第38話 学祭の劇練習が始まる

新藤が何やらニコニコしながら俺の前に来る。

「どうした。そんなニコニコした顔して」

俺が訊くと「訊きたいかい?なら訊きたいですと言いたまえ」

「お前ってそんなキャラだったけ?」

「いいから!早く!」

俺は不思議に思いながらも新藤の言う通りに言う。

「訊きたいです」

「よくぞ言った!では言おう!脚本が完成したのだ」

「まじか!早くね?まだ三日くらいしか経ってなくね?」

「僕はね。書けば書くほど想像力と言うものが生まれすぐ書けるのだ」

「なんか、すごいな」

「だろ?」

俺と新藤が話していると隣にいるまなもこちらに来た。

まなから近づいて来るなんてめずらしい。

「なに、完成したの?」

「そうだよ!桜さん!ついに書き終えたんだ」

まなはその台本をもらいジロジロと見る。

「中々ロマンチックね」

「でしょ~!」

「えぇ」

たしかに俺も呼んでいるがすごく恋愛観が半端ではない。

これ、本当にできるのか?

まなは出来る可能性はあるかもしれないが俺ができるかが問題だ。

こーゆのは俺は初めていつも劇にでるより裏方だったので少し緊張をしてしまう。

新藤は俺が少し緊張してそうな顔を見てニヤニヤしながら「なになに、もう緊張しているのかい?」

「え?まぁ、初めてだし。」

「大丈夫この僕も実際劇の事はよくわからないから言う通りにしてもらえればいいだけだし!」

その言う通りにできるかが問題なんだけどな。

そして出し物も男装の服も完成したと先生から報告を受け放課後実際に着用することになった。

そして放課後

彩香先生が箱を持ってきて箱を下す。

「では早速男装する人は着用してください」

男子は教室から追い出され五分後。

先生がドアを開け「入っていいですよ」

その時女性が男装をしているのを俺はまじかで見るのが初めてですごいと思った。

男子はこれもありだなと言いたげな顔をしている。

俺は萌が男装している姿を見てかっこいいと思った。

やはり元々可愛い人が男子になったらかっこよくなるんだなと思った。

俺は萌に近づいた。

「結構似合っているな」

俺がそういうと「そう?なんか髪を縛るなんて久しぶりで。なんか不思議」

萌は髪が長いのでポニーテルをしている。

それはそれでなんか綺麗にも思える。

「まぁ、それはお前だけじゃないと思うけど」

「え?」

「見ろよ。お前が急に髪型変えるから男子どもはお前に意識してるぞ」

いつも可愛いと言われて大人しい人と言われている人が髪型を変えるともっと意識をしてしまうものなんだろう。

「別に、私には関係ない。」

「そうかよ」

「そうよ」

俺と萌が二人で話しているところをまなは見た時あの時を思い出す。

それは同好会で食べ歩きした時だ。

『急に変わったからって賢は避けたりとかはしないよ』

『それって』

まなはこの時朝田さんがもし本当の気持ちをだしたら賢はどう返すんだろうと。

両想いと言う事を遠回しに知らされたけど本当にそうなのか。

今まで私たちは誰かのためだけに賢と許嫁を決めた。

でもそれは私もなのか。

賢のお母さんはとてもいい人で優しい人。

だから賢も優しい人だと思った。

それは合ってたんだ。賢は優しくていい人顔もお母さん似。

私は幼かったため許嫁というのを甘く見てたのかもしれない。

でも、許嫁になったからこそ今こうやって出会って友達もできたんだなとまなは思った。

まなは賢の事が好きで結婚をしたいと思っている。許嫁とか関係なく本心でだ。

だからこそ朝田さんにも本当の気持ちを言ってほしい。

その後試着に問題はなかったのでいつもの制服に着替えその後新藤がオリジナル脚本を書き終えた事を知らせ皆に渡す。

全てが終わり帰宅の準備をしている。

「賢、今日一緒に帰らない?」

「え?」

俺に言ってきたのはまなからだった。

まなから一緒に帰ろうと言ってくるのは初めてだった。

なにかあるのでは?とも思ったがそんな感じもなさそうだったので「いいよ」と答える。

途中まで一緒なので別に構わないとも思った。

帰り道

「それで?」

「え?」

「なんでお俺と急に帰ろうなんて言ったんだ?」

「それはね。まぁ一緒の道だからよ」

「ふ~ん」

俺はなんか嘘くさいなと思ったが深く追求する必要もないだろうと思った。

「でも、不思議よね」

「なにがだ?」

「私から一緒の帰ろうなんて言うの。気持ち悪いわよね」

「別に、気持ち悪くはないけどただ珍しいなと思っただけだ」

「そ、そう」

まな少しほっとした顔を見せる。

「学祭良い感じだな。俺も今年は少し楽しみでもある」

「そうなの?私も同じよ。学祭実行委員になって他の人とこうやって何かをするってのが楽しいわ」

「お前ほんと変わったな」

「ダメかしら?」

まなは少し悲し気な顔をして言った。

俺は別にいいと思っている。むしろまなはもう少し人と関わり楽しく学校生活を送ってほしいとも思っている。

前の俺ならこんな事思わなかったのにな。

「別にダメじゃないよ。むしろもっと表情だして良いと思うぞ」

俺が言うとまなは少し微笑む。

「やっぱりあなたは優しいわね」

まなは小さく言う。

「今なんか言った?」

「別になにも言ってないわよ」

「そうか」

「うん」

そして別れ道となる。

