第二章 冒険者になる
あちらこちらで火の上がる森。
石化して崩れかけたこの村で一際高い建物の上から、コバルトブルーの瞳を怪しく輝かせた美女が、足元に広がる無残な姿の村を見下ろした。
村人は死んだか、後は森の奥にでも逃げたのだろう。
彼女の今いるこの村は主人の命令外にあたる村で、襲撃するつもりもなかった。
先に目的の町に向かわせた部下が、今頃自分達を待ち構えているはずの英雄一行と戦っているだろう。
そしてそれは、自分が向かわなければ勝ち目のないものだった。
ーーでも今はそんな事はどうでも良いのだ。
主人以外に初めて感じる得体の知れない恐怖。
そこからくる震えを表に出さなかったのは、最強と言われる主人を自分の弱さなどで貶めない様にする為のプライドでしかなかった。
彼女は自分と主人の間でしか繋がらない特殊な思念魔力を、眼下の人影にバレない様に慎重に飛ばす。
“「ーーどうした?ミクル。」”
脳内に敬愛する主人の声が届く。
彼女は心を鎮めて淡々と状況を報告する。
“「至急報告したい事がーー。目的近くの村で私の魔眼を完全無効化する人間を確認致しました。更に、容姿は少し異なりますが、あの魔王アマカゲルと同様の魔力を持つ魔狼を連れております。ーーいかが致しましょう、イーシュヴァルブ様。」”
ミクルと呼ばれた美女は眼下を警戒しつつも、主人の返事をじっと待つ。
返事によっては自分は死んでしまうかもしれない。
だが、それも主人の命ならば喜んで遂行するまで。
問題はそれを、今ここにいる自分の命だけで遂行できるかどうか、、だ。
“「ーーそうか。ならば、、私の元に連れてこい。」”
“「承知いたしました。この命に変えましても。」”
そして切られる主人との魔力。
それを惜しみながらも、彼女は主人の命を遂行すべく、石化し崩壊した村の真ん中で佇むマリーゴールドの髪の少年を見据えた。
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