第三話:そんな訳で艦隊は別れて行動開始です!
食器を片付け、洗いを手伝い、15分で食堂は会議室へと移行します。
「それでは早速ですが艦隊を分けます。
まず最初に申し訳ありませんが、瑞鶴、神通、フッドは、装備改修ならびに船体の損傷を治すため、工作艦3隻及びエルドリッジと共にビフレストに残って貰います。
異論はありますか?」
「ええ、従いましょう」
「異論なし!!!
正直今もあばらとかめっちゃ痛いしー、おやすみは賛成でーす」
「元気に走り回ってたくせに」
「そりゃ……運動しなかったら太るじゃないっすか金剛さん……」
「それより、ウチはもう大丈夫です!!
エンタープライズはん、ウチだって出撃は可能なのになんで!?」
「今回、言い出しっぺの法則もあり、私ことエンタープライズが遠征組、つまり冒険者稼業艦隊の旗艦を務めます。
ビフレスト防衛の観点からも、空母が一隻残らなければ不安です」
「う…………」
「それに、戦艦やそれに準ずる規模を動かしすぎるのも資源獲得とのバランスが崩れます。
金剛、ミズーリ、プリンス・オブ・ウェールズ、あなた方も残ってもらいます。
分かりましたか?」
「まぁ、異論はありませんわ」
「まぁこっちも。ちょっと暇だけどね」
「ふむ……エンタープライズの言う事だ、従おう。
ただピンチなったらいつでも呼んでくれ!!
ステイツのヒーロー、マイティ・モーがいつでみ駆け付けよう!」
「ふむ……
では、遠征組を発表します。
駆逐艦、ラフィー、夕立、綾波の『ソロモン組』、」
わお、私もですか!
「ヴァー!?!ボクぅ!?!めっちゃ大変じゃんかよぉ!?」
「まぁ、私も鼠輸送経験者ですしね。
頑張りましょう綾波さん!」
「まぁつまりは、駆逐隊のリーダーは私ことラフィーだね!
まぁ二人とも、ステイツの有能駆逐艦の私の下で、存分に働きたまえ〜!」
「「よしリーダー、前衛は頼んだ!!」」
「ギャー!?やっぱ今のなし!!」
「騒がない!
つぎに、軽巡洋艦那珂」
「ふぇぇぇ!?!
来たばっかなのに私ぃ!?!」
「貴女は武装が完全な状態だった為、改装もすぐ終わるそうです。
すみませんが、宜しくお願いします」
「うぅ……神通姉は怪我してるし……
引きこもりたかったなぁ……よろしくね、駆逐艦のみんなぁ……!」
辛そうな顔でそう言い放つ神通さんを囲み、我々ソロモン駆逐隊でとりあえず慰めておきます。
「どうせここはネットも漫画もないんです」
「それを先に言ってよォ!?!」
「お待ち下さい」
「ゲームならありました」
「なんとそれはニン◯ンドース◯ッチじゃあ!?
ありがとうございます、さすがクイーンダムのメイドは世界一ぃ!!」
と、ポーク&パインさんの持ってきた伝説級のゲーム機を受け取り、そのまま土下座するような姿勢で二人に頭を下げる那珂さん。
オロオロされてる…………
「……それがあれば、文句なく任務へ従事できますか?」
「ええと……おー、ポ◯モン入ってんじゃん。
あ!!スマ◯ラあんじゃん!!スマ◯ラ!!
これなら那珂ちゃん、なんとか戦えます!!」
「よろしい。
では、最後にシャルンホルスト、巡洋戦艦で動けるあなたと私で、まずは動きます」
「分かりました」
「ヘイ!ラッキーE!!
アタシがいねーぞ、サンディエゴ様がよぉ?
朝っぱらから休暇は当分ないと言われたばかりだぜ?」
お、たしかに……遠征なら普通遠洋能力の高い軽巡洋艦はもっと入れるべきでは?
「そこの軽巡の言う通りだゾ?
なんなら、なんで私のような重巡2隻を残す?」
「サンディエゴ、それとプリンツ・オイゲン。
私が、いつ、あなた方を休暇に行かせるだなんて言いましたか?」
と、エンタープライズさんは眼鏡の位置を正しながらそう言い放ちます。
「どうせそこの大和は、プランBをやるために『周辺偵察』にでも行く気です」
「当然です。必要ですから」
「……本当に店を開く気ですか?」
「ご安心を。恐らく数日後には開店資金の5倍は回収してお返しできます」
「なんの根拠が……はぁ。
本当は、ポークとパインの『本当の姿』の力も借りたいですが、このビフレストの管理は二人にしか出来ないでしょう。
さて……では残りの貴方達二人、そして駆逐艦雪風、軽巡洋艦大井、そして重巡羽黒には、
今から、重要な任務に就いて貰います」
「はぐ!?!はぐまも!?!」
「私も……?」
「……!なるほど」
やってくる着ぐるみはぐまこと羽黒さんと我らが先任駆逐艦パイセンの雪風さん、そして超速理解してしまう大井さん……
この面子に任務……ふむ、
まぁ……私なんの任務かは察しがついてますが
「あなた達には、」
エンタープライズさんは、静かに任務内容を告げました。
「司令官の学業の補佐のため、しばらく召喚獣として付いて行ってください」
「あ!」「なるほどはぐ」「やはり」
理解の早い雪風さんに羽黒さん、そして大井さんと、
「
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?」
鳩が豆鉄砲|(※50口径)食らったような反応の残り2隻でした。
ちなみにもうそろそろ街の辺りでは、司令官の位置?
