02
渡された地図の通りにその場所を訪れると、見上げるだけでひっくり返りそうに大きなビルだった。そもそも敷地が広い。何だここは。家、というわけではなさそうだが。
「こっから捜せってか……」
与えられた情報は、地図でこの場所が分かったのと、片桐という名だけだ。親なり保護者なりの職場、といったところだろうか。
どうすんだよ、と呟いてビルを見上げていると、中から出て来た一人の男性が仁に気付いた。
「君、ここに何か用かい?」
「え? ああ、ハイ。片桐って人に」
「片桐?」
歩み寄ってくる男性の問いに返し、体ごと向き直る。
「あー……ちょっと待ってな。居るかなあいつ」
言って男性はスマートフォンを取り出した。どうやら連絡を取ってくれる様子だ。
少し画面を操作してから耳に当てる。
「もしもし、鑑識の福井……あ、片桐。良かった、まだ出てなかったんだな。出るのちょっと待て。お前に客。そー、客。なんか中学生。……知らねーよ。ちゃんと会ってやれよ。じゃあな」
一通り話をした後で電話を切り、男性は仁に笑いかけた。
「ここの一課ってとこに行ってみな。珍しく居るみたいだから」
そう言う彼に礼を言いながら、仁は心の中で「珍しいのかよ」と突っ込みを入れずにはいられなかった。もし居なかったらどうすれば良かったんだとここには居ない担任にも突っ込みを入れる。
去っていく男性を見送って、ビルの中に入った。
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