また行方不明者が出たらしい [507文字] ※ホラー

 古びた屋敷は肝試しに丁度いい。


 夏休みに入る少し前、転校してきた美少女とお近付きになるには絶好の機会だった。


 その昔、一家心中があったという屋敷は、夜な夜なその家族の幽霊が出るという噂だった。


 玄関の鍵は既に誰かによって壊され、誰でも中に入れるということは確認済みである。


 当然ながら電気は通っていないので、懐中電灯の灯りだけが頼りだ。


 片手に懐中電灯。

 もう片方の手には美少女の手を握り、屋敷へと足を踏み入れた。



「証拠にさ、ケータイで動画撮っといてよ」



 俺の尻のポケットからケータイを取ってもらい、動画をお願いする。

 クラスメイトに自慢するためにも、動画を撮るのが一番だろう。



「サオリちゃん?」



 突然ぎゅうとキツく握られた手に、思わず顔を顰めて彼女の名を呼ぶ。


 暗闇に紛れてあまりよく見えない顔に、赤い二つの光?



「えっ」



 メキメキと、握られた手が折れる音がする。

 少し遅れて身体中に痛みが走り、叫び声を上げた。


 取り落とした懐中電灯が回転しながら地面に落ちる。

 その光に一瞬照らされた美少女は、美少女らしからぬ顔を、していた。



「ひっ、う、うわぁぁぁぁ」


『ありがとう。これでまた暫く、消えずに済むわ』



 場違いな程に優しい声が、聞こえた、気が、し





お題:屋敷・ケータイ・電気・ホラー

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