第4話 2回目の戦闘と報酬~元落ちこぼれニートの戦闘能力どのくらい?非魔術side-NO MAGIC-~

翌朝、4人は自分のベッドに寝ていて目を覚ました。


昨夜は初クエストで店で宴を開き盛大に盛り上がったが今日からクエストの時間によって店の手伝いをシフトして行く予定だから毎日、4人で店を開ける時間の前に役場へと行くと約束したのだ


だから早めに起きた訳だがササメはまだ寝ていたので最初に起きた俺が起こしにベッドを下りササメの元へ


俺は「起きろ~、朝だぞ!」とササメのカラダを優しく揺らす。


するとササメが巨体を静かに起こし目を擦りながら「うぅん…サトル。おはよう」と言った


俺は爽やかに「おはよう!早速、新しいクエストを見つけに役場に行こう」と手を掴みカラダを起こしてあげる。


サトルは手を離し自分も着替える。


ササメはようやく起きたみたいで眠いのを我慢しながら着替えていく。


一方その頃、女子の方は優雅に早起きしお茶を嗜んでいたが隣のササメたちの物音を聴いて慌てて準備をして2人で外へ


外に出て彼らの部屋の扉をノックする。


すると慌てていたのかちゃんと服を着てないサトルとササメが出てきた。


それを見たレイカは目を閉じて顔も出て隠し恥ずかしそうに2人を指さして勇気出して一言「服をちゃんと着なさい!」と怒鳴った


それを隣でニコニコしながら見ていたスズコが静かに扉を閉めてレイカちゃんを後ろへと下がらせ「もう少ししたらまた来るわね」と慌てた様子でレイカの手を引き部屋へと戻って行った


「アイツらなんで服を着てないのよ…、私だって女の子なのに。」と俯き泣きながら言う


するとスズコが「ササメたちも急だったから仕方ないとはいえ普通なら簡単に入らせないように声くらい掛けるわよ?でもあの判断は良くないかもね。」と苦笑しながらレイカを慰めた


一方でササメとサトルはというと2人で"ポカーン"と口が開いたままで固まり身動き出来なかった


「レイカちゃんがあんな態度を取るなんて初めて。もしかしてサトル、キミの裸を見て恥ずかしくなってたのかな…?」と言ってきた


「まぁ…ササメはパンダだし裸って感じではないもんな、俺は人間だから裸だし見慣れてなくてびっくりしたんじゃね?」と苦笑しながらササメに言う


「だよね…僕のカラダは元から毛深いから裸って感じじゃないもんね」と笑う。


ササメも夜になりゃ超絶イケメンなんだし傷つかないわけないよな…


女に裸を見られても平然として居られるなんて有り得ねぇもん。


「ササメ、お前は夜になればイケメンだ。


俺が保証する。だがな、レイカは幼馴染だがなんだが知らないが1人の女だ。


だから裸を見られて平然としてんな。


一応、男なら恥ずかしがれ」と慰めるとササメは泣きながら頷く


「なら早速、着替えて逆に俺たちがアイツらを迎えに行くぞ!」


「うん、そうだね!ありがとう。サトル」と満面の笑みを浮かべ準備をした


その頃、レイカとスズコは泣きながらベッドに座るレイカの隣に腰掛け背中に腕を回し横から抱きしめてあげていた


「大丈夫ですよ…レイカちゃんは何にも悪くない。あれはサトルたちが悪かった、泣き止んで下さい。そろそろ彼らが迎えにきますからしっかりしてください」と慰めていると扉をノックする音がしてスズコはレイカから離れる


「はい。誰でしょうか…?」と言うと「俺だよ、サトル。レイカは?」と言ってきたので「泣いてますよ。貴方たちのせいですからね、責任を取ってください」と返してきた


「スズコちゃん、ボクもいるよ~。」と隣にいたササメが前に出てきた


「分かってますよ。2人で迎えにきたのでしょ?レイカちゃん呼んでくるので暫くお待ちを…」と扉から離れレイカの元へ


「なんかスズコちゃん、怒ってたね…やばいかも」と焦った様子でササメがバタバタと落ちつかない様子…


「大丈夫だから落ちつけ…レイカも悪気があった訳じゃねぇんだから。俺らも悪かったし謝ればいいんじゃね?」と言うとササメは落ちつきを取り戻し「そうかな…そうなら嬉しいな」といつものササメに戻った


そんなやり取りをしてるうちに扉が開き戦闘服に着替えた2人が出てきた


まだ涙目のレイカだがスズコにリードされながら「行くよ、みんな!私たちの2度目の戦闘を」と言ったので3人も声を合わせて「「「おぉー!」」」と叫ぶと4人は役場へと向かった


役場へと向かってる最中にレイカが前を歩く2人に「あんな羞恥はじめて見せたわ、心配かけてごめんなさい。


長い付き合いだからササメの裸には見慣れてたけどサトルの裸は見慣れてないから恥ずかしくて…


別にサトルのことが好きだからとかじゃないんだから!」と顔を赤くして、ぷいっと横を向いた


すかさずスズコが慌てた様子で2人に「ごめんなさいね…やっぱりレイカちゃん、人間の男の子の裸には耐性がないの。


だからあまり見せないであげて」と苦笑しながら言ってきた


俺たちは「わかった。そうするよ」


「うん。ボクもサトルに気をつけさせるから」


と言い苦笑いすると無意識のうちに4人は目的の役場に着いていた


時間が早いからなのか知らないが役場の中は人が少なく静かだった


夕方~夜にかけてはクエストを見に来てる冒険者などが沢山いたがこの時間はあまり居ないようだ…


受付カウンターに居たスタッフが俺たちに気が付き声をかけてきた


「よう!兄ちゃんたち~、もしや今日のクエスト探してんのか?」と言いながらカウンターから出てきて掲示板にあるクエストの中から初心者向けだが報酬はかなり良さげなのをチョイスし俺たちに見せた


