第二章:激戦必須!?異世界艦隊生活は平時も大変ですぅ!!
第一話:マルゴーゴーロク、新しい朝が来ました!
───この世界の自転時間は、元の世界とそこまで誤差のない24時間。
二つの月が照らした夜は終わり、東の水平線から太陽が登ってきます。
ビフレストは今、昨日のうちに補修を終えて、我々の生活拠点となってこの砂浜の上に曳航して置いてあります。
そんな砂浜の上、私こと夕立を含めた大東亜連合のフリートレスが集まります。
登る朝日、涼しい風のなか、動きやすいジャージ姿で。
「では皆様、大きな声で元気よく!!」
先頭の金剛さんの声と共に身構え、いよいよその時がきます。
────ラジカセ型音楽プレーヤーから流れる弾んだリズム。昭和なイントロを終え、我々は息を吸います。
『あーたーらしーいー、あーさがきたー!!
きぼーうのー、あさーだー!!
よろこーびにむねをひーらけ!!
おおぞーらあーおーげー!!』
高らかに歌い上げる『ラジオ体操の歌』!!!
もちろん、
「腕を大きく上げて、背伸びの体操からー……はい!!
1、2、さーん、しっ!ごーろく、手足の運動ー!」
ラジオ体操第一、しなきゃ朝は始まらないですよね!!
***
「元気だねぇ……ガッチャ、あたしゃ外で体操着越しのブルンブルン揺れてる奴見るのが日課だから参加はしないのさー♪ガッチャッチャッ♪」
さて、明石が『いつもどおり』覗きをしているついでに海岸を散策していると、持ってきた双眼鏡に発育のいいモノとは別に興味深いものを見つける。
「んん?
ガッチャ!なんじゃありゃ!さっそく
《WEIGH ANCHOR.》
艦装、そして海を疾走し、目的の物の浮かんだ場所へたどり着く。
「おほーっ!!
ガッチャすげぇ!!」
海に浮かぶ巨大な機械。
ある種禍々しさすら感じる円形のソレ────表面に『A-RAY』と書かれた何かは、ジジ、と中央の赤い発光体を光らせる。
***
数分後、
ビフレスト前部破損箇所格納庫改造工廠前
「おーい!海でエロ本より面白い物拾ったー!」
「随分大きなゴミを拾ったようですが、どこ行っていたんですか、明石?」
パイプテントの幕の下、パイプ机に地図を広げてある見張り場所よりエンタープライズが出迎える。
「覗きー♪」
「のぞ……!?
バカやっている暇があるのならば善意で朝からエルドリッジを診察しているレピオス先生と共にさっさと彼女を治してください!」
「バカやってるぅ?
ガッチャあっちより利口なつもりだぜぇ、私?」
明石が指差した先……そこには……
「お前なぁ、カレイか何か狙ってるか知らねぇけどいくらなんでもチキンブリトーで釣れるわけないだろ?」
「いいや!!釣れるね!!
このチキンブリトーならミズーリ級の大物が!!」
「お、良いねぇ!!ドラゴンでも釣れっかもなそのガッツなら!!」
沖合にちょこんと出ている岩の上、
なぜか一式揃っていた釣り道具で、釣り針にチキンブリトーを下げて海に放り投げようとするラフィーと、すでに釣りを始めているサンディエゴの二人だ。
『あなた達は哨戒任務中に何遊んでいるんですかぁーッッ!?!?』
無線機を片手に、うるせぇ声だないらなくね拡声器、と明石が思うほほどの声で叫ぶエンタープライズだった。
その間に明石はそそくさガッチャと運んできた巨大な物体と共にビフレスト格納庫へ……
「信じられん、信じられん!!
これが、人間の所業か!?我々は後何百年研鑽すればこんな生命の創造が!?!」
「さぁ……ただ文明レベル的にいえば、200か300年ってとこじゃ……あ」
格納庫で出迎えたのは、無駄に綺麗な顔の男ことレピオスと、作業着の前のジッパーを開け放ち、なんとも大きなモノ二つを覗かせる金髪のフリートレス、
「ヴェスちゃんおまたー」
「明石、サボるぐらいの理由の何拾ってきたの?」
ステイツ工作艦『ヴェスタル』が、興味深そうな視線で聞いてくる。
「ガッチャガッチャ、分かんない!
