第5話 けた外れた爆走人生

龍一郎はアクセルを踏みつけた

葬式までのタイムリミットはあと3時間半

ならば高速に乗るしかない

料金所へ龍一郎はぶっちぎっていく

ハンドルを握りながら龍一郎は紅に染まる髪をもつ女に話かける

「で お前さん なんという?何故レミーナを縛る? そして誰が俺を助けた?どういう事だ?」

その女は助手席で足を組みながら

「わ...私はね...フフフ...」

謎の笑を浮かべた

「私の名前はね...」

その瞬間龍一郎は急ブレーキを踏みラッパを鳴らす

リアタイヤがロックし 危うく制御不能になった

脇道から他のトラックが飛び出したのだ

お互い道を塞いでしまい どちらも進めない

龍一郎は昨日の事を思い出すと激怒し ドアを乱暴にしめると大声で怒鳴った

「おイゴラ降りれや!!どこ見て走ってんだボケ!! はよそこどかんかい!!」

飛び出したトラックから金髪の女が降りてきた 龍一郎を見るなり低い声で

「は?誰に口聞いてんだい? そっちこそ早く道を開けな ウチが本気になる前にね!!」

「うるせぇ!!どこの姫トラだか知らねぇがとっととどきやがれ!! あの人の葬式に出るんじゃ!!」

「ふ~んあんたもかい 南川州ナンバーか どうだ?このケリ ワッパ勝負で付けようじゃないか」

「やれるもんならやってみな!! そんな増トンごときに負ける車じゃねぇ!!こっちゃV8じゃ!!」

「はいはい~取り敢えず早く下がって」

「そっちが下がれや!!」

...そんなやりとりを見ていたレミーナは

「まったく...龍一郎さんは...」

「どうしたの? 」

「ん? 本当はそんな人じゃないのにね...本当はね...優しいし力強い男なんだ...」

「でも殺そうとしたじゃない!!」

「あれは...飛び出した軽自動車を避けたトレーラーのコンテナが...それに彼を消すならあたしが怪我してどうするの...」

「あらあら...とんでもない勘違いしてたのね...ごめんなさい...」

「いいよいいよ...それよりあなた なんと呼んだらいい?あたしはレミーナと言うんだけど...」

「あら...私の名前? 私はね...フフフ...サーリンと読んでちょうだい...ひとりきりであの洋館にすむ"悪魔"よ」

「そう...なんだ...これからよろしくね!!」

「あらあら...こちらこそよろしくね!!」

レミーナとサーリンはすっかり仲良くなったように見えた

...一方龍一郎は仕方なく自分のダンプを退ける事にした

「ちきしょー覚えてろ 高速乗ったらミラーから消してやる!!」

龍一郎はダンプで増トンの後を追った

最近生産されたベストワンだ テラヴィより加速も良さそうだ

龍一郎は夢桜をカーラジオから流した

「そうそう...さっきの続きよ~私はね...サーリンというよ~そう読んでちょうだい~」

サーリンは微笑んで龍一郎をみる

龍一郎もニッコリ笑い

「サーリンというんだな 覚えたぞ」

...冬に突入した国道の上を2台のトラックが突っ走る...

...目の前には検問だ...

...龍一郎が初見の姫トラよりリードしてた...

...ここは 突っ切るか...

龍一郎はギアを上げ アクセルを踏みつける

サイド出しのTXマフラーから黒煙が舞い散る

...検問所の警官達はダンプと増トンに対し停止合図を出すが止まるはずもない...

...角ビックホーンが響き渡り 三角コーンが蹴散らされる...

「よっしゃ!!あんなもんなんかに足止めされてたまるか!!」

「あ...危ないよ!!」

レミーナが不機嫌そうに言う

その頃警官達は本部に報告した

「こちら城河交3 大型トラックが二台検問を強行突破 車両ナンバー南川州133し 8888 後方車両のナンバーは確認できず 追跡許可願いますどうぞ」

「城河警察本部より各局 検問突破した暴走トラック二台を追跡せよ 国道から料金所へ向かっている 全車両追跡にあたれ!!」

龍一郎はふとミラーを見ると 増トンのはるか後ろにパトカーが何台も追いかけきていた

料金所はすぐ手前 龍一郎はETCレーンに入り 高速に乗った

姫トラのベストワン増トン車も後に続く

その勝負に待ったはない

だが日曜の高速道路は案外混み合ってる

龍一郎はラッパを鳴らし ひたすらパッシングする

その隙を見たのか増トンは龍一郎の前に出る

龍一郎は一般車にブロックされ追い越せない

街宣マイクを手に取る

「馬鹿野郎どけ!!やられたいんか?!」

追い越し車線を80クルーズで走り続けていた車が慌てて道を開ける

...テラヴィが黒煙を吐きながらベストワンに追いつく...

...すかさずベストワンがテラヴィをブロックする...

...スキール音 排気ブレーキ音...

角ビックホーンが響く...

はるか後方にはサイレンが...

そんなのがどれほど続いたのだろう...

警察は追尾断念した...

龍一郎は姫トラの前に出た...

南川州 57kmの看板を見つけ 時計を見た

あと...40分...

...東島のホールにギリギリで到着...

辺りにはガンダムアート車や渋いレトロ車 ピカピカに磨かれた仕事車 各地の有名車も集まっている

龍一郎はダンプを止めると運転台から飛び降りた

レミーナとサーリンはゆっくりステップから降りる...

増トンの姫トラは龍一郎を見るなり

「ウチの負けだ...すまない...」

「まあまあ 強くなってからまた勝負に来い!!こっちもいろいろすまないな」

やがて...霊柩車が出発しようとする

別れを告げるように各車両がラッパチャージをする

霊柩車の後ろにはトラックの長列が出来ていた

龍一郎はけた外れ人生で街宣をした

あの監督もけた外れた人生を送ったのだろう...

龍一郎の気持ちは横乗りの2人にも伝わったかもしれない...

冷酷な心がトラック野郎の温かさに包まれた


続く...

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