第四話:信じるか信じないかはあなた次第??
はい、我々の目的は決まりました!
目標は「ハークレスの大地」。そこに存在するビッグセブンの長門さんとの接触が第一!
出発は明日の朝!
「長門さんだと明日の朝でも平気でもうどっか行ってそう何でちょっと不安ですね……」
「あーそれあるかも〜。
やだなぁ……那珂ちゃん的には移動と探索とかいう体育会系な行動とるのさー……」
ちょっと広場を借りて、私たちのテントのチェック中の私と那珂さん。
今のところ、全員分ほつれやらパーツ不備は無し。
「あの風来坊な方にじっとしていろなんて無理ですって。
どうせ異世界のどこかの子供とか住人と仲良くなってますよ」
「分かるわー。ラムネ配ってるよ絶対」
次は移動指揮所用のパソコン、通信装置、何より発動機のチェックです。
通信装置の安定は、つまり現在位置の把握に重要です。
拠点を作る必要もあるので、電源は大事!
バッテリーも、液漏れやら寿命やらがないかこまめにチェック!!
なにせ、明石さん以下工作艦組が夜鍋してなんとか精製したバッテリー液は貴重ですし。
「じゃ、チェック終わって片付けたし、テントからしまっておくねー」
「はーい」
最後は……この手のひらに収まるサイズの四角い箱を用意して…………
ポ◯モンゲットだぜ!!という具合に投げると、例のアレこと何スターボールの如くフリートライザーに使われている技術で荷物を格納!!
じゃあ最後のバッテリー類をチェックして行きますかー……
「お前ら、魔法より便利なもん使ってるんだな」
「お、アンガスさん!!早かったんじゃないですか?」
「ああ、まぁ……まぁな……!」
と、登場するなり、なんだかちょっと不機嫌そうなアンガスさんと、後戦艦のパワーで牛6頭分ぐらいの干し肉を持って登場するマサチューさん。
「マサチューさん、なんかあったんですか?」
「うーん……マサチューも良くわかんない」
「ったくあの頭でっかちのハゲ司祭が!!!
何が『今日は蘇生の加護は終わった』だ!!!
よりにもよって俺みたいな年寄りを断るならまだしも……クッソー!!腹立ってきた!!!」
と、近くの石を蹴って海に華麗な放物線のシュートを決めるアンガスさん。
「蘇生の加護って?」
「アレかねぇ?「おお勇者よ しんでしまうとはなさけない」ってヤツ?」
「アイツらマサチューセッツを見るなり締切やがった!!
何が自愛の神の加護だハゲめぇ!!!
こんな……こんな娘っこに……!!」
あーあー、なるほど把握。
マサチューさんもようやくと言った感じの顔。
「やっぱり、避けられてる種族と人と避けない種族と人といますよね私達」
「……何??」
「原因は……私は思い当たるんですけど」
「血の色か?」
「あら見たんですか?」
「神話の化け物で黒いのも見たんだぞ?
その程度で俺は驚かんし、何よりあの時は……俺を」
「大した傷じゃないからマサチュー気にしない」
「もしかして奴ら、傷口に滲んでたのを見て……!?」
「違うと思う。
あ、見る?」
「「はしたないことしないのー」」
ぐいーと、申し訳程度の上着を脱ごうとしたので辞めなさいと下げる私達。
アンガスさん、目を逸らしてもチラチラ見てるのわかってますよ?エロオヤジめー、このこの
「うーんでも多分…………やっぱり私達、『つかれてる』からじゃ?」
「つかれてる?どういう事かね夕立隊員?」
「…………もしや?」
ふと、アンガスさんは工具でも入れてそうなベルトの様に身体で巻かれたケースの中から、何やら紫の水晶の……ペンダント??を取り出します。
「おじさん、そのなんか魔法のアイテムっぽいのは!?」
「『幽鬼の知らせ』だ。ゴーストか何かに
普通は白だ!!紫は取り憑かれた人間に当てた時だけの色のはずだぞ!?」
「……なんかそんな感じしましたよ」
予感はあったんで私が近づいたら、あらまぁまるで黒曜石みたいな色に。
「げぇ!?!
これじゃあ、教会のハゲもサジを投げるぞ……!!」
「でしょうねぇ」
「ちょっと待ってよぉ夕立ちゃぁん!?!
なんでそんな平然としてるのぉ!?!
心当たりでもあるの……って私が近づいても黒くなってるぅ!??」
「…………ま、マサチューは……黒くなってる……!!」
二人とも、結構ビビって震えてますけどそういうの苦手?
