03
受付で事情を話せばすんなりと中へ案内され、オフィスへと招かれた。そのまま声をかけてくれると、デスクについていた男性の一人が顔を上げる。
「俺が片桐だが……君は?」
「っ……あ、成宮っす。ええと、片桐湊君のクラスメイトで……プリント持ってきました」
入口に佇んだままの仁のもとへ歩み寄ってきたその男性――片桐は、長身で大柄、無精ひげが特徴的で、いくら図太い仁でも気圧されて一瞬言葉に詰まった。
差し出した茶封筒を受け取った男性は「ありがとな」と言って、それにしてもと続けた。
「前回は先生が持ってきてくれたと聞いてたんだが」
「あー……」
なるほど、と思う。恐らくこの雰囲気に圧され負けて、来るのが怖くなったというオチだろう。何とも、あの弱気な担任らしい。
「センセーも忙しいらしくて、級長のオレが頼まれたんす」
ごまかして言えば、片桐は興味をなくしたように「そうか」とだけ返した。
その間、じっと片桐を見上げて仁は考え込む。どこかで見覚えがある気もするし、ない気もする。
「あの……ここって結局何するとこなんすか? 説明なしに場所だけ言われたもんで」
「って、知らずに来たのか? ここは警視庁の捜査一課だ」
「警察!? ……ああ、だから」
納得した。担任が尻込みしたのはこの場の雰囲気だけでなく、この肩書きもあってのことだろう。安易に一般人が入っていい空間でないのは確かだ。
それに仁としても、彼が警察だというなら知っていても知らなくても、どちらにしても不思議はない。生まれてこの方十二年、どれだけの事件事故に巻き込まれたか。おかげで警察関係の人間とはそれなりに幅広く「お知り合い」だ。
強面でも気のいいオジサンは多い。そういう部分を知っていなければとっつきにくいのも分かる。
「じゃあ、確かに渡したんで。オレはこれで」
なるほど、これではこの先も“片桐湊”関連のことは自分が来る羽目になりそうだ、と、仁は直感的に思った。
「やだなぁ……オレもヒマなわけじゃねぇんだけど」
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