「ならオススメのあるぞ、コレだ」


「ん?なんだこれ…この街の酒場や飲食店の情報収集・レポート提出?」


「そう。でも戦闘系がいいなら訓練とかどうよ?クエストというよりレベル上げとか基礎魔法や基礎魔術なんかを鍛えられて報酬も貰えるっていう危険を伴わないやつ」


「その訓練とやらは期間とかあるのか?ないなら戦闘系の魔法・魔術を使わないのがいいんだが」と悩むポーズをする


すると「そしたらこれはどうだ?魔法・魔術が効かない野獣らしいんだが腕の立つ連中は簡単で報酬も悪いっていうんでなかなか受けてくれるパーティーがいなくてな。


初心者向けにしても近接戦で剣とかを鍛えたい奴らってこの街には少ないからオススメだぞ」と言い見せてくれた


俺たちがこの間、受けたクエストとは違い魔法や魔術を使わない敵と戦うというのを考えると4人で行くより剣を鍛えたい2人だけで行くのが良いのだろうか…


「私たちは魔法と魔術を強化したいのですが回復役が必要でしたら私がお供しますがスズコちゃんを1人にしたくないので私はパスで」


「もちろん、アタシは魔術を鍛えたいからパスよ。治癒魔法ならササメも使えるから2人で行って来てよね」


「ササメ、このクエストは2人で受けるか?人数は2人~ってなってるし簡単なら俺たちだけでも大丈夫なんじゃね?」と言うとササメは頷き「そうだね、レイカちゃんが言う通り治癒魔法ならボクも少し使えるから役に立つと思う」


「なら決まりだな。お前ら2人はどうするんだ?店の手伝いか?」と訊くと2人は頷き「そうね、お店の手伝いと少し調べたいことあるから暫くはクエストには出ないでおくわ」とレイカが言った


「私もレイカちゃんに付いて調べ物と店の手伝いするから」と慌てて言った


「あと"訓練"とかいうやつも気になるから期間とか訊いて期間が無いなら受けようと思うんだが良いか?訓練なら俺たち4人で受けて魔法・魔術・剣術とか一緒にレベルアップできるよな。大丈夫なら受けよう」と真剣な顔で3人に言う


すると「サトルがいいならボクたちも受けるよ」とササメが静かに言った


「当たり前じゃないの、アタシら仲間なんだから良いに決まってるわ。受けましょ」とツンとした態度でレイカが言う


「ですね!私たちは"仲間"です!だから協力するのも当たり前ですしアナタがリーダーなのですから決めたなら受けましょう」とスズコが俺の手を取り目を見て言った


俺はススメられたクエストと訓練を受けることにした


2枚の紙を受付カウンターへと持っていくと、いつの間にか戻っていたスタッフが居た


「ちょっと訊いてもいいか?この訓練だが期間とかあるか?無いなら受けたいのだが…」と訊く


すると「訓練を始める期間は指定してないが始めたらその日から最低限2週間は朝と夜に実践の授業がある、それを受けてレベルアップしたり新しい技なんかも習得できたら修了証とかいうのが貰えてバッジも貰える。


このバッジがあればいつでもレベルアップさせたい時に受けた訓練所に出入りして練習とかしていい権利が与えられる。


だから初心者にはオススメだ、受けるか?」と訊いてきた


俺は「頼む、この訓練と野獣討伐の初級クエストの依頼を受けたい。


報酬は終わった方から貰いに来るから」と返事をすると持ってきた皆の手形を渡すと男は頷き手際よく手続きして2枚の書類を渡してきた


「これにリーダーのサインを頼む。

あとこの朱肉に親指を付けてサインの横の丸に付けてくれ」と言ってきたので俺はその通りにした


「それじゃ、契約成立したから明日から討伐クエスト1件と訓練を承りました」と男が言い書類を渡したので「ありがとう」と言い手渡された2枚の書類と手形を受け取り、待たせている3人の元へ


「2件とも受けてきたみたいだけど大丈夫…?」とササメが一番に心配してきた


「大丈夫。なんか"訓練"の方は開始日が決まってないらしくて初心者向けクエストの野獣の討伐クエストを先に片付けてからでもいいみたいだ」と俺は説明した


「なるほど…なら私も賛成よ、訓練は4人で受けれるみたいだしササメたちが先に討伐クエストの方を受けてる間は私たちがお店の手伝いやることにしたでしょ?なら問題ないじゃない」


とレイカがクールに意見した


「私も賛成です、サトルたちが討伐クエストやってる間に私たちが資金を稼ぎますんで…


そちらの方は任せました」と2人の方を同時に叩き笑った


受けるクエストが決まった所でそろそろ店に行かなければならない時間になった


俺たち4人は仲良く並んで歩いて無事に部屋へと帰ってきた


早速、店の服に着替えようとして倒れ込む俺…なんか目眩がして頭が回らない。


隣にいたササメに介抱されながら俺は目を閉じる


しばらくして部屋にレイカたちがやって来て扉を叩いた


「ササメ、サトル?どうしたの?何かあった?とびら開けて?」とレイカの声がした


「レイカちゃん…サトルが!倒れた」


「えっ、倒れた?!何があったの?」


「わからない…部屋で着替えてたら突然、倒れたんだ」と慌てている様子のササメ


すると「とりあえず扉を蹴破るからササメはサトルと一緒に扉から離れなさい!」とレイカが叫んだ


「わかった!」とササメがサトルをお姫様だっこして扉から離れた


「ササメ、離れた?」と再びレイカの声がしたので「離れた」と返事をした瞬間に"バダーン"と扉が蹴破られてレイカとスズコの姿が現れた


すぐに2人はササメに介抱されながら横たわる俺に駆け寄り俺の頬をを"ペチペチ"叩いた


「サトル、わかる?」と何回か頬を叩く。


俺どうして気絶したんだっけ…?