「なぁ……ユウダチだったな?何を知っているか話してもらえるか??」
「と言っても……信じる信じないはあなた次第ってヤツなんですよ」
「信じるしかないじゃん!!ファンタジーの住人の言葉だよ!?何さ!!何私らに取り憑いてんの!?!」
「祟り神」
ブホォ!!
那珂さん汚いですよー。
「た、たた……!!」
「「……タタリガミ?」」
あ、英語圏と英語っぽい異世界語の人には馴染みのない言葉でしたか。
「大日皇国では、取り憑かれて害が及ぶ事を『祟られる』って言っているんですけど、我々の国の神様って、全員が全員「人のために慈悲をー」っていう神じゃないんですよ。
今は学問の神やってる方は、大昔は数々の災いを引き起こした怨みの塊みたいな物でしたし」
「なんでそんなもの信じてるんだ……」
「そんなものしか近くにいないんですよ」
この時、マサチューセッツ氏は無表情だけど涙目でガタガタ震えてました。
「洒落怖の導入じゃん!!絶対怖いヤツじゃん!!
で何さ!?私たち、友人のBに取り憑いてたヤツみたいなの憑いてるの!??」
「……いやぁ、でも憑いていて当然なものですよ?」
「何さそれ!?!」
「名前の元ネタさんですよ」
へ、と言う後ろ二人に対して、那珂さんはハッとなった顔です。
「…………ま、マジかぁ〜…………!!」
「那珂、どういうこと?マサチュー分かんない」
「…………、
あのね、私達大日皇国って、祟り神以外にも数えるの面倒くさいからとりあえず「|八百万《ヤオヨロズ》」、まぁ800万ぐらいは最低いるでしょって言葉が生まれる程度に神様だらけなんだよね」
「ほぉ〜……そう聞くとエルフたちと同じだな。そういえば彼らにも怖い神の話はあった気もするぞ」
「で、この話に関係あるの?」
「ありまくりっすよ〜そりゃ〜ねぇ?
船の神様いるんだから。神社付きで」
ちょっと驚いた顔されてますね二人とも。
「
女性の神様でさ……ちゃんと祀ってれば船出に良い天気にしてくれるし、船旅から帰してくれるって。
でも一度機嫌を損ねたら、海は荒れるし船出からは帰してくれない。
……この神様もね、元は海を沈めるために船首に括り付けられた生贄の女達が元の、立派な祟り神様なんだよねぇ〜」
那珂さん、語り方が怖い!
伝統的な大日皇国系の黒髪美人顔だから、余計に怖いですって!!
「……当然、科学が進んだ時代の私たちもね、今でも慣例的には船霊なり別の神様のお力を分けてもらう形で、船内に神社……まぁ神殿って言った方が分かるかな?を分けて立てたりしてたのもあったし、神棚……ちっこい家様の祭壇っていう感じ?の物はあったんだ」
「そういや、たまにこの近くで大きな船を作った時は、俺たちの神様の加護を貰うための儀式やってるな!
お前達も?」
「それが私達一回もお祓いやってないんだけど、」
「でも私達の元の名前の艦はやっている」
そう……
「私達の名前。
私達の世界のかつての世界大戦で雄々しく戦って、
それでも沈んだり沈めたりを繰り返した海の戦場を駆け抜けた『軍艦』の名前。
そんな艦ならば、艦の魂が、乗っていた英霊が『大人しい』訳がないよねぇ……って。
当然死んだ後は別の神社で英霊扱いで祀られて、その力が死後ももし残っているなら……
そんで、同じ名前のフリートレスに全員取り憑いてるもんなら……」
「こうもなるってか……?」
『幽鬼の知らせ』というマジックなアイテムは、相変わらずドス黒かったです。
「でもやっぱり良く分からない。
マサチューにマサチューセッツの霊が取り憑いてる?
でもまだマサチューセッツは……」
「生きてるって言いたいんですか?」
「……沈む前にも、バトルシップ・コーヴに行った。
まだマサチューセッツは……綺麗に残っている」
「残っていても、もう海に出る事はないじゃないですか。
戦艦の時代は、我々の世界じゃとっくに終わってますし、
私なんて今も、ソロモンは
「…………ぅん……」
「なぁ、ソロモンって地名か?「鉄底海峡」なんざ随分物騒なあだ名だな」
「ドンパチのしすぎで海の底が鉄クズだらけになっちゃった場所なんすよ……で夕立ちゃんの元ネタの夕立は派手にそこでドンパチして派手に沈んだんですよねぇ〜……」
「物騒だな……海のことは専門外だが」
「ただ……なら、なんでまだ船の魂は英霊とともに、地獄なり天国なりに船出に行かないのか……私自身結構疑問ではありますけど……」
「そーだそーだ!那珂ちゃんみたいな地味で取り柄もない艦が魂ごとなんで今も働いてるのぉー!?
