美桜ガラシアンとの別れ

「美桜、始めるよ。」


とボブさんの声がする。


さっきから1時間余り経つと

いうのにロザリーさんとボブさんは来たまんまで、止まった時間が

動き出したのだと

ハッとする。


やっと一息付けたのは昼を越して

2時になった時だった。


ボブさんとロザリーさんの間に

草を敷いて座りピクニック気分を満喫していた。



唐揚げとウインナーとハムタップリ

ポテトサラダを挟んだハンバーガ

お茶は、Appleティ‼


「お〜いしぃ(◍︎´꒳`◍︎)」


「美桜は思った事がよく分かるよ

ロザリーの手作りの飯食う時本当に

顔が緩むんだなハハハハ」


「食べ物、並べれば

凄く嬉しそうだよねホホホホ」


ロザリーも大きな口を開けて笑う。


「だって、本当に美味しいもん。

いつもŧ‹”ŧ‹”ありがとうゴックン

ございます。」


美桜は2人と美味しい食事を堪能しながら、蛇氏とのやり取りを思い出していた。


ああは、言われたけどここの誰とも

離れたくない。

もう家族みたいなものだ。

そう深く思っていた。


その夜・・・


「今日のご飯は何っ‼」


野菜の取り入れの終わった美桜が

ロザリーの背中にとびつく、


「まあまあまあ、それはお嬢様、

いゃ奥様のセリフなのに

スッカリ美桜に取られて

しまいましたね。」


その後ろからナタリーも


「ナニ、ナニ」


ナタリーも後ろから聞いてくる。


「今日はチキンスープ、牛肉のソテー

ヒヨコ草とジャガイモの芋餅

マメとマグロのサラダですよ。


あとはアンソニーのワインと

美桜は・・・ウフフ苺ミルク‼」


「ヤッター、ヤッター」


パンパン‼美桜とナタリーは

向かい合いハイタッチ‼


ロザリーは呆れ顔で


「もう、本当に親子でしょう。」

そう言って笑った。



丸いテーブルにシチューの

湯気が上がり4人は向かい合うように席に着く今日一日の事を話題に

食事が始まる。



「お義母様、お義母さま‼・・・


お義母様

ウウゥゥゥ・・・ウッウッお義母さ・・・ま」



その声を聞いたナタリーとロザリー

がハッと顔を見合わせた。


口いっぱいに芋餅をほうばっていた

美桜が


「アッ、ŧ‹”ŧ‹”私ゴクリ出ます。」



口をナプキンで拭きながら椅子を

立とうとした美桜がロザリーの

手で止められた。


「奥様あの声は・・・」


ピンときたナタリーは


「私が出るわ、あなた達は食べて

いなさい。」


三人が見送る中ドアを開けると

見るからに何処かのご令嬢と

分かる容姿の整った綺麗な女性が

ドアを開けるなり

ナタリーに雪崩落ちた。


「お、お義母様、おお義母💦💦

ウウゥゥゥ・・・ウッウッウッウッウッウッ」


「ソフィどうしたの?

