拝啓 知らない世界を見る君へ

水澤シン

就学前

初めての事件

01

──やがて「巻き込まれ体質」なんて不本意な言い方をされる俺が生まれて初めて事件に巻き込まれたのは、二歳の終わり頃だった。




 * * *




 休日も朝から元気よく公園で遊ぶ幼いかの少年の名は、成宮なりみやじん。三歳の誕生日を間近に控えた初夏のことだった。

  談笑する母とママ友たちから見える公園内で、他の子供たちと一緒に走り回るのは日課だ。外で遊ぶ子供たちが減ってきている今日この頃でも、全く居ないわけではない。

  思わぬ方向へと転がったボールを彼が追いかけるのも、そう珍しい光景というわけではなかった。

「仁ちゃ〜ん、車に気を付けてね〜」

  穏やかな声で言う母の声を背に、車道手前で止まっていたボールを拾い上げた仁は、すぐ近くに人の気配を感じて顔を上げる。


  てん、てん……とまた転がったボールを拾う手は無く、次に母が目を向けた時にはもう、仁の姿は公園のどこにも無かった。

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