第14話 決戦 越赤峠

...深夜11時...

...サーリン達4人ははシュリナの案内により隠れ道の前へ到着する...

「龍さんは?まだ来ない?」

九重が首を傾げて聞く...

「燃料入れたら帰ってくるって言ってたのに...一応場所は伝えたわ...」

サーリンが困ってる様子で答えた...

「い...一応 入ってみましょう」

マリナスが怯えながらも話す...

4人は隠れ道に入ったら...

中は車1台分通れる広さの道 奥には不気味な廃屋 そしてあのグレートのタンクローリーが止まっている...

「音を立てないで...近くに何かいる...」

サーリンは静かに言った...


...その時...


~流す涙を隠す様に わざと傘もささず...~

何やら音楽が遠くから聞こえてくる...

...ズドドドドドドッ...ヒュルヒュルヒュル....ズドドドドドドドド...

聞きなれた排気音がアスファルトを響かせて近づいてくる...

「龍ちゃん!!もっと静かに来れないの?もうッ...」

レミーナは困った様に言った

オマケに左折警報音も聞こえてきた...

廃屋にいる何かが目を覚ましたようだ...

龍一郎が修復されたテラヴィでやってきた...

五人の姿を見つけると軽くラッパチャージし テラヴィのダンプを止めた...

龍一郎はドアを開けステップから飛び降りる

廃屋のドアが乱暴に開かれた...

「誰だい?!私の睡眠を邪魔する野蛮な者は...お前か...3年前よくもやりやがったな...仇は付けてもらう 覚悟しな!!」

謎の女が口を開け話すと辺りに血腥い匂いが充満した...よく見ればとんがった八重歯が月光に照らされ赤く妖しく光る...

「な~んだよあれはな!!お前が押したあの4トンダンプ乗ってたやつがやったんだぜ?俺はただ残骸を運んだだけさ 矢場ちゃんとか一番関係ないぞ?復讐も大概にしやがれ!!」

龍一郎も負けじに怒鳴りつける

「そんなの知らないわ とにかく邪魔した者は私が満足するまでたっぷりと殺らせて貰うね!!」

「知らんって...俺今言ったやっか!!」

龍一郎は嘲笑った「お前さん まずは血を吸う前に言語を勉強して来な!!話が通じないぜ!!」

謎の女は激怒した 龍一郎へ飛び掛かる...

龍一郎はダンプのドアで間一髪防ぐ...

「すげぇ...ドアで防げるって...」

だか謎の女は懲りないようだ...

龍一郎は言った

「お前さんよく下り坂走ってるんじゃないの?こうしよう!!俺とワッパ勝負や!!お前が勝ったら俺達と矢場ちゃんを好きにせぇ!!焼くなり揚げるなり構わん!!俺が勝ったらこの件は無いことにする どうだ?来るか?」

「ふん!!私が負けるとても?!」

「ちょっと!!龍ちゃん!?」

「大丈夫って 俺を信じてくれ 俺はサーリンの大事な下僕...だっけ?...負ける訳がないよ!!」

「無理...しないでください...」

「きっと大丈夫よ!!がんばれがんばれ!!」

そんな声援も受けながら龍一郎は言った

「勝負や ところでお前さん 名乗ってないな 名はなんという?俺はダンプ乗りの近藤龍一郎だ!!」

「私はアースクレイ ヴァンパイアよ」

「アースクレイと言うんだな ようし覚えた 深夜一時 先に出口に着いた方が勝ちや!!」

「わかったわ 素直に負けて私が満足するまでたっぷりと痛めつけてあげるわ...覚悟しなさい!!」

「あいよ!!そっちこそついてこれるか?!」

「当たり前よ!!」

...龍一郎は始まるまでそのグレートを見ていた...

いつの間にかレミーナが横に来ていた...

「大丈夫...なの?龍ちゃん...あたし凄く心配...」

「大丈夫さ レミーナ 」

「見てみぃ これノンターボの六気筒じゃねぇか!!こっちゃV8や!!パワーが違うぞパワーが!!」

龍一郎は鼻で笑いながら余裕の素振りを見せたが 内心ではかなり追い詰められた...

...これで負けたらみんな終わりや...

...アースクレイはグレートの排油口をまた開けた...

中なら血が流れ出る...

アースクレイはそれを残さず飲み干し シュリナを見て言った...

「あんた 吸わないの?」

「わ...わ...わたし?い...いいわよ別に...」

「変なヴァンパイアね 普通なら強請って私の足元で土下座までするの」

「そ...」

シュリナは言葉を失った...


...やがて深夜の一時まで5分前をまわった...

