第9話不穏な予感

通りではメイドや衛兵達がそわそわしていた。

艶のある御影石の支柱の間を靴音を響かせ、国王が急ぎ足で周りを兵士や大臣を連れて歩いて行く。

「もうダメか」

「はい、もう一夜、体を動かさず地面に伏せたまま、ここ何日かは食事をする時も頭を持ち上げることすら出来ず、担当竜医が管で口の隙間から食事を流し込んでいましたが」

国王の顔に悲壮が漂う、それを察してか周りを囲む大臣や護衛の兵士達も顔をしかめる。

「もうだめか……」


王宮に使える竜の納屋は、城から続く草原を開拓した一角にある。

離れているため馬や馬車で移動する。

「まだ着かんのか」

国王が腰をあげ、馬車の小窓から操者を睨みつける。

温厚で愛される国王の荒げた声に、大臣達も動転する。

「王様、立たれては危険です」

大臣の静止にはっとなり、腰を下ろす。

「あなた」

「すまぬ、つい……」

王妃が国王の方に手を添え、なんとか気を落ち着かせようとしたが、のぞいた顔には苛立ちより悲壮感がのぞいていた。


うっそうと広がる大草原、馬車はレンガの敷き詰められた道を行く。

納屋と行っても王宮で飼育する竜だ、通常の竜の納屋の三倍はある石作の作りで、熱帯林と思えるほどの、青々とした樹木が建物を囲い、草原の真ん中に緑の楽園が築かれている。

広さも王宮と同等の広さがあり、端から目をこらしても反対側が霞むほど遠い。

馬車が止まると、国王は、馬車から飛び出すと大臣達を置いて走り出した。

手綱を持ったままの躁者は自分の横を駆け抜けていく国王に、慌てて姿勢を正すが

気づくと大臣や王妃までもが通り過ぎていき、護衛の任務に急いだ。






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