何があったの?」


ソフィはナタリーにしがみついて

「お義母様、 殿下が殿下がー

クロード様がっ‼


お、お話は無かった事にと‼

い、言われぇーマシダーアッアッアッー」



4人はハモりながら叫んだ‼


「王は、ルイーズは知っているの?」


「分かりませんグスッグスッ

クロード様は好きな女性がっ‼

いらっしゃると


忘れられないお方だと・・・


大変可愛らしく愛らしいお方と


仰って

ウッウッウッウッ、グスングスン」



又4人でハモった。


「お名前を、どなたです?とお聞きし

ても・・・」


「ても?」


ロザリーとボブと美桜は顔を縦、順番に並べ興味シンシンに耳をたてていた。


「仰らないのですーウッウッウッウッウッウッ」


ナタリーがロザリーをチラチラ


ロザリーは😰ヤバイと思いボブに

目配せしてボブも😰と察しがついて、呑気に牛肉に被り付いた美桜の

両手にヒヨコ豆のサラダを持たせ


「口を離すなよ!牛肉が落ちるぞ‼」


ウンウンと頷く美桜を見ながら


シチュー鍋を片手で抱え美桜の首根っこを掴み、ロザリーのお尻で美桜を隠しながらバンガロー迄、そそくさと避難した。

バンガローに付いた途端


》」


とボブとロザリーの溜め息が静かな

庭に響いた。


美桜は不思議そうにしながらもŧ‹”ŧ‹”ŧ‹”ŧ‹”食事を再開した。


「私お茶を、お出ししてくるから。」


そう言って丸々した後ろ姿で室内に

入って行った。


ロザリーもボブも心配した通りになった、そう思いながらも口には出さず、何とも言えない重苦しさを感じていた。


フッと美桜を見ると


「おーいしいっ‼」


とニコニコしていた。

それにシチューのオカワリを

していた。


「ハアアアアァァァ‼」


ボブは呆れながらも美桜を見下ろした。



美桜が突然叫んだのでついボブもデカい声をだした。


「芋餅忘れたっ‼取って来ますっ‼」


と立ち上がろうとした美桜の頭をボブが押さえ付けて


「頼むからウロウロしないでくれ

じっとしてなさい。

芋餅は俺が取ってくるから

動くなよ!

いいか・・・動くなよ。

幾つ食うんだ?」


「5個ぉー」

と右手を開いて

5、5」と合図した。


後ろを振り返りながらボブさんは

キッチンの方へと入って行った。


じっとしろと言われたら

じっとしている美桜ではない。

ソロリ、ソロリと、参ろう


美桜は庭から部屋を覗いてみた。



色が白くて従順そうで凄く綺麗な

お姉さん系の美人だった。

ジロジロみていたら、お茶をいれているロザリーさんに見つかり


と叱られた。

そそくさとテーブルに戻る。


芋餅を抱え帰って来たボブさんに美桜は呆れながら言った。

「クロード様は、

あーんな綺麗な人の

何処が気に入らないの‼」


と聞いたらボブは目を大きく開いて


「美桜は呑気でいいね〜」


ボブは白髪混じりの頭を撫でた。


「ほんとに鈍感で羨ましいよ。」


熱い苺ミルクを手に持ちロザリーさんが帰ってきた。


「美桜は、殿下をどう思っている?」


ロザリーとボブは真剣な表情を見せたにも関わらず



「嫌い・・・

「エッ‼‎ ⊙⊙!! ๏ ๏」

では

ないですけど、口煩いし


だってホラ男と話す時は敬語じゃないと、勘違いされるぞ‼・・とか


スカート短い・・とか‼


友達と出かける時コッソリSPつけるし、

タンクトップは禁止・・とか

ナンチャラカンチャラ煩いし‼


オカンかい‼っうのっ﹏w」


ボブとロザリーはタジタジ


「ふ、ふううん!そうかい!」

ロザリーはボブの方を見た。


「の、ようだな‼」

2人は苦虫を噛み潰したような、難しい顔をしていた。


『ボブ、殿下は美桜が好きみたい

じゃないかい・・・💦』


『そのようだな!

ややこしい事にならなきゃ

いいが・・・💦』


『そうだね、奥様が

追い詰められなきゃいいけど・・・』


『ああ、殿下もまた、

思い切った事をなさる。』


『内乱が起きなきゃいいけど、』


『その時は旦那様が収めて

くれるサ』


『そうなればいいけど・・・💦』


急に2人は黙り込んで黙々と食事を

取っている。

美桜は2人の顔を見ながら横に不思議そうに首をゆっくり振った。


ボブとナタリーはテレパシーで話していることを美桜は知らなかった。


その夜の事だった。


「ケイン、ケイン、ケイン

待って、待って‼」


「シャロン、早くおいで

シャロン会いたい。」


「嘘、聞いているのよ

父が殿下は結婚されると・・・」


「結婚?・・・オレが?

シャロン、誕生日

おめでとう。

目を瞑ってごらん!

ほらよく似合って・・・るだろ‼

月の・・指輪・・だよ。」


白いモヤの中に、背の高い王族の姿をした男性が見える。

白いモヤが、オレンジ色に輝いてその光の影で顔が良く見えない。



待って、待って


“ガバッ‼“


ゆ、夢か‼

凄い寝汗をかいていた。



夢は少しずつ進んで今日は全身が

出て来た。


少し前迄は遠くに見えるだけで上半身はモヤに包まれていた。


シャロンは彼を泣きながら呼んでいた。そんなにいい男なのか?