...細い峠道に トラックが二台横並びに泊まる...

...龍一郎は荷台埋め込みのマーカーやプロテクター バイザーに電飾を灯し バンパーの行燈を着けた...

...カーラジオの時計で カウントダウンが始まる...

3...2...1!!

二台のトラックは走り出す...

発進はテラヴィが速かったが 前二軸のグレートにコーナーで負けていた...

テラヴィはブロックをかける...

...だかそれを読んでたかのようにグレートがすかさず隙をつく...

...それを行かせまいとテラヴィは幅寄せしたが アースクレイはトラック野郎とは違って グレートをテラヴィに衝突させた...

...龍一郎の耳にマーカーが割れる音が響いた...

...次は 左カーブ 俺が有利や...

龍一郎は体当たりにも耐え 少し引き離す...

...だか次は右カーブだ...

グレートが一気に詰めてくる...

龍一郎は幅寄せしようとするがグレートがあまりにも速かった...

...ゴスッ...

鈍い音が山全体に響いた...

龍一郎はブレーキを踏み アースクレイを先に行かてしまった...

...ガリガリガリ...

タンク本体とミラーステーが激しく擦り合い 火花が散りゆく...

「ちきしょうありゃ特注品だったのに...」

テラヴィは更に加速し グレートのリアバンパーを押す...

行燈が割れ バンパーも変形する...

グレートは蛇行し 行く手を塞いだ...

二台は激しくしのぎを削った...

正確には車体を削っての闘いだ...

次の左ヘアピン テラヴィは加速し曲がる瞬間グレートの左後方を押す...

グレートのリアタイヤから白煙が上がる...

テラヴィはガードレールを擦りながら火花を散らす...

排気ブレーキ音にスキール音が激しく響き渡る...

隙をついてテラヴィはまたもや前へ出る...

グレートが体当たりする...

テラヴィも怯まず当て返す...

グレートはテラヴィを土手の方へ幅寄せする...

テラヴィは土手に乗り上げながらなんとか堪えた...

戻る時に車体が跳ね バネが割れた...

車体が不安定になる...

...龍一郎は早く決着をつけないと車が持たないと考え 更にアクセルを踏み込む...

次の左コーナーはテラヴィがイン側だ...

グレートを壁にし 土手に乗り上げ追い越す...

しばらく直線が続き 鉄橋を渡った...

次は...あの4トンダンプが押され...転落したコーナーだ...

テラヴィが減速するがグレートがその後ろを押す...

急ブレーキを踏み タイヤがロックする...

その勢いで車体が左側へスライドする形になる...

グレートは押し続け 赤錆だらけの車体に火花が舞い散る...

テラヴィは一瞬片輪走行になりかける...

それを見測ったグレートはやっとブレーキを踏み 次のコーナーで仕掛ける準備をした

テラヴィは曲がる瞬間 グレートがまたもや外側へ押す たが次の瞬間テラヴィは持ち直した

サイドブレーキでなんとか姿勢を保った...

グレートがまだ仕掛けるかもしれない...

テラヴィは出来るだけ速く走った...

グレートも負けじに後を追う...

次のコーナーにさしかかる...

グレートが勝負に出た...押した衝撃で隙間が開き...上手く入ったのだ...

テラヴィはリードされ グレートを押す...

次はの右Uターンで テラヴィはチャンスを見つける...

グレートがコーナーに入るとテラヴィは無理やりショートカットしたのだ...

運転台同士が激しくぶつかり合う...

グレートはその衝撃でカーブミラーに激突する...大幅に減速してしまった...

出口では 5人待っていた...

やがて最後の直線下り坂 無残な姿のテラヴィが姿を現した...

バイザーはひん曲がりミラーステーが折れ曲がっている...行燈が割れバンパーは変形していた...

その僅か20メートル後ろからグレートが走ってくる...バンパーを引きずり カーブミラーの破片がフロントガラスに突き刺さる...

龍一郎が 勝負に勝った...

ダンプを降りる...

アースクレイもタンクローリーから降りる...悔しそうだか納得もしているようだ...

「もう あなた方から手を引くわ 私の負けね...」

「いいさ...いい勝負だった 次は体当たりせずにワッパ勝負や!!強くなってまたこの越赤峠下りで走るぞ!!」

「そうね...ありがとう...」

か細い声でそういうとアースクレイはグレートに乗り込み 瞬く間に夜街へ消え去った...


5人が龍一郎に泣きながら抱きついた...

「心配かけないでよ!!でも...無事でよかった...」

「す...すみません...でも なんとか...」


しばらくして 5人はテラヴィに乗り込み 旧道へ走る...


新たなスタートだ...


続く...

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