第7話 急上昇

 YouTubeを始めてから3ヶ月は経っただろうか?児嶋のクオリティは底知らず。アニ声からアニソン、定番の大御所芸人など、全てが似ている。軒並み登録者数も再生回数も伸びていく。

 加藤は言いにくそうに児嶋に言った。

「児嶋さんてYouTubeの収入で食っていけますよね。」

 俺もそれは思っていた。もし辞めると言われてもしょうがないと腹をくくっていた。

 児嶋はゆっくり口を開いた。

「あっ今言われて気づきました。」

照れくさそうに続けた。

「確かにそうかもしれないです。100万の収入が自分に入ってくる。でも、ここまでやれたのは2人のおかげです。1人では絶対に無理でした。だから、これからもこの会社の為にやりたい。」

 涙が止まらなかった。当初は人と話せなく、目標もなかった児嶋がめっちゃ輝いていた。やる気さえあればなんだってできるんだな。改めて思った。

 YouTubeの収入もあり、プラス収支になっていた。児嶋もいつのまにかイッパシのユーチューバー。登録者も10万人を越えていた。そんな児嶋が撮影中リスナーに問いかけた。

 「今、この撮影ってさ、仕事中に撮ってるんだよね。うちの会社さ資本金10億あるのに従業員3人とかやばくない?笑 しかもみんな元々ニートだし。仕事の内容も自分達で決めてるんだよ。大変だけどね。でも、この会社入って少なからず俺は変わったよ。ずっと殻に閉じこもってたけど、今はこの会社を大きくしたいし、前向きに生きたい。だから同じように一歩踏み出せずにいる人、うちの会社に来てみなよ。3人しかいないけどね笑

待ってるよー。社長、加藤さんも写って!」

 加藤と肩を組みながら写った!

「みんなまってるよー!」

 明くる日。面接したいとの問い合わせがたくさんあった。数えてみると、20人いた。

ヤバ!面接する前からまた全員採用しようと思ってるけど、さすがに集団面接はきつい。午前と午後で10人ずつ分ける事にした。

 まずは、午前の部。元アパレル系だったり、専門学生で就職決まってない子とか色んな子がいたけど決まって言えるのはみんなニート。うん期待通り。

 次は午後の部。同じような子達ばかりだが気になったのは、元不動産営業の黒岩。宅建の資格ももっている。なぜ前職辞めたのかを聞いてみると黒岩はこう言った。

「ビル一棟売れるかもしれない大チャンスがありました。収支のシミュレーションや、商談の準備を毎日夜中までやっていました。決まれば億単位の利益がうちの会社に入ります。いざ商談して手応えがありました。会社に戻ると、事務所内が散らかっていました。社長、副社長が横領してガサが入って。当然全てがなしになりました。そこから燃え尽き症候群というか、誰も信じれなくなって。でも、動画を見てもう一度前を向こうとおもいました。」

YouTube撮ってよかったわ。涙腺ゆるくなるわでとりあえず全員採用。さて、1つだけ気がかりが……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る