あんなに恋しがっているのに

ケインの野郎﹏w許せん‼‼


そんなにいい男?シャロンも

どうかと思うよ!


会ってみたい、かってシャロンの愛した馬鹿野郎に、会って文句言う

夢の中のシャロンは、大人しく

従順で、お淑やかで素直‼


今の美桜とは大違い‼

自分の仇取るってのも何だけど

覚悟してろよ!w

シャロンの仇取ってくる‼


昼間に会った蛇氏の言葉が甦る。


「早くここから出なさい。

迷惑がかからないうちに・・・

戦が起きないうちに・・・」


「早く出なさいって何処へ」

一日、二日、三日過ぎていくうちに

ナタリーさんの顔が曇って来た、

スッカリ元気がなくなっている。


「悩みでもあるんですか?」

と聞いても


「なんでもないわ、

疲れちゃったかな。

大したことないのよ。」

と濁されてしまう。


そう言えば蛇氏が、

「あなたが居るだけで、争いが

おきます。」


ってたっけ、ホントかなぁ?

ソフィさんが来たのも、

ナタリーさんが家出した事・・も?


私のせい?


いやいやそれは違う、来た時ナタリーさんは家出していたし・・



迷惑かけるのかな?

迷惑かけた後で謝ってすむ事?


我が家みたいで長居しちゃった。

あーあ楽しかったナー‼




次の朝美桜は鏡の前にいた。

右手には、キラリバリカーン!

迷いを断ち切るには、これしか無い

ヴイイイイーン、ヴイイイイーン

真ん中から後ろへバッサバサー

バサッバサッ長い綺麗な黒髪が落ちる。


「ウワア﹏w落ち武者カット?

槍でもあれば完璧落ち武者‼」

少しずらすと


「ウワオーロング虎刈り!」

ヴイイイイーンヴイイイイーン

フィニッシュは、マルコ〇君参上


薄いTシャッとジーンズ履いて

キッチンへと向かう。


「おはようございます!」


「あら、美桜おはよう☀。」

「おお、美桜早いな!」

ロザリーさんは焼きたてのパンを

オーブンから取り出しながら挨拶を

返しパッと見て(○Д○)


ボブさんも新聞をめくりながらパッ

と見て(⊙⊙)なぬ‼お口、アングリ


ロザリーさんは我に返ると

ロザリーは絶叫した。


ロザリーの悲鳴にナタリーが

飛び出して来た‼



ボブさんはフガフガ指を指した

ままフガフガ



ナタリーは両手を頬に当て

タコチュウチュウ

そんな驚き目をみはる3人に

美桜はマルコメカットのまま説明する。


美桜は目が覚めて

記憶を取り戻しました、

人を探さなければなりません。


お世話になっていながら

申し訳ありません暫くお暇をください。



綺麗に背をただしピシッと正座をし

木刀を、右に寝かせて姿勢をピッ

として一礼をした。



以前の大食らいの甘えた美桜の

姿はなく1人前の剣術者の様だった。


3人にんは、ポッカーンとして

美桜の話を聞いていた。


ラナもメリーも少し大きくなった

体を美桜に擦り寄せて来る。


美桜は二匹の体を抱き寄せながら


「ラナ、メリー元気でね。

又帰って来るから・・忘れグスンないで‼」


二匹のの頬にチュッ、チュッとキス

をする。二匹も応えるように

ベロンベロンベロ〜ン!

又二匹を抱きしめ別れを惜しんだ。



美桜の姿から固い決心を感じた

ナタリーは、急な申し出にも関わらず

必ず帰ることを条件に、送り出す事を承知した。


山羊達の最後の世話を終えるとSP

に不思議がられながら少年は

ミシェル邸を後にした。


たった2ヶ月の滞在ではあったが

優しく人とはこうあるべきだと

学ぶ良い経験だった。




後ろを見ればロザリーさんが息を切らせ豊満な胸をユッサユッサと揺らしながら追いかけて来る。


暫くつつ立っていると


「ハイ‼お弁当だよ。これハアハアは、奥様から

それに、丸坊主にしても胸があれば

女の子だよ。」


そう言うとロザリーさんの腰痛用の

腰巻をTシャッの下からグルグル

巻いてくれた。


「薄布で伸縮性があるから

巻いていなさい。


こっちは洗い替えだからね

持って行きなさい。


決して危ない事はするんじゃないよ!

