第三章:ついに揃った!?!異世界着任艦隊です!!

プロローグはベルファストさんお願いします









「そう言われるとなると、やらざるを得ないだろう!





 では、不詳この軽巡洋艦装少女ライトクルーズフリートレスベルファストが、これまでのあらすじを語らせていただこう!」









 頭上のスポットライト

 照らされた司書のような格好とメガネの美人が、手元のタブレット端末を開く。




「かつて、我々の世界の海を制覇した艦船の力を持つ艦装少女フリートレス


 我々は運命の悪戯いたずらか、研究施設でもある潜水艦『ビフレスト』共々、謎のファンタジー世界に転移してしまう」



 タブレットに次々と今までの記録映像を断片的に移しながら、妙に格好をつけたポーズで見せるベルファスト



「最初に建造された駆逐艦装少女デストロイフリートレス、白露型4番艦の夕立は」


「ういういー」


「この世界の少女にしていわゆる魔法使いの少女『エルウィナ・フワ』氏を司令官として、この奇妙な世界に散らばった他のフリートレスを探すべくこの冒険者の街へ来た。


 さて、ここから先は、全く未知の領域。


 我が読者たちも心して、続きを見てくれたまえ」





 そうしてタブレット端末の再生アプリを一度消し、記録するためのアプリへと替え、仰々しく一例して暗転……





















「ところでこのくだり必要です??」





 場所は、この異世界の大陸の冒険者の街ギルドアの冒険者ギルドの一角へ戻ります。


 ってこの言い方脇で一礼ポーズのままのベルファストさんみたーい!



 はい、どうも夕立です

 なんでか知りませんが今までのことを突然説明するベルファストさんでした。



「おや、こういうのは嫌いかい?

 いくら歴史はありのまま伝えるべきと言えど、どうせ後世じゃ創作の種。

 ちょっとぐらいふざけても良いじゃないか夕立くん?」


「ベルファストー、バッチリ取れてたからカメラ返すぜー!」


 なんと撮影者はウォースパイトさん。

 そんなものあったのかと驚いている間にイェーイとハイタッチ。仲良しですか?仲良しですか……


「おいちょっと待て!?コレまさか、映画とか撮る奴か!?!」


「えぇ!?!辺な箱と思ってたけど!?!」


「フィルム!?!フィルムどこだ!?!」


「あー!?!やめたまえ!!やめたまえ異世界の方々!!!

 落としたら壊れる!!せめて、SDだけでも抜かせてくれたまえ!!」


「えすでぃー?」


 一応、冒険者ギルドの長らしい、見た目の若さと実年齢が違うイケメンさんのブラックさんが見た目通りの若者のはしゃぎ方を辞めてこっちを見ます。


「フィルム部分のことですよ」


「あそっか……アレは確か結構破れやすいんだよな。

 こんな小さけりゃ余計にか……」


 なんていうブラック氏からハンディカメラを取り出して、SDカードを抜きます。


 そう、このちっちゃくて米粒とまではいきませんが、ちっちゃいみたいなサイズの SDを。


「!?!?!?!」


 恐らく、理解はできたんでしょうけどあまりの事に言葉を失っているブラックさんを尻目に、マイクロSDを私のフリートライザーにセット。


「OKタイコンデロガ」


『それは別の会社の呼び方』


 今上空にいるであろう、優秀な軍用衛星のAIらしいタイコンデロガに呼びかけてみました。

 良い返し方ですね?


「でもそれより優秀でしょ?

 データをビフレストの本体コンピュータのファイルにアップデートして保存してくれるんでしょう?」


『動画撮り過ぎ。2GBギガバイト

 電波状況にのよるけれど5分かかるから待って』


「良い子良い子」


『ちょっと待ちなさいよ。

 今ビフレストのメインコンピュータは私なんですけどぉ??』


「あ、えっと……アリーさん?」


『アーレイ!!A、-、R、A、Y、でアーレイ!!』


 えっと……こちら今は本拠地のビフレスト艦内にいる元人類滅亡系AIのアーレイさん。あの明石が拾って直した奴です、お怒りです。


『くだらないファイルを送ってくるな!!

 電源が復旧したおかげでビフレストのデータと機密区画の物理的な方もサルベージ作業が多いのよ!?』


『記録映像の保存ぐらいやれるリソースはあるはず。

 仕事を選り好みしない方がいい』


『煩いわよ良い子ちゃんAIが!!

 ったく、元の世界に帰りたいわ…………出来れば人類が滅ぶ前に』




「……もしかしてその小さい箱で遠くと喋ってんのか?

