中学生

クラスメイト

01

 中学に上がり一学期も半分以上が過ぎた頃、担任教師に渡されたのは何が入っているのか分厚くなった茶封筒と、一枚の地図だった。

「何すか、これ?」

「この地図の場所に行って、片桐かたぎりという人に渡して欲しいんだ。学校のことだって言えば分かると思うから」

「片桐ィ?」

 名前は聞き覚えがある。入学してこの方、一度も教室はおろか、学校にも顔を出したことのないクラスメイトだ。ということは茶封筒の中身はプリント類だろうか。こんなに溜まるほど、その片桐という生徒に会っていないのだろうか。呆れた担任だ。

 そもそもなぜ学生に頼むのか。自分が行って学校に通うように言うべきなのではないだろうか。

 思うところは多々あるが、当の教師の顔は青ざめて切羽詰っているようでもあって強く言おうとも出来ない。

「何でオレなんすか?」

「学級幹事だろ……頼むよ……」

 困り果てたような様子に、はぁ、と許諾ともため息とも取れる声だけをこぼす。

 幹事には、別になりたくてなったわけではない。一学期のクラス役員は成績順で決められた。仁はクラス内で二位だったのだが、成績一位がなる幹事に仁が選ばれたのは、一位が登校しないからだ。

 つまりまだ顔も見たことがないクラスメイト――片桐みなとが、本来ならばこの肩書きを持つ筈だった。

 考えれば考えるほど気に入らない。まず、学校に来い。そして押し付けられた幹事を代わってくれ。

「じゃあ……放課後、行ってきまーす……」

 今日は久々に早く帰ってくる筈の父に音楽指導をしてもらう予定だったのに。次がいつになるか分からないが、頼まれては仕方ない。

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