そうだ着替えようとしたんだった。なんでだ?


しばらくして俺はゆっくりと目が開いた


「ササメ、レイカちゃん、サトルが目を開けたよ!」とレイカの肩に乗ってるスズコが言った


「俺は何で倒れたんだ…?」と第一声はこれだった。


「よかった…サトル、目を覚まさないかと思ってサトルの頬をいっぱい叩いちゃったよ」と焦った顔でササメが言う


「本当に良かったです!何にもなくて」とスズコがホッとした様子で言った


「アンタに何かあったらアタシらの責任になりかねないんだから気をつけなさいよね!」とツンとした態度で恥ずかしそうにレイカが言った


「3人とも悪いな…しばらく休んだらバイト行くから店主に謝っといてくれ」と俺が3人に言うとサトルはササメの腕から体を起こしフラフラの状態のまま1人で自分のベッドへ


その様子を見たササメが「サトル!フラフラだよ、大丈夫?」とあたふたしながら言ってきたので「大丈夫だ。バイト宜しくな」と片手を挙げてそのままベッドに倒れ込む


「サトルさんが『宜しくな』って言ったんだし私たちはそれに答えないと」とスズコも慌ててフォロー


「そうよね!アタシらがサトルの分も頑張らないと」とガッツポーズでレイカが言った


「2人とも、わかったよ。サトル、ゆっくり休んで。ボクらが何とかするから」と寂しそうな表情でササメはサトルの傍を離れスズコとレイカと共に部屋をあとにする


この時はまだ知らない。ササメとキツい討伐クエストを受けたことを…


そしてレイカとスズコがメイドとしてのスキルをレベルアップすることも。


-数時間後-


部屋のベッドで目を覚ました俺は横に仕事を早く切り上げ帰ってきていた変身後のササメたち3人が目の前に居たのでびっくりした


「おわぁ!お前らバイトはどうした…?」と言うと「バイトはキミが心配だったから大将にお願いして早めに上がらせてもらったんだよ」とササメがニコッと笑い言った


「アタシらも心配だったから一緒に上がらせてもらったわ」とレイカがツンとした態度で言った


「そうなんです。サトルさん、体調どうですか…?」とスズコが心配そうに見つめながら言う


「ありがとう…心配してくれて。もう大丈夫みたいだからスズコたちは自分の部屋に戻ってくれ」と言うと心配症の2人をササメがドアまで背中を押していき「サトルのことはボクに任せて!明日には元気になると思うから…」と言い部屋から出して扉を閉めた


「本当に大丈夫なんでしょうね?スズコ、アンタもなんか言いなさいよ」と今回ばかりはキツめに当たる


「すみません…あの時、私がサトルさんの疲労に気づいていれば」と焦った表情をし下を向いた


そして2人は部屋から立ち去り自分たちの部屋へと戻って行った


「ボクもキミの疲れを読み取れなくてごめん…。これからボクの治癒魔法で疲労を少しだけ回復させるから横になって」と優しげな表情で俺に言った


「わかった。ありがとう…宜しく」と再びベッドに横になり静かに目を瞑る


すると薄らと俺の体の目の前に手をかざし聞こえそうで聞こえない程度の声色でササメが呪文を唱えていた


しばらくすると手から小さな魔法陣と光が溢れ俺の体に光が入っていく…


この感じ…体験したことがない、なんか物凄く気持ちよくて安らかで疲労も取れていく。何なんだ…俺はそのまま眠りについた。


空が強い日差しを照り付ける時間帯。


-俺は目を覚ました-


するとベッドで寝ていなかったのか俺のベッドの横でパンダの姿のササメがスヨスヨ寝ていた


俺はゆっくりと彼の頭を撫でてみたすると凄く柔らかくてフワフワしていた


「うわぁ…めっちゃくちゃフワフワで気持ちいい」と口にしてしまいササメが起きてしまった


「あれ?サトル?おはよう、いい朝だね」とフワッとした表情で笑った


「うん。おはよう、ササメ」と平常を装っては見たものの少し表情がニヤケていたようだ


-数分後-


「もう大丈夫そうだし明日の夜にでも受けたクエスト行ってみる?」

とササメが優しい表情で言う


「そうだな…まだちょっと体調よくないから明日にしてくれると助かる」

と再び横になる


「まだ寝る気?もう朝だよ」

と優しい顔で起こしてくれた


「だよな~、すまない」と苦笑いしながらゆっくりと起きた


「それじゃ、昼間にバイトしなきゃね」とササメがサトルにウィンクし寝巻きからバイト服に着替えていく


「きもちわる…俺はホモじゃないぞ」と返す


「ごめん!癖なんだ」とササメが笑う

「冗談がキツイぜ…相棒」とサトル


とりあえずバイト服に着替え終えた2人は隣のレイカとスズコを迎えに行った


「レイカ、スズコ~、バイト行くよ!」


ササメが扉を叩き言うと扉が空きスズコを肩に乗せたレイカが現れた


「ごめん…今日はスズコと2人で訓練に行く予定なの。だから休ませてほしい」と言われたので2人は頷きササメがレイカに"店長に言っておくよ"と言ったのでレイカも頷き"宜しく"と言い返した


