グラウンドが無駄に広い理由は昔は内の高校はマンモス校と言われるくらい入学者が多かったのだが、少子化が進んだ影響か入学者が減って行き、今ではマンモス校と言われなくなるくらい人数が減った。人数が減った分、今の生徒は無駄に広い学校のグラウンドを使う事ができるのでそこに関しては徳だと思うのだが…

 山上さんは今日一緒に練習するクラスメイトが全員グラウンドに集まっている事を確認するとその場を仕切り始める。

「今日練習する人は、全員集まったね、今日は皆私が急に練習しよって誘ったのに皆集まってくれてありがとう!! さっそく練習を始めましょうか!!まー、企画した私が言うのも何だけど練習って言っても学年全体で踊るダンスの練習をしたり、走る事くらいしか練習することくらいしか無いんだけどね… とりあえず、リレーに参加する人はそっちの練習をしてもらって、借物競争とかに出る人は当日にならないとわからないから、学年で踊るダンスの練習をしてね」

山上さんが言い終わると、皆各自、自分の出る競技の練習を始める。僕も、50mリレーの練習を始める。リレーといっても4人などのチームで出るなどではなく、個人で自分を入れて4人で競い合い、50m走り切れば終わりなので、誰かにバトンを渡すというのもないので練習すると言えばただ、一人で50mを走るくらいしか練習方法がない。僕が一人で50mを走っていると、1500mリレーに出る俊哉が話掛けてきた。

「真也、練習してる所悪いんだけど、今から俺ら5人で1500m走り切るから、俺たちのタイムを測っててくれないか?」

俊哉が出る1500mリレーは、クラス対抗リレーでクラスから5人、代表として選ばれる。1500mリレーは、1500mを5人で走り切る。体育祭はクラスのポイント制で決まるので、ポイントが一番高かったクラスが優勝となる。1500mリレーで1位になったクラスは、ポイントが結構稼げるので、この競技で是非とも1位を狙いたい所だ。ちなみに内のクラスで1500mリレーに出る人は、俊哉、山上さん、清水君という男子、脇村さんという女子に、山田君という男子だ。清水君は体が小さいが運動神経がめちゃくちゃ良い。脇村さんはオカッパ頭でギャル風のメイクをしている。性格は顔に似合わずめちゃくちゃ優しい。山田君は、柔道部に所属しているのでガタイが良いが、走るのが得意だ。走る順番は、脇村さん→山田君→清水君→山上さん→俊哉だ。僕はタイムウォッチを片手に、5人の走る様子を眺める。脇村さんが華麗に300m走った後、山田君にバトンが渡される。山田君はガタイが良いが、そのガタイの良さからは想像できない程速く走る。次にバトンは清水君に渡される。清水君は軽やかに走り切る。次にバトンは山上さんに渡る。山上さんは運動神経が良く、かつ陸上部なので、他の3人より走り方が綺麗だ。次にバトンが渡されるのはラスト俊哉だ。俊哉は卓球部のくせに陸上部より足が速かったりする。俊哉も走り方が綺麗だ。俊哉が残りの300mを走り切ったと同時に、僕はタイムウォッチを止める。うむ、なかなか速かったのではないのだろうか 走り終わった5人も満足そうな顔だ。俊哉が話す。

「なかなか良かったんじゃないか?バトンの受け渡しも完璧だったし!!当日もこの順番で行こう 後は、ただ繰り返し練習をやっていくだけだな」

「そうだね!! 後は練習を繰り返しやって行けば、1位を狙えると思う!!折角だしリレーの練習はこれくらいにして学年で踊るダンスの練習も皆でしましょうか」

と山上さんが言う。僕達が頷くと、山上さんが皆を集めて、学年のダンスの練習をしようとクラスの皆に提案する。クラスの皆は山上さんの提案に乗り、ダンスの練習をする。わからない所があればお互いに教え合う。ダンスの練習をしている内に外も暗くなってきたので今日の体育祭の練習を終える。こうして、僕達の1日目のクラスでの体育祭の練習が終わる。

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