「それじゃあ、また明日ね賢」

「おう、また明日」

俺たちは別れ互いに帰宅をする。

明日から本格的に学祭の準備が行われる。

学祭まで後三日なのだ。

この三日間は授業はなく学祭の準備などがメインとなる。

「さぁ、始めようか!」

新藤は気合を入れたハチマキをしながら言う。

「あれはいったい何なんだ」

「あれは麗奈が小説を書く時気合を入れるためのハチマキなの」

俺に説明をしてくれたのは生田だ。

「生田、久しぶりに話したな」

「だね、麗奈があんなに楽しく学校生活送っているの初めて」

「まぁ、あんま学校来ていなかったしな」

「だね、これもすべてまなちゃんのおかげだね」

「あいつは別にそんな事思っていないと思うけどな」

劇に出る人は体育館に集まり劇の練習が始める。

かなり台本見るとセリフが多い。

しかも俺が一番言いたくないセリフが何個かある。

まず一つが『僕は君がいるだけで幸せだよ』

二つ目は『いつもありがとう。好きだよ』

そして最後『僕、いや、俺が好きなのはお前だけだだから一緒にいてくれ』

これを俺が言わないといけないんだ。しかもまなに。

それに劇なので全校生徒が見る。

とんでもない事を引き受けてしまった気がする。

そして劇の練習が始まり俺のセリフが出る。

「ぼ、ぼくと今日一緒に帰ってくれないかい」

「はいカット~!。そこの君~!なに照れているんだ!...いや、それでいいのか」

新藤は俺に注意をかけたがどうやらこれでいいらしい。

次はまながセリフを言う番。

「い、いいよ。私も君と帰りたかったか」

まなは演技をちゃんとしている。

照れ顔で少し幼い声を出す。

俺は思わず顔をそらす。

やばい、めっちゃ可愛いぞ。

「はいカット~!くぅーーーー!僕が思ってた以上に可愛いよ!」

「ありがとう」

新藤はすごく興奮しながら言っている。

他の劇に入る人も思わずまなの演技が良くて呆然としている。

俺は新藤はあんなキャラだったか?と疑問になる。

かなりくさいセリフを言ってきたが一番きついのがまなの演技力が良すぎて本当に言われているみたいだ。

「よし、今日はこの辺で終了するよ!お疲れ様!」

皆かなり疲れている様子。

俺もかなり疲れた。

まなは少し汗をかいていてタオルでふいている。

その姿はとても綺麗でついつい見とれてしまった。

なんでか知らないがここんとこまなを見るたびに胸が苦しくなる。

帰宅後俺は家に帰りずっとボーとしていた。

それはまなの事だ。

かなりまなの事を思い出す。自分が気持ち悪くらいだ。

そんな事をまなが知ったらきっと嫌われるだろう。

嫌われたくないのか?そりゃあ、嫌われたくない。

でも別の意味で嫌われたくなにのかもしれない。

もしかして俺まなの事が好きなのか?

この気持ち昔くるみの事が好きだった気持ちと一緒だ。

俺はまなが好きだ。

俺はわかった。まなが好きなんだ。

この気持ちを俺は言わなければならない。

だがこの気持ちを言うのは学祭の最後だ。

まだその時ではない。

俺は後悔しなように必ず言う。

そして許嫁を終わらせる。

俺はくるみとまなの許嫁を終わらせる。

それにはくるみの父俺の父そして俺の母さんにも言わなければならない。

そしてくるみにもだ。

そして翌日にまた演技の練習を始まる。

「僕、いや、俺が好きなのはお前だけだだから一緒にいてくれ」

俺は昨日とは違く照れずに真剣な目で言った。

その時まなは少し動揺をしていた。

「おい、まなお前のセリフだぞ?」

中々セリフを言わなかったので俺が言った。

「あ、ごめん。私もあなたと一緒にいたい。だからこれからも一緒にいようね」

これがラスト。

「いいね!坂木くんもよくなったね!」

「ありがとう新藤」

「よし、明日が最後の練習だ!気合をいれますよ!」

こうして二日目の学祭の練習が終わる。

俺が水分をとっているとまなが俺のところに来た。

「今日はずいぶんと気合入れてたわね」

「ん?まぁね。昨日はごめん足引っ張って」

「別に大丈夫よ」

「そうか」

「ええ」

「ねぇ、もしよかったら今日一緒に帰らない?」

まなは少し照れながらも俺に言ってきた。

「ごめん、今日は無理だ。明日帰らないか?」

「そ、そう。わかったわじゃあ、また明日」

「うん」

そして最後の劇練習が始める。

「これで明日から学祭が初まる!まさか僕の脚本がここま良い劇にできるなんてやっぱり桜さんと坂木君の演技がいいからなのかもね」

「そんな事ないわ」

「そうだね、俺は新藤の脚本がいいからだと思うぞ」

「ありがとう。それじゃあ最後頑張ろう!」

『お~う!』

こうして最後の劇も終わりまなと一緒に帰宅をする。

「明日が学祭か」

「そうね、早かったわね」

「あぁ、それでまな俺は明日お前に伝えたいことがある」

「私もそう思ってたわ。私も明日賢に話したいことがあるの」

「それじゃあ、明日学祭終わったらみんなとご飯食べに行く前に話そう」

「えぇ」

「じゃあ、また明日」

「えぇ」

俺たちは別れの道で離れて家に帰った。

そして翌日学祭当日になった。

今日ですべてを終わらせる許嫁そして学祭を。


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