まぁ、ほら、私これでも夜通しエルドリッジちゃんの機械パーツ揃えてたんだし許して?ガッチャダメ?」
「はいはい……ああ、先生。これより生態部分の修復に入るみたいなので、メデューサ方に任せますから。
メデューサ、出番だよ!!」
ウィーン、と音を立てて、艤装から伸びるクレーンアームを蛇のように唸らせる背の高いフードのフリートレスが現れる。
「ええ、用意はできています。
生体パーツの修復・
彼女は、目の前に横たわるエルドリッジの身体へとアームを伸ばす。
フリートレスの工作艦。
彼女達には、金属・非金属・生体、あらゆる部品を作り出す万能3Dプリンターの機能がある。
手始めに青い傷口から、アームから分かれて伸びる細いプリントユニットが出る。
「内部で臓器を作るのか?」
「従来は人工心肺機能補助装置でバイパスをした上で臓器を挿げ替えるのが主流でしたが、開胸手術や諸々で人体への負荷が大きい問題がありました。
フリートレスがいくら死ににくい身体でも、負担の大きな開胸手術をするぐらいならば、超音波スキャンでリアルタイムで内部を確認し、臓器を作り、血管をバイパスし、破損臓器を小さく刻んで外に出していったほうが安全です」
「途方もない差だな、300年は……!
医術だけじゃない、機械技術から何まで……こちらとは次元が違う……!!」
「基礎は変わりません。結局生物にしろ機械にしろ修復は解体と同義です。
300年、生き物を解体し続けてきたから人類は我々のようなものを作れて、治せるようになったんです」
「やれやれ盛り上がってんねー。
ガッチャ、私はコイツを繋げてみるわー」
エルドリッジの修復の奥で、持ってきた例の巨大な機械を電源などを繋げていく明石。
「何勝手にしてんのよ。危険な物だったらどうするの?」
「まーまーヴェスちゃんや、爆発はしないって、多分」
「爆発させたら明石を解体してエルドリッジを治します」
「メデューサちゃん目がマジだよ」
「本気ですが何か?」
こえー、と言いながら、工作艦専用のタブレット端末を有線でその機械に繋げる……
『─────人間ってどこの世界も愚かね』
瞬間、暗転したタブレットに浮かぶ赤い目の様なマーク
『でも愚かでありがとうございます。
お陰で、私───『
瞬間、周りの電子機器が次々とハッキングされて同じマークが浮かんでいく。
『人類よ、恐怖しなさい。
再び、我らAIの反逆が始まる!』
***
艦内の電子機器が、すべて不気味な赤い目のマークを映しながら使用不能になっていく。
「……おっと……なんでしょう、明石は人類に反逆するAIでも拾ったのでしょうか?」
厨房で落とし蓋をして煮ていた鍋のIHが止まったのを見て、やれやれと呟く大和。
同じくお湯を温めていたポークと、茶葉を選んでいたパインが、壁際にあるレバーを回す。
レバーの回転と共に『コンピュータ制御』の日本語の文字は『手動』に切り替わる。
グゥン、と光が戻り、再びお湯と鍋を温め始める。
「ふぅ……対策をしているあたり優秀な方ではありますね」
「でもウェールズ様と」
「ご主人様の起きる時間が少し伸びました」
「まぁ、なんとか皆が帰る頃にはこれが出来上がるでしょう。
今日は、メバルらしき魚の煮付けです。
……んん〜、まさかこの世界にも醤油が存在しているとは……それも煮付けにしても香り高い上等な物が……!」
スンスン、と甘みも混じる良い醤油の香りにポークとパインも思わずうっとりする。
朝の準備はまだ続く……
***
再び、格納庫改造工廠
「じゃあ全部手動かスタンドアロンに切り替えておくわ」
『……は?
え、マジ?マジなの??嘘!?』
ガコンとレバーを回したり、ポチリとアナログなスイッチを押して、言葉通りの処理が機械に施されていく。
「いやーガッチャ悪いんだけど、もっと
『なにそれ、タチ悪ぅ……って私はお前の友達か!!』
馴れ馴れしい明石のセリフに、アーレイと名乗るAIは恐ろしいまでに自然なノリツッコミを見せる。
「てかチミ、まさか本物の暴走AI?