 オイ…………魔法より便利なもん使いやがって」


「コレが案外復旧までに時間がかかったり苦労もあるんですよ」


 そうか、この世界の伝令技術はそこまでではないのですか。


 まぁ、このギルド施設の掲示板が、紙と手書きの絵が多いからそんな気はしましたけど……いや手書きの絵動いてるし……ファンタジー……!!











「そこまでぇ!!!!



 いつまで遊んでいるつもりですか!?!?!



 緊急事態なんですよ!!!!!」








 おぉぉっと……

 我らがリーダー、ステイツ正規空母のエンタープライズさんが怒ってる……



「…………おっかねぇ」


「ジジイも年考えるよな?」


 熟練冒険者のおじさまことアンガスさんがブラックさんの肩に手を置いてそう答えます。


「クソガキ。お前、学も教養もねぇなら好奇心も無くしたのかよ?」


「興味がないわけじゃないが、そんなこと言ってられん。

 とにかく、デカイ化け物が、ハイエルフの国に出たんだよ」


 何、と突然立ち上がるほど驚くブラックさん。


「お前!!


 『魔霧まきりの森』をどう抜けたんだ!?!」


「そこのマサチューのおかげさ」


「うーん……多分??」


 ステイツ戦艦、褐色長身銀髪なマサチューセッツさんがちょっと首を捻りながら答えます。

 ……いや、なんですその反応??


「だがビビったよ。久々にちびった。

 ありゃ……山が動くようなもんだったぞ、確か……」


「分類識別コード:ネフィリム。


 別名アウトオブカテゴリー

 680フィート級」


「200mって言いましょうよ」


「何にせよまずい相手だ……」


「大きさだけでまずいって分かるな……


 確認しておくけど、お前らの世界の1mも……コレぐらいだよな?」


「ええ残念ながら」


 ブラックさんが手を使って示した大きさの通りです。




 200m



 言うだけなら簡単ですが、某怪獣王もそんなサイズで描かれるのは稀な大きさです……!!




「マサチュー、みんなと一緒に冒険してた。


 アンガスさん達の目的は、マサチュー偶然遭遇したモンスター達の異常行動の調査。


 マサチュー、目覚めたときやっぱり襲われて全滅させた。

 それも関係あるみたい」


「というと?」


「原因は簡単だったよ。


 奴らモンスターは生息地を追われたってだけさ」


 ふと、アンガスは背後の獣人少女のメルさんに地図を出させてテーブルに広げます。


「……川の上流の一つに、『魔霧の森』っていう年がら年中霧に覆われた場所があってな」


「霧っていう言葉で済むもんかよ」


 と、説明の横で忌々しそうに吐き捨てるブラックさん。

 心なしかこの冒険者さん達全員苦々しい顔です。


「まぁ、ここは普通通ったりはしない場所だからな。

 大抵は迂回路を取るが、俺たちは偶然ここを通ってしまって、偶然無事に通過できる方法を使えたんだ。


 これは良いが、問題はこの先さ。


 この先は、現地では『ハークレスの治める大地』という場所でな?

 未だに森を離れないハイエルフっていう種族や、妖精が魔獣の群れやとにかく大量のモンスターと過ごす場所がある」


「待って、なんですかこのハークレスの大地とかいう場所のマーク?」


 ふと、妙な印というか……

 私の世界の昔の地図は、海の一部にシーサーペントっていう怪物の挿絵があるものがあるんですが、


 そこにもなんというか…………虫?カブトムシですかね……そんな感じの絵が一個。



「ハークレスだ。

 この大地の守り神。こいつもデカかった……」


「うん。かなり大きなカブトムシ」


「見たんですか?」


「マサチュー達、逃げられた理由はこの守り神様のおかげ。

 怪獣映画みたいだったけど……」


「だとしても勝てなかったんじゃ無いですか?ネフィリムじゃあ……いやD.E.E.P.である限りは」


 コクコクとうなずくマサチューさんに、暗い顔の冒険者の皆さん。


「……そんなにやばい相手か?」


「……俺は見た。奴らの破片が変じた怪物を」


 アンガスさんは冷や汗混じりにそう……震えた声で呟きます。

 ……ああ、見ちゃったか……




「あれは……一見女神みたいだった…………

 だが……周りの……生き物を…………


「取り込んだ……?」


「D.E.E.P.は周辺の生物と融合して、異常な生体ボディーを作り上げるんですよ。

 まぁ無機物も使いますけど」


「竜やら馬やら……たまたま一緒に来た奴らまで…………ウッ!」


 口を抑えるアンガスさん。駆け寄ったマサチューさんが背中をさすります。


「おいおい、大丈夫か!?」


「ダメだ……!あの『人面』が頭から離れない……!」


 !?