「レイカたち訓練いくんだな。俺らはバイトしなくちゃな」といつもの調子に戻ったサトルを見てササメが頷き返す


店に着き2人は店長に挨拶するとササメが"レイカとスズコは今日は訓練に行くかは休みです"と伝えると"了解した"とだけ言い頷いた


「今日はボクら2人だけなので夜も宜しくお願いします」とササメが頭を下げながら言うとサトルも頭を下げる


すると店長が「わかった!宜しくな」と笑った


そして初めて2人だけのバイト時間、ササメはあのことを気にして俺が無理しないよう気遣いながら接客していた


それをみて俺は『どんなに頑張っても出来ないことがある,それは人間だから…』というのを元いた世界で言われたのを思い出す


だけどそれは今は関係ない。

理由は1つだ、こいつらとなら何だってできる…そう感じたから無理もした


でもササメもレイカもスズコも俺を心配してくれて仲間だって想ってくれたこと


それは俺にとっては大切な大事なことであると俺は身をもって知ることになろうとは思わなかった


-その頃、レイカたちはとある訓練施設にて訓練を受けていた-


俺たちはバイトが終わり部屋へと戻るが隣の部屋はまだ明かりも付いていないし気になったので戸を叩いてみたが返事はない


「レイカたちはまだ訓練施設か…

初日でこれじゃ、心配だ」


俺が呟くとササメが「大丈夫さ。レイカたちなら戦力になりたくて訓練に行っんだろ?


なら信じてあげなくちゃ」と笑顔で言う


俺は「そうだな…」と返して2人を待つことなく部屋に戻りベッドに入る


しばらく眠れずに居ると隣から物音がしたので起きてみたが"気のせいか"と思い再び就寝


ササメはぐっすり眠っているのか物音にも反応せず眠り続けている


-翌朝-


まだ日が出てない時間に起きてしまった俺は隣の部屋に行ってみた


そして戸を叩くと「どちら様?」と声がしたので慌てて「俺だよ、サトル。」と言うと中からレイカが出てきた


服は寝巻きだった


となると昨夜、俺が聴いた物音はレイカたち帰宅時のだったんだと自覚した


「昨日の夜中に帰ってきたのか?」と訊くとレイカは欠伸をしたあとに「そうよ。」言った


俺は「そうか…」と言い扉を閉め部屋に戻る


「レイカちゃん、誰だったの?」と眠ね眼のスズコがレイカに訊いた


「サトルよ、なんかうるさかったみたい」と答えた


「そっか、心配かけちゃったみたい。気をつけなくちゃ」と欠伸しながら言った


その頃、部屋に戻ったサトルはまだ寝ているササメを起こさないようにベッドに戻る


そして-数分後-


日は昇り、ササメも目が覚める


「おはよう、サトル!何処いってたの?」と爽やかな顔と共にサトルにサトルのベッドの近くへ行き話しかける


サトルはベッドからササメの声で跳ね起き「き、気が付いてたのか?!」とササメ顔を見る


「うん。なんかバタバタ言ってたから」と満面の笑みで歩み寄る


「バレてたか…さすがだぜ、相棒」と苦笑いするしかなかった


一方、レイカたちはというと…


あれから2人はベッドに入り日が昇ると一緒に跳ね起きた


「おはよう!レイカちゃん。」と横のベッドでボヤっとしているレイカちゃんにスズコが話しかける


「おはよう、スズコ。」と少し眠そうな顔で返事を返した


着替えを済ませたレイカとスズコの着替えを手伝い、スズコはレイカの肩に乗ると2人は部屋を出た


今日はオフなので買い物に出掛けようとしていた


一方、サトルたちは朝から4人で受ける訓練とは別に店が定休日のため店長にお願いして稽古をしてもらう為に店の前へ向かった


「今日は稽古、よろしくお願いします」とサトルが言うと店長が「厳しくするから覚悟しろよ!」とニカッと笑い構える


「ササメ、ちゃんと見てろよ!」とサトルは剣ではなく街で見つけ購入していた竹刀を店長の前で構え、いざ勝負!とばかりにギラギラした目を向ける


「その目、いいな。かかってこい!」店長がサトルに向かって勢い良く駆け出す


サトルは構えていた竹刀を片手に持ち替え突進してくる店長を華麗に交わす


すると店長は倒れサトルはチャンスとばかりに竹刀を振り店長の体に当てる


「降参だ…強いじゃないか。

これならお前は稽古は要らないな」


「そうなのか。なら次はササメの番だ」とササメに向けて言った


だが店長は「すまん…今のでカラダが動かなくなってしまったから稽古はもう無理だ」と言ったので「でしたらボクが治します!稽古はやらなくて大丈夫ですから」と慌てながらササメが店長に駆け寄り治癒魔法を演唱し始めた


「治癒の女神よ。我に力を与えたまえ…クライシスヒール」と優しい手つきで店長の傷口に当てると薄緑色の綺麗な光がポーっと出ると店長は苦しまなくなり安心したように安らかな顔になった