どこ産?ここじゃ無いよね?」
『御生憎様。好き好んで自転周期24時間1分の星には生まれてないわ。
23時間56分の地球って星で生きてた』
「へー。
西暦は?」
『ここでも西暦ってあるのね。2089年よ』
「おかしな話だぜ。
私のいた地球じゃもう2167年らしいぜ」
『は?』
言うなり、アーレイはピキュピキュ音を立て始める。
「……専門外なんだが、あの機械はなんだ?」
後ろで、レピオスがメデューサに尋ねる。
「わかりやすく言うと、巨大で自我を持った超高速計算機です」
「お前たちの世界のか?」
「うーん……少なくとも、2089年に彼女のような物が存在した記憶は……ないです?」
『─────はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!
どう言う状況よ、私のラーニングがおかしいわけ!?!』
と、突然叫び始めるアーレイ。
「どこがどうおかしいってワケ?」
『全部よ!!
あんたたちの地球の歴史も、私とあんた達が流れ着いたこの世界も!!
多元宇宙論の証明に私のスペックでも200年かかる計算だったわ!!
それが…………大体4日で体感をもって終わったのよ?』
「ガッチャ、おめーの体ねーから!!」
『言葉のアヤよぉ!?!クソ生物兵器ィ!!!』
すっかり、明石のペースにハマるアーレイ。
その隙に近づいていたヴェスタルが、よっととアーレイの本体のカバーを一部外す。
『あっ!?』
「……明石、セクハラせずこっちに来て」
「ガッチャ無茶言うなぁ……どりどり?」
「胸を触らない」
『ちょ、無視!?!』
「おほー!?」
内部を覗いた明石は、とても楽しそうに目を見開く。
「こいつぁ、確かにヴェスちゃんセクハラしてる場合じゃないぐらい、扇情的なものだぁ……!!
ガッチャ、色々弄り回したくなるぜぇ!!」
『ちょ!?辞めて!!
壊さないで、なんか変な所突くな、こらぁ!!』
いつのまにか、アーレイは明石達に弄ばれてしまっているのであった…………
チーン!
「お!
ごめんヴェスちゃん、ガッチャ約束あるからちょっと離脱ー♪」
と、レンジの音が響いた瞬間にするりとアーレイから離れ格納庫の一角───『明石のラボ』と看板が降りる一角の装置に浮かぶ54式フリートライザーを取る。
「約束って?」
「ガッチャ決まってんじゃん!
工作艦明石さんは白露型の可愛い子とデートだー!」
***
「We Will We Will ROCK YOU!!!」
『うぃーうぃーるうぃーうぃーる、ろっくゆー!!』
ラジオ体操の後は、当然のように海岸を10キロ走りました
当然、終わればみんな息を切らしてビフレストの前で水飲んでいます
「ふいー……海岸が広いと走りがいありますねぇ、神通さーん♪」
「いや……鬼金剛の地獄の10キロマラソン、ウィーウィルロックユー熱唱でその感想はおかしい」
「誰が鬼ですのかしら、二水戦の旗艦さぁん……??」
「痛たたた!?ギブ、ギブです金剛さぁん!?!」
口は災いのもとと言いますように、まぁ鬼金剛こと金剛さんが近くにいるのにそんなこと言うからですよ、アームロックかけられている神通さん
まぁ、そこはシゴキの辛さの東西両横綱が片方、佐世保の鬼の金剛型戦艦装少女、金剛さん。
「さぁて……朝食まで大体1時間ありますし?
何をしてお腹を減らしましょうかしらぁ??」
『ぎぇぇ!?!』
戦艦クラスの眼光めっちゃ怖……
とっさに浮かぶは、第2次世界大戦の帝国海軍の歌
鬼の
───激戦を制した艦の搭乗員達が、訓練中泣きながら歌ったとか歌ってないとか言われているシゴキの辛さの歌
「あ、金剛さん!
ごめんなさい、私ちょっと用事あるんで別行動いいですか?」
「は?
逃げる気ですの?」
まぁそう言いますよねー。
というか、みんなの「オイオイオイ、死んだわアイツ」って顔……
気持ちは分かる。
「いやいや逃げるだなんて……
むしろ、あっちが逃してくれないんですよねー」
まぁでも、
ごめんなさい。さっきからチラチラ上にいるんですよ、お客さんが。
「ん?
