第2話 自己紹介にて、

 始まりの高校生活、初めましての顔ぶれ、学校に着くなりやすぐに

体育館に押し込まれダラダラと校長先生のありがた~いっ入学祝いのお言葉をいただいている。


長い!だるい!眠たくてあくびが止まらない。


我慢ができず、クアァァーっと猫のようにあくびをしていると、隣の女の子達から

変な顔で凝視され、ヒソヒソと小声で会話されている。


なんだよ、俺を見てこそこそと・・・。あくびがダメなの俺がダメなのっ?。

後者ならすっごいショックだからなコンニャローっ。


肩をがっくりと落とすと同時に、ため息も下に落とす。

はぁーーっ・・・帰りた。


ふと視線を感じ体を曲げた状態で左後ろを見ると、富士宮がいた。

富士宮は俺と目が合うなり素敵な笑顔を送ってきた。


うん、、、普通に可愛いですね、はい。ナイススマイルありがとうございます。


唐突の笑顔により眠気が飛んだ俺は、事なく体育館での入学式を終えた。

残るは、教室での話で終わりだ。

終わり次第Bダッシュで家に直帰だな。もう少しだ。頑張ろうー!!


体育館から案内され教室に移動してきた俺は、

黒板に書かれている自分の席場所を確認してすぐに座る。


俺の場所は、窓際の後ろから二番目。実に最高の席である。


登校時の変な注目のはカウントに入れないとして、幸先の良いスタートである。

マジで神様信じちゃう。ありがとうゼウス様。


心の中で鼻歌を唱えながら、左手にある窓を見ると満開に咲てある桜が目に入る。

登校時は落ち着いて見れていなかったのであろう、

優しい風の中に綺麗な桜の葉が優雅に舞う。

「おー・・・っ。」


思わず俺は声を出し、この光景の感想を述べてしまった。

すると横から、

「綺麗だねーっ。見とれちゃってた?」


声の方に顔を向けると、ニコっと優しい笑顔を向けた。

綺麗な黒髪ロングで鼻が高く整った顔立ち。

スレンダーなお姉さん系って感じだ。


「あれっ?おーい・・・聞こえてるー?。」


俺がまじまじと彼女を観察していると、

彼女は、俺の顔の前で手をフリフリと動かす。そこで俺の意識が戻ってきた。


思わず「ハッ!!」となってすぐさま彼女に返答をする。


「あ、あー・・・見とれてた。すまない。」


「それは桜に?それとも私の美しさにかなー?なんちゃって。」


彼女はペロッと舌を少しだし、可愛くウインクする。

お姉さん系に見えるのに、幼いしぐさのギャップがまた良い。


「ああ。桜の美しさと同じくらいあんたの美しさに見とれていた。」


「ふふ、あなた正直者だね。あなたみたいな正直者は好きよ。」


「それはありがとう。俺も自分の正直なところは好きだ。」


「おー自身満々だねー、なんか面白い。あなた名前は?」


「俺の名前は、・・いや待て。先に自分から名乗るのが礼儀だろ?」


「あら、これは失礼。私は鷹島 紗香(たかしま さやか)

ちなみに席はあなたの隣よ。こんな美人が隣で入学早々ラッキーね。」


彼女はドヤ顔で俺に言う。

なぜ上から目線?中学の頃、女王様とか呼ばれてたんじゃねえの?