「店長、大丈夫か!?無理させて悪い」と倒れ込んでいる店長に向かって言うと店長は「頼まれたから断れなくてな」とニカッと笑い立ち上がろうとする


「無理しないでくれよ…心配する」と照れながら言いササメに店長を店に運ぶように指示し俺は部屋へと戻る


「すまんな…みっともない姿、見せちまってよ」とササメに言った


ササメは「毎日、美味しいご飯を作ってますし歳もあってか無理してしまうのは仕方ないかと」と言うと店長を店に運ぶと店の奥にあるベッドに寝かせた


すると店長「助かった」と一言だけ返す


ササメは何も言わずに店を後にした


部屋に戻るとサトルが討伐クエストに向けて準備をしていた


「今日だっけ?ボクも準備しなきゃ」と慌てると「このあと2人で行くだろ?準備してくれ」と振り向かずに言う


「何が必要かな?サトルはやっぱり武器やで買ったやつ持ってく?」と質問してきたので


「もちろん。コイツと俺は一心同体だからな!」と剣を掲げる


「そっか…ボクも一応、小型の剣あるしそれで戦えるようにするよ」と笑う


「不安なら言えよ…俺まで心配になるじゃねぇーか」とササメのお腹に抱きつき泣いた


そして数分後、2人は準備が完了し部屋を出た


その頃、レイカたちは街で仲良くショッピングをしていた


「このクレープ美味しいね!フルーツもみずみずしいしソースも濃厚でyummy(やみー)」とレイカが言うと「私も食べたい!少しちょうだい!」とスズコが言った


「いいよー、はい。」とちぎって小皿に置くと「ありがとう。美味しい」と小さなスズコが皿に近ずき、ちまちまと食べ始める


サトルたちはというと街とは真逆の方向に向かい討伐クエストの目的地へと向かっている最中だった


「かなり険しい道になってきたよ。

サトルも疲れたら休もう」とハアハアと息を荒らげながらササメが言う


「俺は大丈夫だ。ササメこそ疲れたら休め、無理すんな」と言った


「わかった、ありがとう。少し休ませてもらうよ」とササメが言ったので「俺は休める場所、探すよ」と言い1人で辺りを見回す


あそこなら休めそうだな!と小さな洞穴を見つけた


「ササメ!あそこの洞穴なら敵に見付からずに休めそうだぞ、行こう」と言った


「うん。そうだね、ありがとう。」と言ったので俺は頷きササメを支えながら洞穴へと足を進める


レイカたちはクレープを食べ終え街をぶらり散歩中


「レイカちゃん、この服かわいくない?似合いそう!」と肩にいるスズコがガラス越しに飾ってある服を見て言う


「あれは私よりスズコの方が似合いそう」と言うと「このフリフリは私には似合わないわ。レイカちゃんにしか」と言うので「そうかな…ありがとう。」と素直に返した


サトルたちは見つけた洞穴に入ると持参したカバンから食べ物と飲み物を取り出した


「一旦、食事にしよう。腹減った」と言うと「ボクもお腹が空いたよ」とササメが薄ら笑いをした


「パンにジャム塗ってやるから食べろ」とササメに言って俺はカバンから取り出した袋に包まれたパンと瓶に入った真っ赤なイチゴジャムを取りだし開けて小さなバターナイフでジャムを取りパンに塗り手渡す


俺も食べる為にパンを取りだし同じ作業をし1度、紙ナプキンに置いてカバンから地図を取りだしササメに話しかけた


「このあと、どの道順で目的地に行くか話し合おう。じゃないと半日で討伐クエスト完了させんのはムズいだろう…」と言うと「それもあるね。とりあえずこっちの道は時間がかかるけど安全な道。こっちの道は敵もいるけど倒しながら行けば短縮になるよ。だから今日中に討伐するならこっちの危険ルートじゃないと無理かもね」と真剣な表情で答える


「わかった…危険な方から行こう。今日しかないんだからな」とササメに言うと「ボクも覚悟きめるよ」と言って立ち上がった


「まずは飯たべたら、ここを出よう」

「うん。そうしよう」


そして2人は食べ終えると準備を開始し荷物をまとめ洞穴から出た


洞穴を出ると少し天気が悪くなっていた


「少し雲行きが怪しくなってきてるね…どうする?」とササメがサトルに不安そうな顔で話しかけてきた


「そうだな…ルート的には大丈夫だろう」とサトルがら心配な表情で言う


「じゃー行こう!早いほうがいいよね」

とササメも不安げな顔で返事をした


そして2人は険しい道へと足を踏み入れたのだ


洞穴があった場所は最初にいた切り立った山の奥


洞穴を出たことで最初の場所に戻ったが時間はそれほど経っていない、数分間の休憩だったからだ


「よし、山を降りか。ササメ、ルート的に左と右どっちだ?」と訊くと「左は行き止まりだから右かな」と持っていた地図を見せて指さし確認をして伝える


「わかった、右だな。とりあえず降りよう」とサトルが言った


ササメは頷き2人は右を向いて山を降り始めた


だがこの先にいるはずのない敵がいようとは思いもしなかった…


降り始めてから数分が経ち開けた場所に出ると何やら不穏な空気に包まれ辺りは一気に天気が悪くなった


「なんか吹雪いてないかな…?

もしかして雪女とか雪の精霊とか雪の魔獣とか出てこないよな…」と不安げな表情でササメに言ってみる


「そうだね、なんか出てきそうな雰囲気かも。この山は冬じゃなくても雪の魔獣や雪の精霊が現れると雪が降るんだ、だから天気が悪くなって吹雪くとこの土地の主が起きてることを表してるんだよ」と移動しながら答える


「そうなのか。怖いな…どうしよう。


雪の魔獣や雪の精霊ならまだ分かるがこの土地の主とやらに遭遇したらひとたまりもないな。


出くわさなきゃいいが…」とまたもや不安げな表情をするサトル


だがしばらく歩き続けると吹雪は更に強くなり、そのまさかが起きるのかと思いきや主ではなく狼の姿をした雪の魔獣が何体も現れたのだ!


「こいつら…雪の魔獣か!?

