その気球は復讐に揺れる [250文字]

 夢だ。

 これは、夢。


 ごうごうと顔の横で燃え盛る炎。

 その炎に煽られて、まだ生きているように脈動する気球が、俺を中空に留めている。


 夢だ。

 これは、夢。


 あいつの心臓は、だってもう止めたはずで。

 だから、こんなに脈打つ訳が無いのだ。

 力の入らない身体は、あいつの気球に全て委ねられて。


 鼓動が、炎が、どんどんと弱まっていくのを目にしながら、夢で死んだらどうなるのだろうと考える。



「引き摺り込むにしても、まどろっこすぎるだろ、クソが」



 俺の意識は、地面に叩き付けられて弾けるまで、鮮明なままだった。


 夢からは、醒めなかった。





お題:気球・心臓・叫ぶ

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