引き篭もりたい!!永遠にゴロゴロしてたい!!」
「…………マサチュー、それだけは理由は分かるかも」
あら?
「全部信じた訳じゃないけど……もし本物のマサチューセッツならきっと、」
と、言いかけた間にザッザッザッ、とかガシャガシャ聞こえる音が。
「全隊、止まれ!!」
気がつけば、なんと古めかしいフルプレートアーマーを纏ってハルバードやら剣やら持った騎士団らしき方々が周りを囲んでます。
「うわぁ、ここ時代的に近世に近いのに!」
「お前らは聖騎士団!!
なんだ、教会の寄付が足りねぇと取り立てに来やがったかぁ!?」
「───相変わらず下賤な考えだなアンガス」
コツコツ、と歩いてやってくるおじさんが一人。
なんか……聖職者というかアレですよ、修道士とかそんな類の、地味な黒い教会系な宗教の格好におかっぱ頭とめっちゃ昔の目の間に稼働する部分あるタイプのメガネかけた人です。
「お前かピート!!
それ以外で何しに来たんだ?」
「誰さん?」
「ピエトロっていうこの街の司祭様だよ!!
こんなのでも腐れ縁でな」
「お互いに嫌っていてくれて嬉しいよ。初めて意見が合ったな。
よしみで言ってやるが下がっていろ。
直々に我らがこちらの『悪魔』どもを誅滅する
「命だとぉ?フン!!
お前みたいながめつい男とそのど田舎騎士団どもに、法王か枢機卿がかぁ!?」
「違う。
『
瞬間、
なんと言えば良いんでしょうか、
辺りが、夜とは別の暗さになって、
頭上に、光で描かれた魔法陣……的な奴が……!?
「何これ!?D.E.E.P.!?!」
「なんか……違う??」
魔法陣から、出てきたのは、
まぁ私ほどじゃあないですけどスタイルのいい格好を、奇妙な素材のピッチリでファンタジックな格好の女性……というか、
金色で異様なほど長っっっっっがい髪の上、なんか光の輪っか?魔法陣?
というか……翼が6枚????
「「「天使じゃん……!!!」」」
私達フリートレスも驚愕の、
ああ『御使』ってそういう……な本物の!!
「まさか……!!」
「まさかだよ。
それも、断罪を司りし者『アズィールエル』、その方だ」
「絶対強いじゃん……」
那珂さんの言う通り。
ふと、ずっと目を瞑ってたその……アズィールエルさんでしたっけ?
こっち……見てきて……あ、目が開───────
………………………………
「ちょっと夕立ちゃんしっかりして!?!」
「のわー!?!
え、アレ……寝てました?」
「寝てたぐらいならこんなに騒がないでしょぉーっ!?!
目を開けたまま固まってたんだよぉぉぉぉ!!」
「マジですか!?!」
「マジ。怖かった……」
マサチューセッツさんに那珂さんが大きく揺さぶってくれたので戻ってきたみたいです私……
「しまった!!
あいつらの聖書の4冊目辺りに、確かあの御使様は『罪を図るために目を合わせた相手の心を読む』って書いてあったぞ確か!!」
「「「なんだってそれは本当かい!?!」」」
「本当だとも。
良く覚えていたな、聖書の内容なんぞ覚えているほど信心深くは無いというのに」
「冒険者はな、学がなきゃダンジョンひとつ生きて帰れねぇのさ!!」
たんか切ってますけど……冷や汗混じりじゃ無いですかアンガスさん……!!
私だって、なんか……相手からまずい感じが……!!
《そう思うならば、この世界より去れ》
……はい?
「今誰しゃべったの!?」
「マサチュー違う……というより、誰もしゃべってない……!!」
そう、喋ったんじゃない……!!
《我らの言葉はお前達には届かない。
故に、こうやって魂に直接語りかけている》
「……おぉ……!!」
例のピエトロ司祭さんは感極まってそんな声を出してます。
いやいや出しますよ誰だって
ここまでダイレクトに脳内に直接話しかけるだなんて、誰だって驚くに決まってます……!!
