第6話 伝説の男
車列の中を龍一郎はハンドルを握る...
その時 泣きが入った美声なマニ割りサウンド...
龍一郎はサイドミラーを見た...
「ま...まさか...あれは...」
...これてもかと飾られたデコトラが走ってくる...
...メイン行灯には[二代目一番星]...
...トラック無線からは驚きの声が上がった...
二代目一番星は車列を抜き去ると先頭にたって走った
...火葬場に到着する...
龍一郎は二代目一番星の運転手を見ると あまり自分と年が変わらない男が乗っていた
...3人は大勢のトラック野郎達と火葬場に入る...
...葬儀は終わった...
皆悲しげに走り去る 響くラッパはあの監督と別れを告げてるのだろうか...
...次の日...
仕事前の停車場でビックニュースを聞いた...
「皆さん聞いてくれ!!あの監督がかつての一番星だったんや!! 監督の家の車庫から一番星号が出てきた!! 」
「なんだと? それは本当か?」
「あの一番星が...」
「一目見てみてぇ!!」
龍一郎も当然 憧れの一番星を見てみたかった
そして あの監督が一番星だった事を知ると悲しくて嬉しくて仕方がない
「あの一番星の噂のひとり息子が今ハンドルを握り始めた 二代目一番星 お前も見ただろう」
江頭がトラック無線で龍一郎に言った
「ええ...凄かったですよ~」
「これからはお前達の時代だ 龍ちゃんがんばってくれな!!二代目一番星に負けん走りをしてくれ!!」
「頑張ります!! これからの時代を任せてください!!」
「嬉しいぞ!!それが聞きたかった!!」
龍一郎はその夜 二人に一番星の事を話す
「ちょっと前に入ってた現場の監督がまさかの一番星だったのさ」
「一番星?1番明るい星なの?」
レミーナが首を傾げて言った
「意味合いはそれだな 全国統一達成した伝説のトラック野郎だ」
「全国統一!!凄い人だったのね...」サーリンが頷いて聞いている
「そんな一番星が二十年ほど前から隠居し ふと居なくなってしまった 各地のトラック野郎はわれこそと激しく争ってるよ」
「龍一郎さんが今日の朝したように?」
「あ...あれはただ軽く走っただけよ!!腕慣らし程度よ!!」
龍一郎は焦ったように話す
「あらあらどうしたの...?そんなに赤くなって...フフ...」
龍一郎は赤くなってるのが分からなかった
どう言い訳したらいいか分からなくなった
何故ならかなりの真剣勝負だったからだ...
「そんな事ないよ!!」
「ふ~ん 脇から見てたけどかなり真剣にやってたようね~」
「しかも顔赤いし?どうしたのかな...?」
レミーナが顔色を伺いながら話した
「フフフ...可愛い子ね~」
「ちゃんと成人してる!!」
「サーリンはそこを指してないよ~龍一郎さんの反応が可愛いって ねッ!!」
「可愛いくて私の下僕にしたい位だわ...フフフ...」
「ねーねーサーリン 下僕持ってるの?いいな~あたしも欲しいわ~」
「あら~私は下僕と言っても2人位よ~今はお留守番させてるからここにはいな~い」
...そんな会話の中龍一郎はハンドルにうつ伏せになっていた...
もう眠気が差してきたその時!!
二代目一番星の行燈が龍一郎の視界に飛び込んだ!!
眩いその姿は天下無双だ
龍一郎は迷うこと無くテラヴィを発進させた
待ったなしのワッパ勝負が 始まる
カーラジオからは 男一匹夢街道が流れる...
月光に輝くアスファルト 地響きと共に二台が走り去る...
だが二代目一番星はとてつもなく速い
龍一郎の相手ではなかった...
あっという間に 二代目一番星は視界から消え去った
「ちきしょー!!いつかはきっとアイツの前を走ってやっからな!!」
「...フフフ...今の龍ちゃんには...まだまだのようね...多分あの人も龍ちゃんが本当に強くなった時にまだ現れるわ...」
サーリンが慰めるように言う
「だよな...って馴れ馴れしく呼ばないでよ!!」
「あ~らいいじゃない~龍ちゃんの仲間がそう呼んでるなら私だってそう呼ぶわ」
「ね~龍ちゃん?まだ赤くなったよ?」
レミーナが寝台から言った
龍一郎はどうしたらいいか分からなかった...
「う...ん確かに...そうみんな呼んでるけど...悪くは...無い...」
「そうとなら決まり!!この瞬間から龍ちゃんと呼ぶね~~」
龍一郎はうなずくしかない...
さあ明日は有田さん達土砂捨て場への仕事だ
40台位ダンプが来るかな~
龍一郎はそんなことを考えながら眠りについた
...続く
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