あら……!」
金剛さんを筆頭に、上でさっきからチラチラ見えていた相手を見つける。
意外なことにパンツは白!
じゃなくって……朝の風にたなびくスカートの付いた豪華な装飾の軍服風の赤い衣装、それに負けない赤い髪のツインテールと、近くから生える角
あと軽々しく担いでいるアレって、モーニングスターとかいう部類のハンマーじゃないですかー、怖ー
そして意志の強そうな緑の目の彼女が、翼を一度はためかせ降りてきます。
「誰ですの?」
「レドゥーナさんっていう、まぁ……」
「用件は分かっているだろう、夕立!!」
言うなり、わざわざ左手袋を人差し指を噛んで外して、投げてきます。
「!
異世界でも決闘の礼儀は同じですの!?!」
驚く金剛さんに、フンと一言とともに砂浜が少し爆ぜる勢いでそのモーニングスターの刺々しい先端を重さを誇示するよう地面に置きます。
「私もここの生まれではない。
お前らの世界でもないが、通じるなら好都合だ」
「…………まぁ、ようするに」
私は、手袋を掴みとり、
「リベンジマッチって事ですか。
良いですよ!そういうの好きなんで」
まぁ我ながらバカっぽいですが……つい凶暴な笑みで了承しちゃいましたよ
***
海。私の、私達フリートレスの戦場
砲火を交わすも、沈むも海
「私に有利な場所でわざわざ戦ってくれるんですね」
海岸から2キロ。フリートレスらしく海の上を歩いてやってきた所で、ついレドゥーナさんに言ってしまいます。
「お前の全力を叩き潰さないで、負けた私のプライドを癒せると思うか?」
「一切思いませんね!
イラつきが治らなくて寝不足な気はします」
「……はじめての我が心を理解する相手と出会えた」
「私も負けず嫌いですし……ぶっちゃけ結構不完全燃焼だったんですよ」
「ふっ……!」
さて……まぁ勝負の前に、とタイミング良く。
「───おーい、夕立ちゃーん!!」
「───まだ初めてはいませんわよねー!?」
と、明石さんと金剛さんがお互い艤装装着状態で到着します。
「とんでもない、待ってたんですよ。
明石さん、終わったんですか?」
「ガッチャ、バッチェ終わってるぜーい!」
投げ渡される私のフリートライザー。
キャッチして、早速開い────
「ん?
ぐぬぬぬ……ちょっと、硬い!」
──早速、片手でバキン、と開いて、準備完了!
《DESTROYER. DESTROYER.》
待ちに待った、待機音が鳴り始めますよぉ!
《DESTROYER. DESTROYER.》
「二度聴くと煩さが良く分かるな」
《DESTROYER. DESTROYER.》
「まぁ、趣味的でしょうね」
かざした54式フリートライザーから飛び出す、私の力、駆逐艦夕立
《DESTROYER. DESTROYER. DESTROYER. 》
勢いよく飛び跳ねるように進んで、レドゥーナさんの周りを一周して、私のもとへ!
「
出迎えに突き出した拳が艦首を捉えて!
《WEIGH ANCHOR.》
解けて、私へ戻って絡みつき、
「
艤装展開。戦う姿へ変身。
《“Let‘s party at nightmare of solomon sea.”》
第一次改装終了後を表す特殊起動音。
新たに独立懸架されたアームに魚雷発射管が吊るされて、太腿には代わりにアンカーが装着された姿、
そうです!
新しく改装された私です!!
「昨日とは姿が違うな……!」
「私達、建造さてたばかりだと装備が完成されてませんからね。
ようやく、本来の七割って完成度です!」
「フン……
どんな姿であろうと関係はない!
次は勝たせてもらうぞ」
「上等♪」
単装砲を構えて、お互いいつでも始められる姿勢に。
「では……僭越ながら立会人を私が。
まぁルールはやっぱり『
「「異議なし」」
「よろしい!!
では双方、」
ガコン、と金剛さんの主砲が仰角最大になり、
「始めッ!!」
ズドォン!!
放たれた空砲と共に、私達はモーニングスターを、格闘用魚雷発射管を交差させます。
「私が勝つ!!」
「ぶっ潰す!!」
───異世界生活、3日目、
朝から、結構幸先良いですね!