なんか従者たくさん連れて学校歩いてそうだし。


「ちなみに昔から美人で評判良かったけど、

さすがに下僕を引き連れたりなんかしてないわよ。」


「俺の心を勝手に読むんじゃねえ。」

しかも下僕って。この子何気に口が悪いな。マジ女王様。ちょっと怖いわ。


「まあ、こんな美人さんが隣は嬉しいよ。あざーす。

俺は小田原光太。よろしくな女王様。」


「うむ。苦しゅうない。良きに計らえ。」


めっちゃ殴りてえ。


鷹島と腹立つ会話をしていると、教室に先生が入ってきた。

他の生徒もそれに気づき、自分の席に着き始める。

まずは担任の教師が自己紹介をして、次は廊下側の一番前の生徒から自己紹介を始める。


あ、この順番辿っていくと俺は最後から二番目だ。

やだなんかちょっとドキドキしてきた。変な汗出そう。

初めが肝心だから変なことは言わないようにしないとな。自己紹介考えよう。

 俺が考えていると隣の鷹島の順番が来た。


「皆さん初めまして。私の名前は鷹島紗香と申します。皆さんとの高校生活を楽しみに

してきました。迷惑かけることが多々あると思いますが、これからよろしくお願いします。」


鷹島は一礼して、席に着く。

一呼吸おいて他の人にはなかった拍手と、絶賛の声が巻き上がる。


凄い盛り上がりだ。自己紹介ってこんなに沸くものなの?

ハードル上がりすぎて次の人怖いよなー。


って次の人は女の子かー・・・。


彼女の方をチラっと見ると彼女の感情が読みとれてしまった。

前髪が長い彼女で顔が見えないが、俯いて膝の上に置いてある手には力が入っており、

肩は小刻みに震えている。これは恐怖の感情だ。


今この流れで、彼女が自己紹介をするものなら、だれが行ってもマイナスの結果が出て

しまうだろう。失敗したらトラウマを植え付けられん。


そんな状態を見て俺は、はぁーっとため息をして前を向きなおした。


「はい、鷹島さんありがとう。じゃあ次の・・・」


「先生ー。すいませんが先に俺が自己紹介していいですかー?。」


俺は先生が話している途中に席を立ち、会話に割って入った。


「えーっと、君は小田原君だね。もう少し後だから待っててもらえるかなー?」


「すいません、自分勝手な発言なのは重々承知なのですけど、

ちょっとトイレに行きたくなったので、先にさせてもらえると助かります」


先生は少しハハハっと苦笑いをした。

迷惑かけてすいませんねー。


「那須野がそれで良いならいいけど、、、どうだ那須野?」


彼女は戸惑いの表情を見せたが、すぐに頭を縦に振って返事をした。


「よし。なら小田原君紹介よろしくー。」


みんなが俺に注目をしたのを確認して、口を開いた。


「じゃあ、初めまして。俺は小田原光太です。

皆さんと同じクラスになれたのは何かのご縁と思いますのでこれからよろしくお願いします。」


っと、本来なら社交辞令的な挨拶かましとけば終わりでいいんだけど、

ここで終わったら先に言う意味ないよなーっ。


チラっと視界に鷹島の顔が入った。

俺のフライングな行動の意図に気付いたのだろう、ニヤニヤと笑顔で俺を見ている。


鷹島の奴、ハードル上げやがって・・・今度俺のメガトンデコピン喰らわしてやる。

でもそんなことしたら、鷹島を崇める信者にリンチされそうだ。やめとこ。


「あと、俺は三次元に興味がなく二次元の女の子と恋愛から結婚まで出来ないかと

夢見る男の子です。以上。」


俺は堂々と言い終わる。

周りを見渡すとポカーンっと口を開け稀少種を見つけたのかと思うような顔をしている。

富士宮の時と同じ顔しやがって・・・ちょっと悲しいわ。


まぁこれで、本来の目的は達成されたから良しとしよう。

ハードルが高くて飛べないなら、下げてしまえばいい。


静になった教室の中に一人席を立ち、周りは彼を呆気な表情で注視している。

うん・・・もういいかな。


「先生、もう終わったのでトイレに行っていいですか?」


「あ・・・ああ。いいよ。行っておいで」


「じゃあ失礼します」


俺は教室を出ようとする際、那須野の方をチラッと見た。

彼女は肩の震えはなく、不安な表情は少しあるものの前を真っすぐ見ていた。

その時俺は彼女の顔をハッキリ見ることができた。


おー。

前髪は長く、優しそうな垂れ目で小柄な体型。

これは癒し系というものではないのか?普通に可愛いわ。


彼女の表情に満足した俺は、廊下に出て教室の扉を閉める。


閉めている途中、

鷹島がニヤニヤとした表情で、俺に右手を固め親指を出しOKサインをしていた。


・・・やっぱり明日デコピン喰らわしてやる。


俺はそう心に決め、教室を後にした。

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