第10話房

重いドアをくぐると暖かい空気が体をすぐに包む。

王宮の竜の房の中でもここはある一匹の竜専用の房だ。

吹き抜けの高い建物は、柱や内壁は磨かれた石をあしらい、差し込んだ光が反射し

室内は眩しいと思うほど明るい。

静まり帰っていた房に王が入ると、だれもが急いで平伏した。

普段は王が来ると知らされると、人払いがされ、数人の特別な飼育員が出迎える。

だが緊急の故だろうか、そこかしこに平伏したローブと麻布を来た飼育員が見受けられる。皆驚きざわめきが収まらない。

だが王は、そんなこと一向にかまわない。

普段どんな者にも笑顔を絶やさない王だったが、息を切らし、王装を振り乱し走る姿に誰もが愕いた。

「王様、待って下さい、どうか」

「あなた、皆が見ています」

妃達の声は聞こえているはずだが、王は振り返ることをしなかった。


大きな門扉にたどり着くと護衛の兵士の居る前で荒い息を整えた。

「開けろ」

「はっ!」

身の丈が倍もある屈強な兵士が、互いに目を合わせ息を大きく吸うと、さらに自分たちの倍以上ある門を、押し開けた。


「おお!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る