02
三人組の見知らぬ男に連れられて辿り着いたのは、まるで保育施設のように広く遊び場の充実した部屋だった。ただ窓はなく、扉は今しがた入って来たそこひとつだけ。
幼い仁には分からなかったが、そこは一見すると普通の一軒家でしかない建物の地下室だった。地上の敷地よりも広く取られたその場所は、遊具や玩具で誤魔化されてはいるものの、剥き出しの壁や床には何かが置かれていたと思われる黒い染みがいくつもあった。部屋の五分の一ほどには床にクッション材が敷かれてあり、その片隅に子供用と思われる布団も積み上がっている。
そこでは、十数人の子供たちがそれぞれに楽しそうな様相で過ごしていた。子供たちは皆一様に、仁と同じか近い年頃の幼い者たちだ。
「お前も遊んでおいで」
「……!」
言われて、ぱあっと表情を輝かせた仁は、張り切って他の子供たちの中に混ざりに行く。この場所に来る前に寄った部屋で着替えさせられて不機嫌だったことなど、もうすっかり彼の頭には無かった。
「こんなもんだろ」
子供たちを見ながら、男のうちの一人が不愉快そうに片耳を手で覆う。
「よくこんな話引き受けたな。お前、ガキ嫌いだろ」
「金払いが良かったんだよ」
「しっかし五歳以下の子供だけ集めろとは……どんな趣味してんだか」
皆遊びに夢中で大人の話なんて聞いていない子供ばかりだからか、三人はそれぞれに言う。
「ここ、元々廃墟だったらしいぜ。地下だけ広いとか、どんな隠密組織が使ってたんだか」
「それを見付けて買ったってこともヤバいと思うけどな」
ただの雇われ誘拐犯。彼らだけ捕まっても、決して根本的解決にはならないということ。それを、今ここに居る者の中では当の大人三人しか知らないのだ。
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