夜の女王 [193文字]

 雲の冠を戴いた夕陽がビルの群れに飲み込まれていく。


 赤く咲く曼珠沙華が風に揺れた。


 夜の女王が君臨すると、世界は赫から蒼に染まる。


 月の光を受けて妖しく輝く女王の外套は空の色。


 夜の帳が降りる時、差し出されるのは黄金色の麦酒。


 断りを入れてその瓶を受け取った。


 御方に注がせる訳にはいかぬだろう。


 その昔に下賜された星屑の杯に手酌して、弾ける麦酒を一息に。


 今夜の女王は遊戯をご所望か。


 夜はまだ、長い。





お題:赤く咲く・手酌・夜の色

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