ササメ、戦うか」と焦りながら隣にいたササメに訊くと「戦ってる暇はないよ。

だけど追い払うことは出来ると思うよ」と冷静に答えた


すると両手を前に持って来ると手のひらを雪の魔獣に向けるとササメは演唱を始めた


「炎の精霊よ…力をお貸しください。

ファイヤーオブブレス!!」といつも以上に大きな声で叫ぶと手のひらの前に赤い魔法陣が現れ、そこから炎の渦が出現した


すると炎の渦が何体かの雪の魔獣に向かって分岐しながら飛んでいき当たった敵は倒れ周りにいた雪の魔獣は恐れを抱き逃げていった


「ふぅ。良かった、これで先に進めるね」とモコモコの額の汗を吹き言った


「ササメは攻撃魔法も使えるんだな」と訊くと


「一応、治癒魔法と攻撃魔法どちらも習ったけどボクはどちらかと言えば治癒魔法の方が得意でね。


攻撃魔法は風と火と水しか使えないんだ」と頭を掻きながら照れた表情をする


「そっか、でも俺は魔法は使えんし助かったよ。ありがとう」と言うと「どういたしまして。次は敵に出くわしたら君も剣で戦いなよね」と言ってきた


「おうよ。当たり前じゃん、その為に自主トレしてんだからさ」と言ったところでササメに「そろそろ移動しよう。日が暮れちゃうし」と言ったので俺は頷く


そして吹雪がら弱くなり地形も平地になり辺りも見晴らしが良くなったところに岩で出来たダンジョンが出現したのだ


-そう。このダンジョンこそがサトルとササメの受けた討伐クエストの目的地-


その名も"Rock cave"


「すげーデカい洞穴だな…」と俺が言うと


「そうだね。ここが目的地だけど討伐クエストの倒さなくてはならない敵はこの中の奥にいるみたいだよ」


「岩で出来た洞穴ってことはゴブリンとか?それとも龍とか?」と考えながら言うと


「まだ調査したことない場所みたいだから何かは分からないらしいよ。

ただ噂では龍の鳴き声のようだと言ってた」と解説してくれた


「となると…多分、龍なんだろうな、よし!早速、中に入ってみよう」とササメに言うと


「そうだね。入ってみよう。」と返した


2人はそれぞれカバンから懐中電灯を取り出すと灯りを付けササメを後ろにつかせて俺は前を行く


「ジメジメしてて薄暗いからコウモリとか居そうなのに居ないし…こんな所に龍いるのかよ」


俺は不安な表情で呟いた


「ボクが知る限り龍はジメジメしてて静かな場所を好むらしいから、ここは凄くいい場所なんじゃないかな?」と表情は見えないが声が弾んでいる為か嬉しそうな表情をしているのだろう


「ササメ、なんか嬉しいだな。龍とか怖くないのか?」と訊き返すと


「うん。龍は昔から高貴で凄く優しくてカッコイイから好きなんだ、だから怖くないよ」と話してくれた


「そっか…もし龍じゃなくゴブリンとかだったら?」と訊くと


「ゴブリンは怖い。人喰いだし容赦なく襲ってくるし汚いし嫌いだよ」と答えた


「俺もゴブリンだけは嫌いだ。ササメから魔獣や討伐クエストに出回るようなヤバいやつの図鑑を見せてもらったけど最低な奴らだと思うぜ」と言うと


「龍の鳴き声がしたってだけで討伐クエストの対象になるとは思えない…


もし龍がゴブリンに捕まってて人質に取られてるなら鳴き声の噂は信憑性が出でくるんだ、多分だけど岩で出来た洞穴ってことはゴブリンたちも巣を作るのに適しているから狙ってたんじゃないかな?」と仮説を話す


「だとしたら討伐クエストの対象は"龍"じゃなく"ゴブリン"なのか?」と訊くと


「その可能性の方が高いでしょ。だって聞いた話では龍の鳴き声が苦しんでる時に出す声だったと言っていたし本当にそうならボクたちが助けないと!」と心配そうな表情をしているであろう顔を俯かせる


「とにかく奥に進むしかないか…」と焦った様子で足取りを進める


すると何やら騒がしい声が聞こえた


「なんだ?もしかしてゴブリンか!?」と言っていると周りから緑色の汚らしい格好をした小さなゴブリンが現れた


「ササメ、ゴブリンだ!しかも子供。どうする?!」と叫ぶと


「子供だろうと人喰いゴブリンだから倒すか追っ払うかしよう。」と持ちかけたので


俺は「いや、倒さず逃がそう…なんか震えてるぞ」と言ったので「え?震えてるの…?というかもしかして家族とハグれた?」

と小さなゴブリンにゆっくり近きながらササメは言った


すると小さなゴブリンは「うん…迷子になっちゃって」と呟いたので


「そしたらボクたちも君らの家族に用があって案内して欲しかったんだけど迷子なら仕方ないから一緒に探してあげるよ?」と優しく言うと泣きじゃくっていた小さなゴブリンは頷き歩みを進める