***
───目の前にある店の給仕の給料は、余り高くはなかった
「…………はぁ」
エルウィナは、小さくため息をつく。
「……おーい!エルウィナ〜!!」
「あれ、委員長!?」
ふと、壁のチラシを見ていた背後から、パタパタと蝙蝠のような翼をはためかせた青肌の淫魔───エルウィナのクラスの委員長、ノワールが降り立つ。
「この時間珍しい……いつももっと早く学校行ってるよね?」
「それが……我ながらお恥ずかしい話なのだけど……
昨日ね、ちょっと勉強に根を詰めちゃって、その……ムラムラしちゃって、一人で
「今初めて委員長が淫魔なんだって思った」
「思春期なら誰だってナニの一つするじゃないの!
あ、声大きかった……」
こういう話題で恥じらうあたり、淫魔の一般的な風評とは違うのである。
そんな訳ですぐ二人とも話したまま歩き出すのだ。
「…………委員長、ひょっとして私よりそういう話題恥ずかしがってんじゃない?」
「そりゃあ…………流石に淫魔も200年前じゃないんだからこういう考え普通でしょう?」
「
…………ちなみにノワールは、両性具有である。
「お、女の子のじゃなくって……まぁ
「…………意外と裏では襲ってるタイプかなとか思っててごめん」
「そんなこと思っていたの!?
いや、いっそそんなこと思っていた相手に放課後一人で宿題見せてもらってたの!?!」
「こんなちんちくりん相手に?」
「自虐混じりでも度胸とかそういう問題じゃあないわよぉ!!
あとロリコンだったらどうするのよ!!」
慌てふためいてつい大声を出すノワールの言葉に、エルウィナは吹き出してしまう。
「ぷっ…………くくくく…………!!
いや、やっぱ大丈夫でしょ……!
無理無理、委員長にそんな大それたこと」
「人は分からないものよ?淫魔でも魔族でも亜人でも」
「嫌ぁでもさー、委員長もうこの短い時間に良い人っぷり滲み出てるから。
こんなんだからクソ貴族とか私よりギラついた貧乏人あがりがいるクラス纏められてるんだって分かるよ」
ふふ、と笑うエルウィナの横から、
ふと、黒い白目に金色の瞳を心配そうに染めてノワールが覗く。
「……なんか、あったの?」
「…………解っちゃうか。隠し事出来ないや、委員長じゃ」
ふぅ、とため息混じりにそう呟くエルウィナ。
「…………夕立と喧嘩した。
いや、私が一方的に殴っただけ」
「ユウダチ、ってあの召喚獣の?」
「自分は兵器だから、危険な事しても死んでも心配すんなだって。
無理だよ、そんなの」
「……どういう状況?」
「私含めて25人分、それも私以外がバクバク食べるみんなの食費のために冒険者するんだって」
「え!?」
「心配するのも分かるでしょ?
でも心配するなって言葉に使う言葉じゃないから……殴っちゃった。
はぁ…………なんていうか、我ながら何してんだかって感じというか……」
「いや……でも、その反応も当然じゃない?
私のおばあちゃんも、冒険者で命を落としかけたって言ってるぐらいだし……」
ふと、北側の方を見るノワール。
街の大通りの向こう、薄っすらと見える巨大な山脈を見る。
「あの山の向こうは、私たちの常識は通じない……
昔から、そう習っているじゃない…………」
────ここランギス王国のある平野部。
それと内陸を遮るように存在する山脈は、この大陸の海と内陸をほぼ隔てるように存在していた。
まだ、世界地図も不安定なこの世でも、
ニューロペー大陸の内陸部は、完全に未知の存在だった。
「…………あそこに行くのか……夕立と、みんなが……」
つい、不安を呟く中、
「誰か!!医者か回復魔法を使える奴を呼べ!!!」
ふと、すぐ近くに聞こえる怒号。
何やら騒がしい……?
