第13話 捜索(sideランドルフ)
ディアナの捜索を始めて、かなりの時間が経過している。それなのにまだ彼女は見つかっていない。
公安騎士団や従者達も捜索に加わったが、ポプラレスを刺激しないようにするためにも隠密に動かなければならなかった。
オーブリーの情報をもとに、ポプラレスの拠点として疑わしい酒場やカジノにも出向いたが、無駄足に終わった。彼は流石に体裁が悪いと思ったのか、途中で馬車を降りて情報屋から新たな情報を仕入れて戻ってきた。
そして次に向かうのは、街外れの廃墟だ。元は孤児院だったらしいが、五年ほど前にそこは廃院となった。そんな所に本当にディアナがいるのか? あの辺りは治安はあまり良くないと聞く。とにかく無事に、早く彼女を見つけ出さなくては……。
そして、ジュリア・マグレガーの元へ行ったリチャードからの連絡はまだない。タチアナ嬢のあの指輪が外れさえすれば、話は早いのだが。
私は焦る気持ちを抑えつつ、馬車の窓から外を見た。
「それにしても……お二人は黒のローブが良くお似合いですねぇ。フフッ……お伽話の闇の騎士のようです」
何が楽しいのか、オーブリーは薄気味悪い笑みを浮かべてそんな事を言っている。それを聞いたギデオンは苛ついた様子で口を開いた。
「お前な、そろそろ黙れ。それでさっさとディアナの所へ連れてけよ。デタラメな場所ばっか連れ回しやがって……」
「なっ、今度こそは本当に本当に間違いありませんから! 高く買った情報は裏切りません。それに私だってポプラレスを探るのは命懸けなのですよ? 信じてください!」
オーブリーはそう言っておもむろに手帳を開き、ブツブツと独り言を続けた。
ギデオンはその様子を呆れ顔で見ていたが、今度は私に視線を向けた。
「殿下、こいつと二人きりになるの嫌だから俺を呼びましたね」
そう言って恨めしそうにしているギデオンの姿は、大人びた外見に反して子供っぽい。
「……そんなわけないだろ」
「だけど俺、ディアナを護衛するつもりが全然守れなかったし、役に立たなかったじゃないですか。殿下だってそう思ってるんでしょう?」
その当て付けにオーブリーの相手をさせていると? 私も流石にそこまで性格が悪くない。
「この件はディアナの事情を何も知らなかった私の責任だよ。それに、君を同行させたのは戦闘魔法に長けているからだ」
まあ、結果的にオーブリーの相手もしてくれて助かってはいるが。というのは言わないでおいた。
「そうですか……」
私の言葉を聞いて、彼の硬かった表情は少し和らいだ。彼はそれほど今回の件に責任を感じていたのだろう。
かつて孤児院だった廃墟は、思ったよりも老朽化が進んでいた。路地裏の目立たない場所にあるとは言え、なぜ取り壊しされないのか不思議でならない。
私とギデオンは点灯魔法で手元を照らし、軋む床を踏みしめながら足を進めた。ちなみにオーブリーは馬車に置いてきた。今のところ私達以外に人影は見当たらない。
「この先は二手に分かれている。私はこっちへ行くからギデオンは反対側を探してくれ」
「分かりました」
二手に分かれ、古びた廊下を進んで行った。
いくつも部屋があるが、今のところ人がいたような形跡はない。
オーブリーの情報は間違っていたのか……?
そう思って、歩いてきた廊下を引き返そうとした瞬間、不自然に後から付け加えられたような扉があった。しかも鍵がかかっている。もう使われていないはずだが……。
「怪しいな」
私は迷わず風魔法の呪文を唱えた。
するとその場に突風が起こった。私はそれを扉へ誘導し破壊した。
……これは確実に停学をくらうな。でも、それぐらい構わない。
扉の先は、石造りの階段が地下へと続いていた。流石にこの先は一人で入らない方がいいだろうとは思ったが、少し足を踏み入れてみるとそんな考えは頭の片隅に追いやられた。
階段を下った先で小さな物音がしている。間違いない。暗くてよく見えなかったが、誰かいる。そしてそれは、ゆっくりとこちらに近付いてきている。
私は息を潜めた。そしてその人影を確認した。
手元の光によって露わになったその人物を見て、私は思わず声を発した。
「ディアナ!」
そこにいたのは、紛れもなくディアナだった。
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