「ジンメン……マサチューセッツ、まさか!?」


「……うん」


 エンタープライズさんの言葉に、俯いて短く答えるマサチューセッツさん。


「どういうことだよ!?」


「取り込んだ人質の顔と意識をそのままにしていたんでしょう…………忌々しい奴らだ……!!」




「奴らの要求は、アー、しか喋らないがすぐ分かったよ」


 ふと、まだ震えてそう言うアンガスの言葉に俯くマサチューセッツさん。


「皆まで言わなくても態度で分かるぜソレ?」


 ラフィーリーダーの言葉通り、何をして欲しかったかは分かりました。


「…………マサチュー、それで、」


「俺が撃たせたんだ」


「!?違、」


「違うもんか!!

 …………見れば分かったさ……助ける気も助かる可能性もない。何年冒険者をしていると思う?決断は冒険者の仕事の八割だ。

 だから……俺が剣を突き立て、マサチューセッツに助けるという名目で撃たせたんだ。


 俺が……俺が殺した、殺させたんだ……!!」



 ぎゅ、と拳を握るアンガスさん。


 ……二つ分かります、彼はそういう選択を何度かした人間ということ、そしてそれを恥じる心を持てる『良い人』ということ。


 …………ちょっと心がざわつきますね。

 私、次にD.E.E.P.に会ったらどんな殺し方するか分かった物じゃない……!!!



「……話を続けよう」


 見た目の年齢通りの肝が座っている声で、アンガスさんはそう言葉をつなぎます。



「ジジイ、お前さんには当面この方面へ向かう人間を止めてもらいたい」


「そういうと思って数分前から内陸各支部に電話してるが、焼け石に水だぞ。

 聞いたのに行くバカも多い」


「しょうがねぇな……

 でだ、アンタらには俺たちの案内で、すぐにでもこの大地に立ってもらいたい」


「当然そのつもりですが、ルートまでの日にちは?」


「死に物狂いで、2日だな……」


「…………ん?いや待ってください」


 私、地図を見てちょっと思うことが。

 というわけでパシャリと一枚。

 そして呼びだすは、


「ヘイ、タイコンデロガ!」


『Siriでは無いけど、情報から把握。

 私の処理だけじゃ足りない……アーレイ』


『アンタと並列処理?冗談じゃ無いけど……まぁ私も気になっていたから』



 よっし、じゃあ後は待つだけ。


「なんだよ、急に?」


「いま、空の上にいる優秀な計算機くんちゃん達が、

 この地図と空の上から見た実際のマップと照らし合わせてます……

 知りたいのはここ、水路です」


 水路、と言われて合点が行く顔になるアンガスさん。


「そうか、水路か!!」


「デカい船は無いし、用意できる船で行くと馬より遅いぞ?」


「おいジジイ、そんなのは過去の話、


 ここにいるマサチューがいない場合だ!」



 えっへんとマサチューセッツさんが胸を張る。

 横のアンガスさんの部下の若い冒険者のベレル氏が揺れるバルバスバウ二つを凝視してメルさんに引っ掻かれたのはまぁ置いておいて、


「我々は陸路より水路の方が速いですよ」


「艦装少女、フリートレスの名は伊達じゃ無いんだぜ!」


「…………でもここ……」


 ふと、さっき話題に上がった魔霧の森の辺りを指差すは、私と同郷の駆逐艦の綾波さん。


「どうしました?」


「水路……途切れてるっぽいから……ほら森のところで……行けるのかなって」


「繋がってる。間違いない」


 ふとマサチューセッツさんが綾波さんの言葉に反論します。


「ああ。なんせ帰りはつっきてきたからな!