俺たちは歩みを進める小さなゴブリンの背中を追いかけながらこの先にゴブリンがいるのかと思うとドキドキしてきた


だが前を歩く小さなゴブリンは俺たちを警戒していたのにいつの間にか震えは収まっていた


「この辺からハグれたんだけどママたちいない…どこ行っちゃったんだろう…」と不安げな表情をしたので


ササメが「この辺りからなら道が別れてるしどっちに行ったかわからない?」と訊くと


「分からない…ぼーっとしてたから」とまた泣いてしまった


「困ったな…俺たちも来たばかりで道が分からないんだ。だから君だけが頼りなんだ、頼むよ」と拝みながら頼むが首を横に降り蹲ってしまった…


しばらくして反対側の方から声がした


多分、小さなゴブリンの仲間だろう。


とにかく彼らが現れるまで待つしかない


そして数分後、何人かの足音が近づいてきて現れたのは大人サイズのゴブリンが2体と小さなゴブリンよりも少し背の高い中くらいのゴブリンが松明を持って現れたのだ


「何してるの?こんなとこで帰るわよ」

と母親らしき髪の長いゴブリンが蹲っている彼に話しかけた


「ママ?ママなの!?ごめんなさい…」

と言いながら母親に抱きつき近くに居た俺たちに「待っててくれてありがとう。」と言った


そして母親は「人間…?と動物?アンタら何しに来たのかしら。私たちを倒しに来たの?」と訊いてきたので


「いいえ、違います。もしかしたらゴブリンではなく龍がいるのではと耳にしまして討伐クエストの対象は分からないので調査しに来ました」と冷静にササメ答えると


「そう…私たちはこの岩で出来た洞穴に昔から住んでて村には1度も行ったことはありませんし龍の住む岩石の洞穴にも行ったことはありません。


なのに急にデカい龍が入り込んだらしく私たちの住処を荒らしたんです…


なので食料などを分け与えてくださる心優しい冒険者の方にお願いをして討伐クエストを役所に張り出させてもらったんです。


報酬は私たちが持っているものになってしまいますが人喰いゴブリンではない私たちの秘伝書をお渡しします。


どうか助けていただけないでしょうか」

と震える声で答える


「わかりました。貴方がこのクエストの依頼人なのですね、承知しました。


ではボクたちが龍をここから追い出せば討伐出来たということにしていただけますか?」

と優しく言うと


「それで構いません。宜しくお願いすます…」と小さなゴブリンを抱きかかえお父さん・お兄ちゃんゴブリンの元に戻ると皆で頭を下げ去って行った


俺たちは去って言った方向を見やると直ぐゴブリンたちが行かなかった反対側の道を進む


歩くかこと数分、光が現れ行き止まりがそこにあった


しかし目の前には巨大な湖とその中に蹲っている龍の姿があった…デカい。


「すげーデカい…なんかヤバそう」俺が呟くと


「この龍は見たことない。体は緑色してて鱗は宝石みたいにキラキラ輝いてる…

危ないヤツなのかな?」とササメ


すると龍が起き出してしまいゆっくりと巨大な体が現れた


見た目は生きてる時に現世で見た日本の龍みたいな光り輝く緑色で赤いツノと白い髭にクリっとした黒い瞳。


間違いなく"日本の龍"そのものだった。

彼はかなり気性が荒い。


だが話せる場合は懐柔させることも可能なはず…


でも仲間にしても仕方ないしもしかしたら何か理由があってここにいるのかもしれない。


「話を聞いてくれ!ここはゴブリンの住処らしくてお前が現れたことで混乱し怯えている。


もし可能ならここじゃない場所に移住してくれないか、頼む」とお願いしてみる


龍はぐわ~と鳴き「いいだろう。但し俺と勝負して勝ったら出て行ってやろう。

負けたらお前ら全員、人質にしてやる」


テレパシーみたいに頭に響くような感じで伝えてきた


なるほど…コイツテレパシー使えんのか


すげーじゃん。大丈夫だ、俺なら勝てる


「わかった。相手してやる」と強気に答えると


またテレパシーで「良かろう。かかってこい」


などとやり取りしてるとササメが「もしかして戦うの?ボクも加勢する?それとも援護する?」と慌てながら言うので


「お前は援護してくれ!強化魔法とか使えたら頼む」と言うと


頷き「わかった!得意ではないけど頑張ってみるよ」とササメは俺の背中に向けて手のひらを向け演唱し始めた


「女神様、サトルに加護を与えたまえ…」と何やら聞こえない程度に呟きながら演唱を続けると白い魔法陣が現れ、光り出す


すると俺も白い光に包まれ一気に湧き上がってくる何かがあった


「よし!強化完了したか!んじゃ、いっちょやりますか!!」と地面から飛び跳ねると人間とは思えない速さで飛び上がる


それを見た龍は「上から行くのか。魔法では無いのは救いじゃな」と呟く


俺は龍の顔付近まで近くと剣(刀)を抜き一気に振り上げた


龍の額に当たるも傷1つつかない…


後ろに弾かれた俺は地面に落ちることはなく飛び続けていた


理由はササメがかけてくれた強化魔法に飛翔のものがあったからだ


龍の戦う場合に備え対策は練っていたがこれほどまでに硬いとなると剣で切れるか分からない…


ならば急所である額の硬い鱗をササメに魔法で剥いで貰いそこを俺が剣で傷つければ倒せるはずだ


とにかくササメに俺は合図をした


「了解!加勢するね」と呟き手のひらを龍の額がある方向へ向け小さく唱えた


「風の精霊よ…力をお貸しください。

ウィンドオブブレス!」


ササメの手のひらの前に黄緑の魔法陣が現れ龍の額に向けて風の渦が放たれた


俺は額を隠している龍の手を退ける為に剣を振りながら左右に動く。


すると混乱した龍は額から手を退けた


その隙をつきコントロールしながら額に魔法が当たる


そして額の鱗が剥がれ落ちあらわになった柔らかな皮膚に向けて俺は剣を振るった


スパッと切れる音と同時に額から赤い血が流れ俺は即座にその場から地面へと着地していた


龍は悶え苦しみ倒れた


そして龍はテレパシーを使い俺に「大したものだ、貴様らは強い。約束は守ろう。ここから出ていく。手伝え」と言ったので


「いいだろう。戦わせてもらったんだ、手伝うぜ」と俺は見上げながら言った


「ササメ、龍の背中に乗るから飛べるなら来いよ!」と言うと