フワ司令官の念話と全然違いますもん……!!
《そんな事はどうでもいい。
選びなさい。
この世界を去るか、》
「私の頭を覗いたのなら、なんで帰れない事をりかいできないんですか!?!」
《覗いたのは魂だ。
当然、お前達悪魔と繋がっている背後の、暗い存在を見た》
「つまりこっちの正体は知っても事情は知ら無いって事じゃないですか!!!
そんなのありですか!?要求するなら、正当な理由を述べる、っていうのは私たちだけの常識ですか!?」
《語る時間は無い》
へ!?
後ろ……!?
《去らぬなら、沈め》
振り返った私の目の前、
なんだか光で出来た刃が目の前に迫って───
ガキィン!!
《WEIGH ANCHOR.》
「させない!」
瞬間、艤装装着するも展開していない状態、具体的に言えば頭の辺りで艤装が塊のままのマサチューセッツさんがそれで光の剣のようなものを防御。
展開が始まった瞬間に、背中から生えるステイツ国旗とステイツ海軍旗をつかんで、
「ヤァ────────ッ!!!!」
縁を描くように振るって、発生した『重力場』であの御使さんを吹き飛ばします
「くぅ……!!」
「大丈夫、夕立!?」
「私よりアンガスさん!」
「ぬわぁぁ!?!」
余波で、あの司祭さんも甲冑の騎士団さん達もまとめて吹き飛び、レンガの壁やら海へ突き刺さったりドボンしたり。アンガスさんはマサチューセッツさんが左手でキャッチ。
戦艦のパワーにダコタ級フリートレス特有の力『重力制御』……たしか、マサチューセッツさんはパワーなら『2番目』って情報ですけどこれほどだなんて……!!
「まだ!!
こんなのダメージ、ない!!」
言う通り……!!
相手は吹き飛んだだけで、例の御使は健在!!
ダメージ……え、かすり傷とはいえ……治ってる……今目の前で!?
《……まぁ、戦う道しかないか。
人を巻き込むつもりはなかったが……》
雄大に翼を広げて、なんだか周りの光量が上がっていくような光景を見せつけます。
しゅ、とあの光の剣を何もない場所から取り出し、円を描くよう動かした残像が新しい光の剣になって現れます。
太陽の絵の放射状に広がった部分のように、花の花弁のように無数の剣が開いて────!!
《加減をする相手ではない。
全力で戦おう》
やっぱりと言うか、その初速はレールガン。
見た瞬間、飛んできた剣を『回避無理』、と理解できましたし、あこれマサチューセッツさんでも貫くんじゃ……!!!
降り注ぐ、爆撃のような攻撃。
フリートライズするよりも早く、
「いやー、こっちも穏便に済ませたかったんだけどねぇ?」
《CUT IN》
爆撃の前に舞い降りる、竜。
いや、あの青白い炎を纏った技って……!!
《那珂
ラ
イ
ト
ク
ル
l
ザ
l
ミ リ オ ン ヒ ッ ト 》
一瞬、どっかのドラゴンネームな空母が「それ私らの専売特許!!」と叫びそうな、青い炎の昇竜が、
いや、そんな風に見える斬撃が、光の剣を吹き飛ばす。
《────!?》
「オラァ──────ッ!!!」
爆煙を吹き飛ばし跳躍したのは、軍艦色の装甲に、青にオレンジの縁取りの炎マーク、
そして、『川内型』に搭載された、装甲の強度を変えずに軽量化を目指したとされる半透明の特殊装甲の綺麗なブルー。
艦装した那珂さんが、相手の御使の顔へ拳を叩き込む。
瞬間、拳を通してゲル化したフリートブルーが、さらに拳表面の触媒に反応。爆発。
粘土の高さで密着した状態の拳表面の爆発は、凄まじい威力を生むんです!!
「─────raaaaaaaaa!?!?!」
初めて開いた口から、なんとなく聞いたことがあるような、でも聴き慣れない甲高い声が響き、ドップラー効果を伴って海へと叩きつけられる
「────ウチの夕立ちゃんの分はこんなもんじゃないぞ!!!」
普段の、やる気も覇気も無い声と打って変わったドスの効いた声。
「頭に来てる今の私は!!!
負ける気が、しない!!!!!」
メガネを……伊達メガネ外して投げて、
全力で怒りのまま那珂さんが叫ぶ!!!
***
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