手紙を書くよ、だから待ってて [200文字]

《春になったら引っ越すの》


 そう言って笑った君の顔があまりにも儚くて、僕は何も言えなくなったんだ。


 橋の下。

 二人だけの、秘密の場所。

 春も夏も秋も冬も、僕らはそこに居た。


 最後の日だって、やっぱり僕らはそこに居て。


 何かを言わなきゃと思うのに、口から漏れるのは言葉にならない吐息ばかりだった。


「ふふ、おかしな山田くん」


 あぁ、またそうやって笑うから。


 だから僕は。



 僕の腕の中、君は少しだけもがいて、そして、泣いた。




お題:春・橋の下・おかしな山田くん

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