気を付けるんだよ。」


ナタリーさんからは大層な金額を

頂いた。スマホも用意してくれたけど

これはこっそりロザリーさんの

エプロンに返しておいた。

これ以上甘えたら前に進めない!


ロザリーさんを迎えに来たボブさんは


「待ってるよ、美桜」

と頭をゴシゴシ撫でてくれた。


2人に最後の別れをして美桜は歩き出した。


2人は美桜を見えなくなる迄手を振って見送った。


そして美桜の姿が見えなくなると


「行ってしまったわねボブ。

ウッウッウッウッ」


ロザリーはエプロンで顔を

押さえながら丸い体を曲げ声を出して泣いた。


膝から崩れ落ちたロザリーをボブが支えひざまずいた。


「美桜は記憶を取り戻したと言っていたろう、俺達には言えないよっぽどのことさ、それに帰って来ると言っていたじゃないか、


約束は守るよ、美桜なら・・・

待っていよう、な、な、」


ロザリーは肩を撫でるボブに抱きついて

「私達に言えない事ってウッウッウッウッ

みずくさいウッウッウッウッウッウッ」



「だから、何かあるんだよ。

美桜はそんな薄情な娘じゃないさ

俺達が1番分かっているだろ‼」


ロザリーはワンワン泣きながら

美桜の前では見せなかった涙を

流した。親子の別れ、家族の別れ

そんな涙を流していた。


ボブはそんなロザリーの広い背中を

撫でながら慰めつづけた、


「だって、だって急に寂しいじゃ

ないかーあああぁぁぁ」



ロザリーの泣き声は切なく山畑に

木霊したボブも大切な娘を手放したようで、胸を抑え込むような悲しみに襲われていた。

ボブも寂しいのは同じだ、

ただロザリーの泣き崩れる姿に

沿うのがやっとだった。


優しく背中を撫でながら

拳を握り唇を噛んで涙を止めた。


「悲しい時泣けるのは女の

特権だな‼羨ましいよ。」


男は泣くもんじゃない!

幼少の頃から

母親から厳しく言われ続けた。


ならなぜ神は男にも

涙をたまわせたのか?


体を丸め泣きぐずれるロザリーは

ボブの分まで泣いてくれている

かの様だった。





美桜も高い丘の上からガラシアン

を見ていた。

町、山、畑、村のすみずみ

後から後から飛び出す涙を両手で

ゴシゴシ拭く。


さよならガラシアン!楽しかった

ハイジ生活、泣くのは今限り‼









美桜の居ない寂しい1週間が過ぎた

ミシェル邸は犬の声とヤギの声が

聞こえるだけになった。

朝が来て夜が来る。


そんなある日


上下紺のスーツにワインカラー

のネクタイをしめ、

フリージアの花束を100本抱え

バシッと決めたクロードが

やって来た。



ザブラルグルブでは自分の好きな花を抱えプロポーズする習わしがある。

少し緊張気味なクロードは

ドアを開ける。


「美桜、いるかい?」


クロードの突然の成立ちにナタリー

は驚いたが重い口を開いた。


「美桜は・・・


もういないのよ。

記憶を取り戻し里へと

帰ってしまった。」

何時ものハツラツとした母親の

姿はなく少し歳を取ったようなナタリーの姿があった。





それを聞いたクロードが

里は何処だと詰め寄った。

本当に知らないので

返事のしょうが無かった。


クロードは怒り悲しみフリージアの

花を力いっぱい床に叩き付けた。


フリージアの甘い香りと花びらが

そこら一帯に散らばった。


悲しみとはかけ離れふんわりと広がるフリージアの香りは余計悲しく

美桜を思い出させた!


クロードは何も言わず、ポケットの小さな箱を握りしめていた。


唇をきつくかんで静かに出て行った。


そんな息子の姿を眺めながら

王妃としてホッとしたような

母親として息子を思い

可哀想な虚しい気持ちが過ぎる。


美桜がいなかった少し前に戻った

だけだと言い聞かせフリージア

の花弁を一枚一枚かたずける。



美桜を行かせたことを半分悔いながらも、クロードの王太子の身分をかんがえながら・・・

ナタリーはやるせなかった。


辛い選択は天に任せるしかない、

どうにもならない事なのだから・・・


ナタリーの目に潤んだ涙が

今にも零れ落ちそうだった。









































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