第4話 希望の未来

 面接日まで残り3日。事務所に大介と机や椅子などを搬入した。仕事が忙しい中手伝ってくれた。泣けるぜ!

 「いよいよ後3日だね!いい人材がくるといいね。」続けて不思議そうに質問してきた。

 「そういえば資本金いくらにしたの?」

 俺は何も考えずすぐ答えた。

       「10億。」

大介は戸惑い、動揺していた。そして、俺はこう続けた。

 「だって、資本金はあればあるだけいんだろ?安心して皆さん働けますね。何するか決まってないけど!」

大介は笑った。

「金そんなにあったのかぁ。まぁお前の本気度はわかったぁ。なんか困ったら連絡して!金以外の話しならきくから。」大介は自分の会社へと戻って行った。

 そもそも大介がいなかったら、部屋を借りれなかったかもしれない。会社自体立ち上げれなかったかもしれない。ほんとに感謝しかない。やるぞ!出来れば10人メンバーが欲しい。選んでる余裕なんてない。

 面接当日。事務所へと向かった。求人の最後の方に返信とかいらないのでやる気のある方そのまま来てくださいと書いた。だから、今日何人来るか…不安で仕方ない。

 面接時間になると事務所前に人が並んでいる。結構な人数がいる。全員男だ…。1.2.3.4.5数えてみるとちょうど10人。よし、全員とろう。集団面接にしよう。急いでパイプ椅子10人分並べた。ちょうど10人分しかなかったからよかったぁ。

 「皆さんこんにちは!中へどうぞ!」

 いつもより声を張りながら笑顔でいった。第一印象大事だからな。

 「今日は忙しい所足を運んでいただきありがとうございます。履歴書集めます。」

 10人分の履歴書をもらいさっと目を通す。

やっぱりという言い方は失礼かもしれないが、半年以上休職しているのが大半だった。

 まぁ採用するのは決まってるけどね。よし、始めるか。

 「まずは改めましてこんにちは。簡単に自己紹介を致します。社長の後藤と申します。この会社を立ち上げる前は派遣社員をしていました。特技は人と分け隔てなく話せることかな?よろしく!」みんなの顔を見ながら、

「こんな感じで簡単に自己紹介してもらっていいですか?」

 結論からいうとグダグタだった。ボソボソ言って何を言ってるかわからない。その中でも印象に残ったのは3人。1人目は加藤。男。24歳。ちょいイケメン。まわりから比べれば少し話せる。前職は俺と同じで派遣の製造業だったらしい。

 2人目は児島。男。ぽっちゃりの27歳。明らかに俺よりも年上に見えるんだが…特技はパソコンらしく、前職は清掃員。俺はパソコンできないから本当に欲しい人材…。が、ボソボソ言って何を言ってるかわからない。アニメ好きそうだなと偏見だけど聞いてみたら、

  「アニメと言ってもいっぱいありますからね。やっぱりですね。美少女系ですね。美少女系と言ってもですね…」

 ビンゴだったようで10分ぐらい1人で話してた。めちゃくちゃハキハキ話せてたよ。

 3人目はね、名前すら覚えてないんだよね。

名前だけ言って止まってたから、

    「特技はあるの?」

ってきいたら、

      「別に…」

あれって直接言われたの初めてだけど、ほんといらっとくるね。中山さんの気持ちがわかったわ。この子は俺の中では別に少年って呼んでる。

 皆の自己紹介が終わった。俺はこう伝えた。

 「ありがとうございます。実をいうと皆さん全員を採用しようと思ってます。もしかしたら、この中には久しぶりに外に出たよとか人と話したよなんていう人がいるかもしれません。それでも、この求人を見て一歩踏み出して来てくれた勇気に感謝してます。その勇気に僕も応えたい。何も決まってない真っさらな会社です。あっ会社名は決まってます。 

  future of hopeカンパニーです。まさかの横文字…。意味は希望の未来。僕自身過去にすがってきました。いい事も悪いことも。

でも、これからは失敗した過去も恐れず、逆に糧として未来に進もうと思ってます。

その為に皆さんの力が必要です。力を貸して下さい。お願いします。」


1人の少年が立ち上がった。別に少年だった。

 「あのぅ今日交通費でます?もう帰りたいんですけど。」  

俺は久々動揺した。嘘でしょ?今めっちゃいいとこでしょ。やろうぜ!みんなとかなるとこでしょ?俺は辿々しく聞いた。

 「えっ!?帰るって。働かないって事?」

すかさず別に少年は言った。

 「そっすね。」

  呆れながら俺は言った。

 「交通費は渡しますね。せっかく勇気をだして来たのにまた殻に閉じこもるの?」

別に少年は帰って行った。交通費を握り締めて。少年に続いて2人退席した。結局会社の方針を決めるまえに3人居なくなってしまった。

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