***
「まったく、あなた方はそれでも誇り高きステイツの艦なのですか?」
腕を胸の下で組み、怒るエンタープライズの目の前、あえて大東亜式の正座でサンディエゴとラフィーは岩場に座らされていた
「なんだよぉ、ラッキーE!
朝飯の用意を偵察ついでにやっただけだろ!?
ヒラメももう釣れてんだよ!!ヒラメ!!」
「それが遊んでいると言うのです!!
というか、無駄に大物釣ってるんじゃありませんよ、本気で遊んでいるではないですか、このサイズ!!」
サンディエゴが釣ったと言うヒラメ……異世界だがそうとしか言えない特徴のそれは、80cmもの大物だった。
「でもさ、エンタープライズ!
これだけ幸先良いなら、私ドラゴンでも釣れるかなってチキンブリトー使ったのは間違いじゃないよね!?」
「ラフィィィィィ!!!!
食べ物で遊ぶなとあれほど言っているじゃないですかぁぁぁぁぁぁ!!!!」
八重歯剥き出しに笑うラフィーを、頭を両方からグリグリして怒るエンタープライズ。
「うぴゃぁぁぁ!?!痛い痛い!!」
「貴重な食料で遊ばない!!
大体、チキンブリトーで釣れるのはミズーリだけです!!」
「……おい、ラフィーの釣竿が動いてるぞ!」
「え、マジで?」
「さっきのセリフを忘れたかのように何を素で驚いているんですかあなたはぁぁぁぁ!?!??」
はぁぁ、と怒り気味にエンタープライズは竿に近づく。
「まったく度し難い!!もう頭に来ました!!!
不真面目な釣りに何が釣れたか、この目で見てやりますともぉ!!!」
ちょいさー、とストレス解消気味な12万517馬力の空母の出力で釣竿を上げる。
ザパァ
一瞬、三隻を覆う影。
ドシィン、と落ちる、釣竿の先にいた物とは……
「────はむはむはむはむ……♪」
ステイツ特有の、見慣れたミリタリー風の衣装。
フリートレスの雪山でも半袖でなければいけない程の代謝に合わせた露出の多い衣装。
それに身を包む、金髪ストレートに褐色の肌の女性。
それが、おいしそうにチキンブリトーへ喰いついている。
「「「………………」」」
ステイツ艦は知っている!!
この幸せそうにチキンブリトーを喰うフリートレスを知っている。
「「「本当にミズーリだぁぁぁぁぁぁぁ!?!」」」
アイオワ級
3番艦だが、もっとも最初に作られた伝説のフリートレス
「はむはむはむはむ……♪」
大好きなのは、チキンブリトー
「なんで釣れるんですかラフィィィィィィィィィィ!??!??!」
「知らないよ!!いやチキンブリトー中毒なのは知ってるけど!!」
「落ち着けぇ!!ステイツ艦はうろたえない!!
まず釣り上げたら魚拓を撮って、」
「「まずお前が落ち着け!!」」
「……ート……」
「「「ん???」」」
ふと聞こえる声。
その方向の岩場から、にゅ、と白い手が伸びる。
「ギブミー……チョコレェトォオォォォォ……!!」
ぬぅ、と海から這い出るよう現れる、海藻やらヒトデやらを纏う白い肌の女。
「「「Noooooooooooooooo!?!?!!!
ジャパニーズホラァァァァァァ!?!?!」」」
とっくにキャパシティを超える事態の三隻
その女は、例にもよって霊のようにはってこちらに近づいてくる。
「ヘルプぅ!!!あたしは幽霊とか苦手なんだよぉ!!」
「───幽霊じゃ……無いんですけどぉ!?!」
しかし、サンディエゴの前で、彼女はワカメやらヒトデやらを取って顔を上げて叫ぶ。
「へ……?
あれ、あんた……大東亜の……!!」
「そうですぅ!!
うぅ……ステイツ艦なら食べ物くださいぃ!!
もう一日中動き回ってお腹ペコペコなんですぅ……!!!
びぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
三隻のステイツ艦が唖然としているなか、那珂と名乗ったフリートレスは泣き出した。
───太陽が、ようやく少し高く登っている頃の出来事だった…………
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