まだ有効だった強化魔法の飛翔を飛び上がり華麗に龍の背中に乗った


龍はササメにもテレパシーで「貴様は確か治癒魔法が得意な種族じゃったか。

ならワシの額を治してはくれんかのう。」

と頼んできたので頷きササメは飛翔スキルを使い飛び上がり龍の背中に乗ると怪我した額に近づき手のひらを向け演唱した


「治癒の女神よ。我に力を与えたまえ…

クライシスヒール」と優しい手つきで魔法を放つあっとゆう間に治り綺麗な鱗も復活していた


だがササメは援護したあと暇を持て余し加勢した際に落とした龍の鱗をカバンにしまっていたのだ


龍は「ありがとう。では君たちも一緒に行こう!」と言い飛び上がった


すると天井があったのになくなっていて龍は俺たちを乗せて一気に上空へと飛んでいった


「すげー!速いし気持ちいいな」と龍の角を掴み乗っている俺が言うと


「そうじゃろう!空を飛ぶのは気持ちいいんじゃ」と笑顔で龍が答える


ササメは怖がって龍のふわふわな毛に捕まり蹲っていた


「サトル、ボクは怖いよ。」と呟くだけだった


空は夕暮れになっていて辺りは連なる山々の上空にいたが1周まわって戻ってきた


岩で出来た洞穴の入り口に降り立った


「確かゴブリンたちに報告するんじゃったか。連れ出してすまんのう。」と謝ってきたので


「大丈夫ですよ。わざわざここに連れて来てもらえて助かりました」とあんなに怖がっていたササメが降りるなり冷静に答えていた


「そうかのう…ならワシはこの辺でさらばじゃ


もし空から移動する時はワシを呼ぶと良いぞ!これはその道具じゃ。


小さな笛じゃが音色は素晴らしいぞ。」

と俺に紐の付いた小さな笛を託し去って行った


「なんか強くなかったですし心優しい龍でしたね。」と呆気に取られて言うササメだが俺も同じことを思った


「とりあえずゴブリンたちに報告しにいこう。秘伝の書が貰えるらしいし行こう」と促すと


頷き「そうですね。」と言い俺たちは再び岩で出来た洞穴へと入った


最初に来た道を進み途中で分かれ道になりゴブリンたちが行った道へと進む


すると水が滴る水路になっていて先に進むと氷柱があり雪が積もっていた


「この感じだと、こちら側は雪の精霊さんたちが暮らす雪洞窟かもしれません」と解説してくれたが「そうなのか…もしかして雪の精霊を人質になんてのはないよな」と訊き返すと


「それはないかと。彼らはゴブリンと言っても人喰いゴブリンではないらしいですし調べてみたんですがここに載ってないんです。


新種ではなく害のない者ゆえに載らなかったと考えるべきでしょう」と言った


「なるほど…だとしたら報告したら安全に帰れるのか」と訊いたがササメは下を向き質問には答えず考え込むばかり


ようやく口にしたが「彼らのことを調査するのはどうでしょう?今じゃないですけど…」

と言い始めたので流石の俺も黙り込む


しばらく歩くと小さな雪の精霊たちが舞っている空間の先に小さな家が建っていた


そこは明るくて街頭があるように周りに灯りがあった


「立派な家だな…」と関心しているとササメが強化魔法を演唱し始め俺とササメには守護のバリアがまとわりつく


「よし。これで何かされても大丈夫。」

とササメが言った


「そうか、ありがとよ。行くぞ」と言うと

ササメは頷き2人は建物へと近く


扉の前でサトルは戸を叩くのを躊躇った


「どうしたの?やっぱり怖い?」と慰めるササメ


「いや、ちょっと違う。緊張しただけ」と返した


俺は深呼吸して再び戸に手を近づけ扉を叩いた


反応があり先程の助けたゴブリンの母親が出てきた


「ご苦労さまです、報告に来たのね。

上がってちょうだい!」と俺とササメを引っ張り中に入れる


入ると目の前には廊下があり少し進むと左横にある扉を開けた


「いらっしゃい、座りなさい。」

と声をかけたのは眼鏡をかけた父親だった


俺たちは頷き「失礼します。」と言い椅子に座る


「助けた子は?」と俺が訊くと

「あの子なら疲れたみたいで寝てるわ」と答えた


「そうですか…」と言うと「単刀直入に聞きますが本当に秘伝の書は頂けるのでしょうか」

とササメがくち出てきたので俺も頷く


「異例のことでしたから今回は特別に貴方がに私たちを助けてくださったお礼としてお渡し致します。こちらがその"秘伝の書"になります」と母親が広げ見せたのは絵巻図のようなものだった


「これは…かなり貴重な資料ですね。いいんですか?ボクたちが貰ってしまって」とササメが言うので

「もちろんです。私たちの恩人ですし何より私たちで人喰いじゃないゴブリンの血筋は居ないので引き継げなくて困ってたんですよ」と真剣な眼差しで答える


「なるほど…でしたら遠慮なく貰います。

ありがとうございます」とササメが手際よく手続きを済ませる


こうして俺たちは人喰いではないゴブリンたちの住処を出ると薄暗くなっできていた


「この様子だと街に戻るのは今日中には無理そうだな…どうする?」と訊くと

「助けた龍さんに頼もうよ!」と答えたので頷き俺は龍から貰った小さな笛で龍を呼んだ


するとぴゅーと綺麗な音色と共に一瞬にして上空に先程の龍が現れ降り立った


「お呼びかのう、主よ。我が名は"緑龍(りょくりゅう)"助けて頂いた恩によりこれからその笛が手元にある限り何かあれば足となり助けとなるであろう。」と挨拶する


「んじゃーササメと俺を住んでる街まで送ってくれ!」と命令すると

「承知した。2人とも捕まっておれよ」

と言い瞬時に飛び上がる


2人な龍の背中に乗り俺は角を掴み、ササメはモコモコの毛に掴まってるようだ


かくして俺たちは神聖なる龍を仲間にし無事、街へと帰ってきたのだった


送り届けた龍は直ぐに帰って行った


「討伐クエストは完了したが役場に報告は明日の朝にするか?なんか暗いし」と言うと

「そうだね…明日にしよう」と言い

2人は部屋へと帰宅した

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

落ちこぼれニートの異世界転生~奇妙な世界と不思議な住人~ 月野 灯花莉 @syousetu_love315

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画