第22話
「くそっ……イルスー!居ないのかー!?」
俺は大きな声でイルスを呼ぶが、返事は帰ってこない。
「ルーラ様、恐らくマスターは……」
隣でシルヴァが既に亡くなっている可能性が高いとか言っているが、そんなの知ったことか!!
「くそっ!どうして……どうしてこんなことになったんだよ!!」
振り絞って出した声は小さく、誰かに届くこともなく風に乗って消えていく。
視界が滲みそうになりながら顔を上げた先には、荒野と化した街が広がっていた。
●〇●〇●
話はルーラがシルヴァと合流したところまで遡る。
「ふう、相変わらず吸血鬼はタフなのね」
表面上こそ余裕を見せている私だが、全力のブルサンダーを3回当てたのに未だ立っているマロンを見て、内心冷や汗をかいていた。
既にマロンとの戦いが始まって数十分。ブルサンダーを3回撃ったことを考えると、そろそろ魔力残量を気にしなくてはいけない所まで来ている。
何とか魔力切れになる前に決着を付けたいんだけど……。
「危なっ!」
私がそんなことを考えていると、いつの間にかマロンの仕掛けた罠を踏んでしまったらしい。
足元から無数の血の針が飛び出してきて、私を狙って突き刺してくる。
「本っ当に厄介ね!」
血の針を何とか防ぐことに成功した私は、そのままの勢いで地面に向かってエアブレスの魔法を発動する!
エアブレスはその名の通り風の息吹を発動させる魔法。普段使いなら、相手の魔法のスピードを遅くして威力を半減させたりするのに使うのだが、今回はこれを無理やり罠を作動させるのに使う。
「うそっ……こんなに仕掛けられていたの?」
エアブレスによって作動した罠はざっと8個。私が気づかないうちに沢山仕掛けられていたらしい。
「もしかしたら、まだ罠もあるかも……」
私が警戒しながら罠を探っていると、その隙を狙ってマロンが攻撃をしてくる。
「くっ!本当に鬱陶しい……」
私は杖を構えると、魔法陣を生成して魔法を発動する。
「フレイムサンダー!!」
ドゴォン!という音が響くと同時に、魔法陣から一迅の炎を纏った雷が飛び出してくる。
それは、マロン目掛けて飛んだかと思うと、目の前で爆発して周囲に炎を撒き散らす。
「どうよ!私の魔法で2番目の威力を誇る魔法は!!」
私はそう言い残すとドサッとそのまま地面に倒れる。
「あっ……さすがに無理しすぎちゃった」
威力はブルサンダーと比べると少し低いが、対軍を想定したフレイムサンダーは魔力消費が激しい。元々、ブルサンダーを3回撃った時点で残りの魔力は20%を切っていた。
そこに魔力消費が一番激しいフレイムサンダーを撃ったのだから、残りの魔力はスッカラカンになるのも当然だ。
「流石にこれで倒れてくれないと私もきついんだけど」
杖術でも少しは戦えるが、私は魔法使い。普段の戦闘を魔法で済ましてしまっているため、体力が低い。
更にここから長期戦になれば100%勝ち目はないだろう。
お願いします、もう倒れてくださいと私が心で祈っていると、フレイムサンダーで立ち上がった砂埃の中でマロンが立ち上がるのが見えた。
「嘘でしょ……」
流石にマロンも無傷とは行かなかったようで、立っているのもギリギリのように見えるが、その目は私をしっかりと捉えていた。
「この、化け物……っ!」
杖を使って起き上がると、私は杖を構える。
先手必勝。マロンが私を攻撃する前に倒すべく、杖を構えながら突進する。
「やぁぁあああああ!!!!くら……え?」
杖を振りかざしてマロンに当てようとした時、私はあることに気づいた。
砂埃の中で立っているマロン。目は開いているし血も流れている。何時私に襲いかかってもおかしくないほど威圧感も放っているマロンだったが──
──彼女は死んでいた。
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