第7話 近藤龍一郎 人間として死す

...いつか北風も雪に変わるその瞬間 薄暗い国道で見え隠れする月光...

ヘッドライトがアスファルトを照らす...

軋むタイヤに薄汚れするその車体...

...また今日も龍一郎は2人を乗せ 仕事を終えた...

「ねぇ龍ちゃん?今日は私の下僕と合っていかない?」

「いいね~旧道へ回らないと...その前に市内のスーパーに寄って食料買ってくるよ」

「あたし達も行っていい?」

「おういいぞ!!手が出せる分ならなんでも買っちゃる!!」

「わ~!!ありがとう!!」

...そんな話が車内に響いた...

龍一郎はスーパーへ向かう為いつもは走らない道へテラヴィを走らせる...

...その時...

道の右にパチンコ屋の大きな看板が見えた...

道の左には駐車場 出口には一台のハイブリッド車...

龍一郎は何も考えずに前へ走る...

ハイブリッド車内では

「お父さん車きたから止まってね!」

「はいよ...」

中年男性と高齢者男性の声がするようだ...

だかハイブリッド車は急発進をした!!

ペダル踏み間違えだ...

「お父さんブレーキ!!ブレーキ!!」

目の前には大型ダンプが迫る...

龍一郎も急ブレーキをかける...だかABSが無い為車体は右へ大きく傾き ハイブリッド車と衝突した...

その直後制御不能になったダンプはそのままパチンコ屋の看板へ激突した...

龍一郎は運転台に挟まれた...

辺り一面 ガソリンの匂いが充満した...

ハイブリッド車から漏れだしたのだろうか...

事故現場付近で多くの野次馬が集まっていた

写真や動画を撮影しSNSに掲載でもするのだろうか

龍一郎はまたレミーナとサーリンに声にならない声で言った...

「俺はどうでもいい...あの親子を安全な場所に連れて行ってくれ...炎上する...」

「で...でも!!龍ちゃん!!」

「いいんだ!!早く!!」

...その瞬間ハイブリッド車走行用バッテリーがショートしたのだろうか...青白い火花が舞い散った...

レミーナとサーリンは全力でハイブリッド車に乗っていた親子をかばった...

...火花がガソリンに引火した...

...そのガソリンはダンプの燃料タンク下にも広がっていた...

誰かが言った...

「またトラック内に運転手がいる!」

火はどんどん燃え広がった...

野次馬の中にはそれを見て興奮する人もいた...

龍一郎はこのままじゃ大惨事になると思った...

街宣マイクを力ずくで手に取る...

「に...逃げろ!! 爆発するぞ!!」

その声に野次馬は戸惑った...

...火勢はどんどん強くなる...

「逃げろ!!」

龍一郎がそう怒鳴った瞬間

耳を劈く爆発音と共にダンプは火に包まれた...

燃料タンクがついに爆発したのである

辺り一面 騒然とした...

衝撃でパチンコ屋のガラスが数枚割れ

燃料タンクや車体部品の破片が野次馬を襲った...


...その頃 とあるトラステ(トラックステーションの略)にて...

仲間とテレビを見ていた熊崎は耳を疑った...

テレビアナウンサーが緊急ニュースを報道したのである...

「緊急ニュースです 先程美崎地区の国道にて普通乗用車と大型トラックの交通事故が発生し 車両が炎上しました この事故で自営業大型トラック運転手 近藤龍一郎(27)の死亡が確認されました 普通乗用車に乗っていた男性(79)と男性(43)は重傷を負いましたが命に別状はありません 警察は 普通乗用車を運転していた男性(79)を交通事故過失致死の容疑で書類送検し 調査を進めております...」

その情報は高速道路パーキングエリアに休憩していた大森や 居酒屋に飲みにきていた有田や金村 江頭にも伝わった...


仲間をまたひとり 失った...

龍一郎の仲間は悲しくて悲しくて仕方がない...


...その一方 旧道の廃墟洋館の前には...

龍一郎の"遺体"と燃え殻となった"テラヴィ"のダンプがあった...


幼い女の声がする...

「これを...サーリンさんが直してくれって...」

別の女の高い声もする...

「この男を"転生"させたらいいのかしら?」

「サーリンさんがそう言ってたの 大事な人だって...」

「あたし達だけでなんとか...するわ...」


続く...

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