第3話 出会いと別れ

龍一郎は目の前の少女が自分を消しに来たと知るも特に命乞いなどしなかった

少女はこんな相手は初めてだ

狭い車内で気まずい空気が漂う

やがて龍一郎は言った

「やらねぇなら大人しく載っとけ!!」

その声には悲しみと絶望が混じってたように少女は聞こえた

龍一郎はギアを入れ発進しようとする

だが 少女が水中花を握る龍一郎の手を遮って慌てて言った

「だめ...この先は 絶対だめ!!」

龍一郎は目の前の少女に対し不思議で仕方がなかった

だからわざと声を荒らげて

「うるせぇ 俺が進む道じゃ!! 止めるんじゃねぇ!!その羽むしるぞ!!」

だが内心では大森の体験談を思い出し 龍一郎自身もあの急カーブを曲がりたくないが 理由が見つからないのだ...

少女もムッとして槍を再び出現させたが目元は赤くなった...

龍一郎はそんな少女をみて困った振りし

「分かったよ!!行かなきゃいいだろ? 次俺の道を邪魔したらタダじゃおかねぇからな...2度は言わねぇ!!」

龍一郎は目を逸らしハンドルを握ってダンプをUターンさせ 国道へと戻った

国道をしばらく走ってから 龍一郎はダンプをコンビニに止めて少女に降りるように言った

ドアを開けると北風が吹き込み 白い息が辺りに広がる

龍一郎は作業着のポケットに手を突っ込みお茶と弁当を2つ タバコも数箱買った

龍一郎は車内で弁当とお茶を少女に渡す

少女は戸惑った こんな事は初めてだった

龍一郎も 仲間以外でこんな事をするのが初めてだ

さほど広くない運転台の中で道路情報以外は沈黙していた

食べ終わると龍一郎は言った

「ごめんな...さっきはあんなの言ってさ 金もあんまり無いもんで贅沢なのは食えねぇ 本当にごめんなぁ...」

ため息をつき龍一郎は少女に聞く

「ところでお前さんの名は聞いてねぇな...なんと言うんだ?」

龍一郎はニッコリして少女に聞くがその顔は哀愁漂っていた

少女は少し顔を赤くし

「堕天使の...レ...レミーナと...言います」

「ほう...レミーナか いい響きじゃないか 俺は知ってる通り近藤龍一郎 龍さんとても呼んでくれ」

「は...はい!!」

「よ~し今日は仕事場を探すぞ また飾ったやつが入れる現場を探さないとな...」

龍一郎はエンジンキーを回し演歌を流す

...どれほど走ったのだろうか 遂に仕事現場を見つけた

現場監督は龍一郎に言った

「えっと...ナンバーとゼッケンを教えてくれ それと現場入りの時は札をフロントガラスに置くんだな...後で渡すよ」

「ナンバーは南川州133 し の 8888ですね~ゼッケン番号は南川州〇販7446 ケツブタに貼ってます」

「よ~し分かった 明日から拡張工事の残土運搬 多分一日7か8セット それと...これだ 君のは28番だね フロントガラスの前に置け 明日は説明もあるから5時半には現場着だ よろしく頼むよ」

「ありがとうございます!! 」

龍一郎は嬉しそうにダンプに乗り込む

その瞬間 電話がなった 仲間の金村からだ

「もしもし近藤です」

「龍くん 金村だ あの監督がついさっき急性心臓病発作で亡くなったんだよ!!」

「あ...あの現場監督がですか?」

「そうだ...あの監督さ 俺も有田さんから今さっき聞いたんだ...」

「そ...そんな...」

「葬式は明後日の日曜日 南川州に戻れるか? 今はどこの現場だ?」

「今は...美崎過ぎたので...城河ら辺の拡張工事現場です」

「ざっと300キロか 分かった 日曜の午後2時には東島のホールに来てくれ そこから霊柩車が出る ごめんねこんな話で まだ俺も仕事があるけん切るよ」

「分かりました 絶対間に合わせます」

電話を切ると龍一郎は涙を流した

...あれほど"トラック野郎"が似合うひとは居ない

そんな現場監督が無くなった

龍一郎は 悲しくて仕方がない

横乗りしてるレミーナにも伝わったのだろう

彼女の冷酷極まりない心が解けたようにもみえる

夕焼けに照らされたテラヴィのダンプはひたすら休憩場を求めて町を彷徨った


...あの監督さんが亡くなったのは悲しい...

...だが明日からは新たな仕事だ 気を引き締めよう...

龍一郎はそう考え ダンプを止め レミーナを寝台に寝かせると自分はハンドルにうつ伏せになり 深くしかし短い眠りについた


...朝焼けがカーテンを突き抜けた車内にアラームが鳴り響く

龍一郎は拡張工事の現場へダンプを走らせた

新たな 仕事場だ


続く

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