 そこでバテたマサチューが重かったけど、」


「余計なお世話」


「良いだろう?俺は、そんぐらいしっかりした身体の方が好みだしな!」


「セクハラ、マサチュー割と許さない」


 ちなみに後ろでうんうんうなづいてたベレルさん、メル氏に殴られてましたがまぁ置いておいて、


「何にせよ、ここを通るなら1日は短縮できる。

 それに、多分お前らなら通れる」


「……オイ、それはマジなのか?」


「ああ……言って聞かせたいが、俺もあんなの初めて見た。

 ジイさんの心配する理由も見りゃすぐに杞憂に終わるさ」


 そんなもんかよ、となんか納得していない顔のブラック氏。




「……ねぇ、あの反応って」


「アナコンダかな?アリゲーターかな?」


 綾波さんもラフィーリーダーも勘付きますね……




「用意に今から半日かかるとして、ずっと短く行けるか……決まりだな」


 よし、と立ち上がるアンガスさん。


「すまんが用意を頼む。お前らが鍵なんだ」


「待てよ」


「なんだジジイ?」


「俺じゃない、こいつらの顔を見ろ」


 はい、我々は結構難しい顔です。



「ネフィリムは、我々の装備で倒すのは難しい」


「何!?」


「単純な質量の問題です。

 大きすぎる。大きすぎるということはつまり、使う弾薬の量も当然多い」


「じゃあ……」


「いえ、行かないとは言っていませんよアンガスさん。


 ただ……倒し切れない場合もある。

 あなた方は確実に逃しますが、最悪は覚悟していただきたい」


 エンタープライズさんの言う通り、まずそれが第一の問題です。



「エル型も、いるんですね?マサチューセッツ」


「いた。喋った。2体

 しかも、片方は見たことあるやつ」



 ……え?



「それまさか、



 冗談ですよね?

 だってアイツは……!!



「ジブ……?」


「エル型D.E.E.P.第一号。

 コードネーム:ジブリール


 2161年、そこの夕立が倒した、」


「殺したはずなんですけどね。

 命まで失って殺した相手のはずが、殺し切れてなかったみたいで」


 2161年。あの日のことは覚えている。



 なにせここで建造する前の、最後の記憶。








 ────あの時、


 私は使える武器だけじゃない、


 千切れた足の折れた骨まで使って奴を殺したはず


 そして…………





「…………」


 つい、バキリと力が入った拍子にテーブルの端を指で引きちぎるように割ってしまいます。


「夕立ちゃん、顔怖いよ!!

 周りビビってる!!というかボクが一番怖いんだけど!!」


 おっと……涙目の綾波さんの言う通り。


「……すみませんね。建造される前最後の記憶の因縁なんで」


「何があったかしらねぇけどお前…………

 憎しみっつーか、お前の顔の怒り、

 それ尋常じゃねぇな」


「ブラックさんの言う通り。尋常じゃない相手だった物で……すみませんね」


 このままだと、私が勝手に出撃しそうなので、それとなくエンタープライズさんに話を続けさせます。


「…………ともかく、ちょっと戦力が足りないんです」


「とはいうものの、あんなのどうすりゃ良いんだ?

 知り合いに勇者でもいりゃ良かったが」


「必要なのは軍が4師団分ですね」


「生憎この世界の国々は、軍が他国にしか使わないんだよ。

 害獣駆除は俺たちみたいな下請けさ。けったくそ悪い」


「その下請けの元締めがよく言うぜ。

 で、どうする?」






『希望ならあるかも』




 ふと、フリートライザーから声が。


 これはタイコンデロガじゃなくって……



「アレイちゃん?」


『アーレイよ、夕立。


 なんで『ビッグ7』の話をしないの?』


 それは……!!



「ビッグ7?」


「アーレイ、現実的に考えなさい。


 異世界に、コロラドもメリーランドもいない」


「おい、なんだよ、ビッグ7って?

 デカい7?」


「あるいは、『偉大なる7人』とかそう言う意味か?」


「どっちも違います!


 Buster

 Intercept

 Gigantic-robot

 type:7


 超ド級迎撃用決戦人型機動艤装、略称『B.I.G.7ビッグセブン


 それを与えられた7隻のフリートレスの事です」




 ビッグ7


 かつて、海軍軍縮条約の名の下において、41センチ砲、16インチ砲を搭載することの出来た7隻の戦艦


 それと同じ名を持った、巨大な敵を倒す為の巨大な艤装を持った人類の希望



 私が沈んだ、あの年、


 その内の3隻が、沈没した…………






「言葉だけで強いって思ったのこれが初めてだな……!」


「ですが、まず建造はできません。

 材料を我々は持っていない」



『それがね…………タイコンデロガ、言ってあげて』


『…………いる』



 へ?



『目的地の地図上に、ビッグセブン『長門ながと』のフリートライザーの反応がある』



 タイコンデロガの言葉に、フリートレス全員が驚いた顔を見せる。



 ビッグセブン、長門


 ビッグセブンのロールアウトが最も速かった第一号にして、


 恐らく、ビッグ7の中でも最強の……!









「……さて、状況は随分面白くなって参りました。


 果たして、この物語は、この後どう転ぶのか?


 それは、誰にも分からない」




 ベルファストさんの言葉通り、



 ちょっと状況が読めなくなって来ましたね……ええ!




          ***

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る