第57話 領主の事情
宿屋に戻り部屋で寛ぎながら御飯が出来るのを待っていると宿屋の主人がやってくる
「申し訳ありませんが宜しいですか?」
「どうかしましたか?」
「領主様の使いが来たのですが」
「解りました」
エターナリアは答えると
「しつこいな・・・面倒だよね」
「取り敢えず私が見てきます」
レインがそう言って見に行くと
「何かご用でしょうか?」
「領主様から再度宴への招待で来ました」
「お断り申し上げます」
「え?やはりダメですか?」
「宴に私達などお呼びになられる事事態領主様の名誉に傷が付きます」
「え?しかし巨獣を倒された英雄ですので是非お願いします」
「お伺いしますが、他の領主の依頼で来た冒険者を英雄として奉る事が適当でしょうか?」
「え?そそれは・・・」
「その様な事をされれば、クエールバスコ領主を称える事になりますので、領主様の資質に傷が付きます、家臣として穏便に済ませる事が大事だと思います」
「た確かに・・・」
「また私の御主人様は名誉も名声も望んでいませんので、特に称える必要も有りません、私の個人的な意見としては、褒美よりも何か有った時の後ろ楯になって頂いたり、領主様の家臣達が利用しようと近付かない様に布令をだして貰えた方が助かると思います、それに私達が倒したと触れては、領主様が危ないのでは?」
「え?何故ですか?」
「これ程の被害に他者が助けで鎮圧したなんて広間ったらどうなりますか?」
「え?・・・・・あ!」
着飾った男は青ざめる
「解りましたか?御主人様が必要ないと言われるので言わないでいましたが・・・」
「なるほど・・・しかし冒険者とは言えお金は必要だろう?」
「必要に見えますか?」
「え?・・・どうだろう?」
「この鎧はドラゴンの鱗で出来ています、売ったら金貨数十枚の価値があります」
「え?必要に見えません」
「ですから必要有りません」
「解りました、領主様に伝えてみます」
着飾った男はうつむき言うと
「冒険者ギルドの支部長と御一緒されて相談した方が領主様に怒られずに済むと思います、責任は全て冒険者ギルドに押し付ければ良いので」
レインがそう言って笑うと
「それは名案です!」
着飾った男は笑顔になり帰っていく
「レインお疲れ様」
「御主人様見ていらしたのですね」
「やっぱりレインがいてくれると助かるね」
エターナリアが笑顔で言うと
「お役にたてて嬉しいです」
レインも笑顔で言う
「あとは支部長に頑張って貰おう」
「そうですね、泣きついた方が悪いのだから」
エニスが笑いながら言うと
「それを言ったら領主は大変な事になるよ」
「あ!泣き付かず村が壊滅した責任有るからですか?」
「そうだね、もしここで自分達を英雄として称えて国王の耳に入ったら領主の方が大変な事になるよね」
「あ!だからレインは領主の資質に傷が付くと言ったんだね」
エニスが笑顔で言うと
「対外的には自分達で討伐したと宣伝した方が良いからね、家臣が倒したでも領主が今まで対処出来ていないと解ったら終わりだし」
「だからレインは他者の助けでと言ったのですね」
「そう言うこと、自分が言ったら面倒事になるから助かったよ」
エターナリアが言うと
「御主人様とレインさんの考えは凄すぎてどのような裏が有るか想像が出来ませんでした」
ミリシアが言うとみんな頷いている
「討伐の件は内緒ね」
「はい!!!畏まりました」
領主の間では、着飾った男とギルド支部長が領主に面会していた
「戻ったか、どのぐらいで来るのか?」
「申し訳ありませんが来られません」
「なんだと!こないだと!」
領主は怒り
「次は私が行って必ず連れてきます」
重臣が言うと出ていこうとする
「お待ちください、宴に参加しない方が良いと理解したので帰ってきました」
「はぁ!何を言う!」
「今回は被害が大きすぎます」
「だから自粛しろと言うのか!!英雄を称えて何が悪い!」重臣が怒り言うと
「あの冒険者はクエールバスコの領主の依頼で来ています、今の状況で英雄として称えればクエールバスコ領主を称える事になります」
「あ!しかし・・・」
「それに今回の被害が大きくこの件が王都まで知られればどうなりますか?」
「あ!!まままずい!!」
重臣全員が青ざめる
「更に冒険者に助けられた等広まればどの様な事になりますか?」
「ダメだそれはいかん!!」
「冒険者殿はそれが解っているから来ないのです」
「何がまずいのだ!!解らん!」
領主が言う
「こんな恩は返せないですが、領軍で倒した事にするしか有りません」
「なんだと!これだけの英雄を称えないなんて!ありえん!!それも手柄を横取り等名門の名に傷が付く!!」
領主が言うと
「お待ちください!どうか落ち着いてください!今は我らの危機です」
重臣が言うとみんな青ざめたまま頷いている
「何故だ!」
「この被害では、王都に知られたら、家の取り潰しになります!!それも他者の助けなどもっての他です!領軍であればまだ面目が立ちます!」
「え?・・・・あっ」
「ここは冒険者殿の厚意に甘えるべきです」
「くっ・・・それでは助けられて御礼も称えることも出来ないのか!!」
「我慢するしか有りません!領地の復興して誰の文句も無くなってから英雄殿を称えましょう!」
「それしか無いのか・・・他に恩を返す手立ては無いのか?」
「冒険者の一人が言っていましたが、何か有った時の後ろ楯や領主殿の家臣が利用しようと近付かない様に布令を出してくれた方が良いと言っていました」
「なるほど・・・」
領主が頷くと
「布令はすぐに出した方が良いです!もし家臣が近付き利用なんてしようものなら、それこそ家の危機になります!家臣や兵士が英雄として称え初めては尚更です!!」
重臣が言うとみんな驚き青ざめる
「あっ!!まさかそこまで考えているのか・・・すぐに出せ!内容は任せる!箝口令もだ!」
領主は涙目になりながら言うと重臣達は急いで伝令を出す
「完全に先手を打たれていますね」
冒険者ギルド支部長が苦笑いしながら言う
「その通りだな・・・悔しいが」
「私に念を押したのはこういう事だったと思いました」
「支部長も何か言われたのか?」
「地位も名誉も名声もいらないから、名前も言わない様にと念を押されました」
「何!名前もか!」
「名前が残れば調べることが出来ます、そうなれば家臣が近付いて利用する馬鹿が出るかも知れないですからね」
「あ!何もさせないつもりか・・・」
「本物の英雄です!強いだけでなく弱い者を助ける、本当に必要なら名声も地位も名誉も必要がない、物語に語り継がれる程の英雄と思います」
「確かにその通りだな・・・」
「今回は到着するまでに村を襲ったビックキングタイガーを倒して肉を村に寄付して、魔獣を十数匹一夜で倒して当面の食料にしてと渡して来ています」
「え?そんなことを素晴らしい」
「道案内した兵士がいたようですので、話をした方が良いですね」
「そうだな、聞いてみたい」
領主が言うと
「あ!すぐに兵士を探して今回の理由を話せ、そして口外しないように約束させろ!」
重臣が言うと気が付いた者が走って出ていく
「その話しも言わない方が良いのか!」
「そういう訳では有りません、一緒にいたので、色々知っています、地位が有る訳でないので何か有って噂話をしたら大変な事になります」
「そう言う事か・・・」
「早く領地を復興させましょう!そうしたら英雄殿に来て頂き称えましょう」
重臣が言うとみんな頷いている
「そうだな!皆でいち早く復興させるぞ!」
領主は言うと立ち上がる
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