どんぐり山 [2,333文字]※ホラー
よくある話かもしれないけど、俺的には洒落にならなかったから思い出したくないけど書くわ。
あの日、俺は友人のA太とその彼女のB子、B子の友達のC美と飲んでたんだ。
盛り上がったのはいいんだけどそのせいであっという間に酒がなくなってさ、誰が買い出しに行くかって話になったんだよ。
で、俺の家の近くにはそこそこ有名な心霊スポットがあって、季節が夏だったこともあってみんなで酒買うついでに心霊スポットに肝試しに行こうぜ!ってなった。
C美は怖がってたけど、俺はC美とあわよくば…なんて気持ちがあったから何としても肝試しに行かなきゃって思ってた。
防災意識を高めましょう、なんて話題になってた時期に買った懐中電灯が二本あったから、それを引っ張り出してきて、ちゃんと電気が点くのを確認して出かけた。
心霊スポットってのはちょっと歩いたとこにある公園の中にあって、どんぐり山っていう遊具のある場所なんだよね。
どんぐり山は木が三角を形作るみたいに組み上げられてて、山のてっぺんから降りてる数本の縄を掴んで山を登るってやつ。わかるかな。
このどんぐり山、なぜか死亡事故が多い。
使用禁止になっても、ここで遊んで転落死する子供が後を絶たないんだ。
取り壊せばいいって思うだろ?
取り壊そうとした作業員もみんな死んだんだってさ。
どんぐり山の周りにはもう明かりも設置されてなくて、昼間でも木の陰になって結構暗いんだけど、夜になるともっとヤバかった。
A太と俺で懐中電灯で照らしながら近付いたけど雰囲気抜群。
うお〜ヤベ〜なんてはしゃいでたら、突然C美が「あっ」て声をあげた。
どうした?ってC美の方を見ると、青い顔をしてB子の方を指差してる。
俺がB子の方に視線を動かした時、俺の目に飛び込んできたのは小学生くらいの男の子だった。
「え?」
「どうしたの?」
B子は何も感じてないみたいで俺に笑いかけてくるんだけど、B子の笑顔に反比例して男の子の顔は憤怒に歪んでいた。
俺と同じものがC美にも見えてるのかなって確認したくて、一瞬、目を離した隙に消えてしまった。
「見た…?」
C美が俺に恐る恐る聞いてきたので、俺は首を縦に振った。
「なになに〜、どうしたの〜?」
当人は相変わらず平気な顔をしている。
「いや、なんでもない」
「変なの〜。ねぇねぇA太〜もう飽きた〜」
「そーだなー、特になんも起きねえし、酒買って帰ろうぜ」
A太とB子が並んで歩き出すのを、俺とC美は慌てて追いかけた。
去り際、一回振り返ってみたけど、どんぐり山には何も見えなかった。
「俺くん、あれなんだろ…」
C美が、俺の隣に並んでこそりと話す。
シャンプーのいい匂いがして思わずにやけそうになる顔を引き締めて、答えた。
「さっぱり分かんねぇ」
「B子…大丈夫かな…」
「平気っぽいけどな」
「なんもないといいけど…」
俺たちは酒をしこたま買い込んで家に帰り、くだらない話で盛り上がっていつの間にか眠りに就いていた。
「俺くん、俺くん…起きて…」
ゆさゆさと腕を揺さぶられて目を開けると、至近距離にC美の顔があった。
えっ、なになに、俺汗臭いかも!なんて考えてると、C美は玄関へと繋がるドアを指差して言った。
「B子…どっか行くみたい…」
「え」
ガチャン、と玄関の閉まる音がした。
起き上がって部屋を見回すと、確かにB子の姿がない。
まだ外は真っ暗なのに、部屋の隅に懐中電灯が二つ転がっていた。
俺はいびきをかくA太を叩き起こし、説明もそこそこに家を飛び出した。
「なんだよ!ってゆーかB子は?」
「知るかよ!B子が明かりも持たねーで家を出てったんだよ!」
俺もC美も、絶対にどんぐり山にいるって思ってた。
んで、その考えは当たった。
俺たちがどんぐり山に近付くと、B子の声がしたんだ。
「1枚…2枚…」
「ひひっ…3枚……ひゃは…4枚…」
懐中電灯を声のする方に向けると、そこには地面に落ちていたであろう石で、自らの爪を剥ぎながらその数を数えているB子の姿があった。
「おいっ、なにやってんだ……わッ?!」
A太がB子に走り寄ろうとしたその瞬間、どんぐり山の内側の暗がりからにゅっと手が出るのを見た。
それはA太にも見えたみたいで、思わず後ずさる。
その間にもB子の爪はべりべりと剥がれて、なんかもうどうにでもなれって思って俺は目を瞑ってB子の方に全力でダッシュした。
B子の体に触ったなって思ったからそれを握りしめて、思いっきり引っ張ったんだ。
「俺くん目開けちゃダメ!!」
C美の叫び声が聞こえたから、俺は思わず開けようとしていた両目を強く瞑った。
俺の手をあったかいやわらかいものが掴んで引っ張ってくれて、あーこれC美の手だーって思って付いていこうとしたら、逆の手を思いっきり引っ張られた。
「いってぇ!!!」
俺はそっちの手を振りほどこうとしたんだけど、なんか違和感があって。
さっき嗅いだシャンプーの匂いがするのはこっちの方だって、あったかい手を振りほどいたのよ。
そんでしばらく走ったら、もういいよって言われたから目を開けたら、肩で息をするC美が目の前にいた。
「B子は!?」
そう聞くとあっち、って返されて、見るとA太がB子抱きしめて号泣してた。
B子は一瞬きょとんとしたけど、多分痛みが襲ってきたんだと思う、ものすごい顔して泣き出した。
俺は救急車を呼んで、近くのベンチに二人を座らせると自分も隣のベンチに座った。
「あれ、地縛霊ってやつかな」
「そうかも」
「俺、もしかしてヤバかった?」
「うん、めっちゃ引っ張られてた。よく目瞑ってたのに私が後から掴んだ方だって分かったね。声出そうとしても出なくて、どうしようって思ってた」
シャンプーの匂いがしたからなんだ、なんて言えなかったよね、ヘタレで悪かったな。
読みにくい文章でごめん、ROMに戻る。
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