***
酷い有様、とはこの事である。
頭から血を流す大男、死んだようにぐったりする男が介抱されている。
「ダメだ!!こっちは息してない!!」
「いい反撃もらったからな……だがこっちも血が止まらない!!」
なんだか知らないが、とにかく重傷者が二人。
「大変……!」
「私、回復魔法なら得意だし、行く!!」
と、エルウィナが飛び出そうとした瞬間、
「───ちょっと見せるのデス!」
それよりも早く、駆け寄る何者か。
なんと、一見するとエルウィナやノワールと同世代ぐらいの、クリクリした大きな目が可愛らしい癖っ毛な少女だ。
……だが、何故かエルウィナは既視感を覚える。
割と大きな一部と、襟が大きくスカートは短く、肩やら胸もとやら大きく開いているような格好に。
「嬢ちゃん危ねぇぞ!下がってな!!」
「その嬢ちゃんに感謝するデス。
抑える場所はここデスよ」
大男の額の傷口、抑えている人間の手を退けてその近くのある箇所をグッと抑える少女。
「血が止まった……!?」
「静脈でも血管までイってるデス、傷口だけでも縫わないと出血多量まっしぐらデスね」
「嬢ちゃん、医者か?」
「ドクターじゃなかったらこんな事できないデス。
押さえるの変わってデス」
答えるや否や腰のベルトのポーチへ手を伸ばす。
「糸で縫うのか!?」
「糸で縫うとか時間かかりすぎデス」
す、と取り出す、細長く四角いモノ。
困惑する顔の中、すかさず傷口にそれが当てられる。
パチン!
「いっ……!!」
撃ち込まれる『コ』の形の金属針
「ステイプラーじゃねーか!?」
「信じられないと思うデスけど、この方が人の傷口の縫合には都合良いデス」
パチン、パチン、とあまりの速さで傷口が縫われ、最後に小さなスプレー缶を取り出し傷口に噴射する。
「ぎゃう……!!」
「染みるデスけど、我慢するデス」
包帯、滅菌ガーゼを取り出し手際良く巻く。
一連の動作が速すぎて、文句を言う暇すら与えない。
「次デス」
そして即座に今度は倒れたまま目を覚まさない方へ向かう。
手際良く肩手首を掴み、静かに口元に頬を近づける。
「……脈ナシ、息ナシ……」
判断とともに、ビリッとシャツを破き、顎に手を添えて上へ向ける。
口を開けて、自らの口を重ねる。
「何を!?」
ヒュー、と音を立てて、少女の口から吐いた息がはだけた胸を膨らませる。
3秒、長く息を吐き、膨らみ切った所で止めて胸が縮むのを待ち、再び長く息を吹き込む。
皆呆気に取られている中、続いて鳩尾の辺りに手両手を組んで肘を真っすぐに伸ばして当てる。
グッ、と力を込めて押す瞬間、ポキポキと嫌な音が鳴る。
「……えれくとーりかるこみにけーしょん、ひきさかーれてるいまじねーしょん、だーれにもーじゃまさーせないー……」
口ずさむ謎の曲のリズムに合わせて、力強く素早く鳩尾を押していく。
「……な、何やってんだ?」
「人間は心停止して呼吸が止まると5分であの世行きデス。
逆を言えば、5分以内に心臓と肺の機能を戻せば生き返るんデス」
そう言って再び、息を口移しで送り始める彼女。
「無茶苦茶なことを……!!」
「無茶苦茶かどうかは、」
「〜っ!!プハッ!??
ゲホ、ガホ……!?」
突然、咳き込んで息を吹き返す男性。
彼女はその身体を優しく横に倒し、吐いた唾が気道に入らないようにする。
「……ふぅ……まぁ、無茶苦茶かどうかは生き返ったこの人が決める事デス。
良かった、後は早く二人を病院に連れていくデス!」
おぉ、というどよめきと共に、周りから拍手が上がる。
「……な、なぁ嬢ちゃん……!」
ふと、近くに座っていたあの頭の傷の大男が目を開く。
「あんた……あんたいい医者になれる、ぜ……!
ソイツは嫌い、だが……殺すつもりじゃなかったんだ……俺、殺人者にゃあ、なりたくねぇ、からよ……」
「こらこら、脳震盪起こしてるんデスよ!
安静にしなさいデス!」
駆け寄って、そう言う彼女に、弱々しく震えて笑う男。
「じゃあ……せめて、嬢ちゃんの名前……聞いても、いいか……??」
「ワタシのデス?」
んー、と悩んでから、やがて彼女は名乗る。
「結構難しい字デスけど……『ムラクモ』です」
「ムラ……クモ……?」
「ムラクモ……!?」
その声はエルウィナ達にも聞こえていた。
そして……やはりと言うか、エルウィナはなぜか聴き慣れた感覚を覚えた名前だった。
「まって!!
まさかあなた……フリートレス!?」
「なんデスと!?!」
思わず叫んだ言葉に見事反応し、彼女───そのフリートレスはこちらを向く。
「そうデス!
ワタシ、特Ⅰ型
やはりと言うべきか彼女───叢雲はフリートレスだった。
***
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